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紗倉まな『最低。』感想文|女の子が自分で選んだ道を【AV落ち】なんて呼ばないで欲しい

最低。 (角川文庫)

 

「いつも大変お世話になっております」

 

と、

三つ指立てて頭を下げなければならない人がいる。

 

名前は、紗倉まな

職業はセクシー女優だ。

 

 

本当に日々お世話になっている。

「ありがてぇ・・・ありがてぇよぉ・・・」

といった感じで手をこすりながら感謝の言葉を述べたい女性の第一位。

 

そんな紗倉まなは、実は小説を書いている。

 

今回は日頃の感謝を込めて紗倉まなの小説デビュー作『最低。』のネタバレ感想を書いてみたいと思う。

なかなかどうしてしっかりした小説なのですよね。

 

 

最低。 

AV出演歴のある母親を憎む少女、あやこ。家族に黙って活動を続ける人気AV女優、彩乃。愛する男とともに上京したススキノの女、桃子。夫のAVを見て出演を決意した専業主婦、美穂―。4人の女優を巡る連作短編小説。現役人気AV女優、紗倉まなの小説デビュー作。(引用|amazon)

セクシー女優がアダルトビデオに関わる女性のことを描くという行為は、ある意味”色もの”的な小説に見えるかもしれない。

話題性を重視しているような出版社の裏の顔がちらつく。

 

しかし、実際に読んでみるとしっかりと小説として成り立っている。

むしろ、話題性という色眼鏡をはずして作品だけをしっかりと読んでみると、作品の中に確固たる”視点”を感じられる作品ばかりだと思った。

どの”視点”で登場人物たちを描きたいのかが、しっかりと伝わってくる小説というのは読んでいて心地よいものだ。

 

同時にデビュー作ということもあり小説を書くという行為に対して気合いが入りすぎているのか、比喩表現が空回りしていて、あいだあいだに挟まれる詩的な表現に若干のくどさを感じる

また、語りたいであろう”視点”わかりやすすぎるので作品としての深みがもう少し欲しいという感想も抱いた。

 

ただ、一冊の本の中でも後半になるにつれてそういった表現が少なくなっていて、最後の作品『あやこ』はいい感じに硬さがとれた素晴らしい文章になっている。

順番通りに書いたとは限らないが、僕はなんとなく掲載順に書かれているように思う。

 

詩的な表現は置いておいて、紗倉さんは単純に文章が上手いので、小説というジャンルではなく、体験に基づいたドキュメンタリーの文章やエッセイを書いてくれたら読みたいなと思う

たぶんそちらの方が向いているハズ。

出版社さん、エッセイプリーズ。

FRIDAYデジタル写真集プレミアム 紗倉まな「びしょ濡れ雨宿り」 

 

業界クリーンキャンペーン

以前よりもずっと健全だと思うが、世間から見たらAV業界自体はあまり良いイメージのない業界だと思う。

その印象も理解した上で、業界に良い印象を抱くような場面が登場する

 

AVプロダクションの石村の言葉は特によかった。

「僕はね、決して女の子を使って稼ぎたいってわけじゃないんです。見知らぬ誰かに変に利用されるくらいなら、僕のところで守ってあげたいと思っているだけで。きちんとした環境で、心や身体をむやみに痛めつけられることなくね」(作中より)

業界そのものの印象が悪かったとしても、そこに関わる全ての人間があくどいことをしているわけではない。

それは当たり前のことだが、最近の世の中の風潮は、その当たり前の意見を当たり前として受け取ってはくれない。

 

風俗と決定的に違うのは、作品として後世に残ってしまうことだ。世間ではそれが、まるで一人の人間の人生が悔しくも終わったかのように取り上げられる。AVで救われた人間だって、いるっていうのに。

~中略~

孤独で押しつぶされそうになる寂しい夜に心を癒し、欲望を満たしてくれる。じゅうぶん、素晴らしいことじゃないか。(作中より)

また、アダルトビデオに出演することがその人生の終わりのように感じさせる現状を
少しでも変えたいという意思のようなもの文章から感じる。

業界のイメージアップを盛り込んでいるところはAV強要問題に揺れる世間へのメッセージになっているようにも思える

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名作『あやこ』

この『最低。』という小説の中で、最後の『あやこ』は特によい作品だった。

自分本位な生き方しかせず、過去にAVに出演していた母に葛藤を感じているあやこの物語。

 

母親が過去にAV出演していたことから周囲にいじめられたり、祖母は文句を言いつつ、孫のあやこよりも母に対する愛情が強いことに気が付いてしまう。

しかし、それを直接的な文句としてぶつけることもしないあやこが、あきらめの感情、もしくは成長して受け入れられる心を少しずつ持ち始める成長の記録になっている。

 

こどもからおとなに精神が成長していく過程が、アンバランスさを伴って描かれている様子が特に気に入った

あやこが性的な用語を口に出すときに、意味は知っているが自分の言葉になっていない感じが伝わってくるのも良い

精神的に背伸びをしようとしている少年少女の描写はとても微笑ましいと思う。

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『AV落ち』という言葉をやめて欲しい

これは直接作品とは関係ないのだが、世の中でよく言われている

【AV落ち(堕ち)】

という言葉について文句がある。

毎年何人ものアイドルや有名人がアダルトビデオ業界に飛び込んでいく現実がある。

その多くの人達は人気が低迷し、その職業で食べれなくなってしまったが故にアダルトビデオに出演することが多い。

 

その際、Twitterやネットの掲示板なんかでは、

「早くAV出ろよ」

だとか

「AV落ちしたな」

といった攻撃的な言葉が飛び交うことがある。

 

これはAVに出ている人間を下に見ている愚かな発言だ。

 

彼らの多くはAVを実際に見て、自身の寂しい夜を助けてもらっているにもかかわらず、そういった侮蔑の言葉を投げかける愚かしい行為を平然と行っているのだ。理解が出来ない。

もしかすると、早くその人の動画が見たいから煽っている”小学生男子が女子をからかっちゃう”に近い感情なのかもしれない。それなら、まだ可愛げがある。

 

しかし、君たちは間違っている!と言いたい。

声を大にして言いたい。

 

アイドルや有名人がAV業界へ進出することは、「AV落ち」ではなく

「AVキャリアアップ」と呼ぶべきなのだ。

「AVヘッドハンティング」でもいい。

そもそも、もらえる給料が段違いに上がっているのだ。

転職をする際に、給与面が大幅に向上することをキャリアアップと呼ばずしてどうする。

 

また、一流芸能人たちがキャリアアップだと思ってAVに出てくれれば、出演者も給与が上がる上に一般購買者も喜べる理想的なWINWINの関係が築けるではないか。

なんて素晴らしいのだろう。

 

どうか皆さん今一度考えてほしい。

【AV落ち(堕ち)】という言葉が、一流芸能人たちのアダルトビデオ出演を阻害している現実を変えたいとは思わないか?  

 

 

最後に

作品に関係ない「AV落ち」について熱く語ってしまったので、なんだか焦点が合わない感想になってしまったが、作品を読んでいて紗倉まなはAV業界で働くことに対して、プライドを持って、さらに自分自身と向き合っている人なんだなと感じた

 

卑下もなく、劣等感もなく、自分と世の中に向き合っている彼女はなんて格好いいんだろう。

と、心に浮かんでくる感情がこの本を読んだ一番の感想かもしれない。

彼女はとても格好いい。