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僕らがアダルトDVD鑑賞会をして谷川俊太郎の詩『朝のリレー』の素敵さを再確認した話

みなさんは、谷川俊太郎氏の詩集の中に

「朝のリレー」

と呼ばれる素晴らしい詩があるのをご存じだろうか。

「朝のリレー」 

 カムチャッカの若者が
 きりんの夢を見ているとき
 メキシコの娘は
 朝もやの中でバスを待っている
 ニューヨークの少女が
 ほほえみながら寝がえりをうつとき
 ローマの少年は
 柱頭を染める朝陽にウインクする
 この地球で
 いつもどこかで朝がはじまっている

 ぼくらは朝をリレーするのだ
 経度から経度へと
 そうしていわば交換で地球を守る
 眠る前のひととき耳をすますと
 どこか遠くで目覚時計のベルが鳴ってる
 それはあなたの送った朝を
 誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ

(谷川俊太郎「谷川俊太郎詩集 続」思潮社 より)

地球は大きな一つの世界であり、どこかで太陽が沈めば、どこかで朝日が昇る。

なにかが終わればなにかが始まるという、当たり前だけど忘れがちな大切なことを教えてくれる素敵な詩だ。

僕は中学生の国語の教科書に載っていたこの詩がとても好きで、ときおり思い出しては、今この瞬間に夜明けを迎える国へ思いを馳せることがある。

それはさておき、

僕らが学生だった頃、友人の家で

【アダルトDVD鑑賞会】

が行われたことがあった。

話が変わりすぎて180度どころか540度変わっている気がして本当に申し訳ないとは思っている。

万が一、女性がこの記事を読んでいた場合の為に一応説明しておくと、

アダルトDVDの鑑賞会とは、

【男友達がそれぞれ持っているアダルティーなDVDを持ち寄り、お互いに披露するハイソサエティーな会】

のことを言う。言い方を変えるならば男性版のパジャマパーティーとでも言えばわかりやすいだろうか。

とにかくこの会は思春期の繊細な男子の心の壁を取り払い、ワンランク上の人間関係を構築するために必要不可欠な会なのだ。本当だよ。本当だってば。

鑑賞会

アダルトDVD鑑賞会は友人だったトミーの家で泊りがけで行われた。

普通に考えたらトミーの家族たちが寝静まっている中、血気盛んな数人の男たちが集い、アダルトDVDなんか見ていたりしたら、それだけで軽いタッチで保護観察処分が確定しそうだが、その日に関しては何一つ心配はいらなかった。

なぜならその日、トミーの家族は全員そろって家族旅行に行っているらしいのだ。

そしてトミーはその家族旅行に行かずに友人たちとアダルトDVDを見ることを選択したというわけだ。

冷静に考えて、

「コイツ家族旅行に行かずにアダルトDVD見て過ごすなんて正気かよ」

とトミーにドン引いてしまう方もいるかもしれないが、当時の僕らは花も恥じらうティーンエイジャーだ。アダルトDVDが最優先事項なこともある。

そういった意味であの日の彼はCOOLだったといえる。

というわけで、トミーの家のリビングの大きなテレビでアダルトDVDを鑑賞することになったわけなのだが、トミーの家は自営業の社長の家だ。当然リビングのテレビのサイズもデカい。

普段だったら、夜な夜な暗くした部屋の小さなテレビでしか見ることのないセクシー女優さんたちのあんな姿やこんな姿が、今日は大迫力でテレビ画面に映し出されている。しかも音の心配をすることなく見れるのだ。なんというパーリータイム。

ああ、こんな大きなサイズで裸体を見ることができるなんて、人生の勝者とはこういうものなんだな、と当時はいたく感動したものだ。

客観的に見ればむさくるしい男が集まってアダルトDVDをこっそり鑑賞しているなんて、これほど明確な敗北者はいないのだが、あの頃の僕らに客観性なんてない。

ともあれ普段とは違う大きなテレビでアダルトDVDを鑑賞するというのは素晴らしい体験だった。僕らはこの非日常を、異常な興奮と共に盛り上がっていたのだ。

そう。その様子は”祭り”と呼ぶにふさわしいものだった。

プライベートルーム

「俺の部屋のテレビで”ヌッキ”してもいいぜ」

トミーがそんな事を言い出したのも、ある意味では”祭り”のテンションだったからなのかもしれない。

ティーンエイジャーがアダルトDVDを見たならば、みんなのジョニーはすぐにワガママジョニーへと変貌を遂げてしまう。当たり前の話だ。

DVDの見始めの頃は、ポテトチップスやらチョコレートやらを食べながら過ごしており、それこそ可愛らしいモグモグタイムのような空気感だったのが、気が付けばモグモグタイムからモゾモゾタイムに。それも当たり前。

でも本当はみんなわかっている。本心を言えばモグモグタイムとか、どーでもいいからさっさとヌキヌキタイムに突入したかったんだ

そんな時にトミーがドヤ顔でこんなことを言ってきたのだ。

「俺の部屋のテレビで”ヌッキ”してもいいぜ」

その話を聞いて僕らは色めきだった。さすがにみんなの前で”ヌッキ”するのは抵抗があるけど、一人の空間で”ヌッキ”できるなら、そんな好条件に食いつかないわけがない。その案でいこうと、すぐにみんなの心は一つになった。

それにしてもいきなり、

「俺の部屋のテレビで”ヌッキ”してもいいぜ」

なんてドヤ顔で言い出してくるなんてトミーの奴、なんちゅー所で兄貴ヅラしてきてんだ。

自分の部屋を個室鑑賞に提供したところで「アニキ!!」とはならないぜ。

いや、ならなくもないか。当時はめっちゃありがたいかもしれない。

もしかしたら当時からアニキって呼んでたかも。

アニキCOOLだぜ!アニキ!

でもいくら気の置けない友人だったとしても、自分が普段生活している空間で”ヌッキ”されるのはどうなんだろうか?僕ならばかなり厳しいのだが。

でもまぁ、友達が自分の部屋で”ヌッキ”することで興奮するタイプかもしれないからね。

それならWINWINだしね。人間て複雑だよね。ほんと。

トミーという人間が、僕らが部屋で”ヌッキ”することに興奮を覚えるタイプなのかは知らないが、なんにせよ僕らはリビングでアダルトDVDを見て、ムラムラしてどうしようもなくなったらトミーの部屋に行って各自処理をするという黄金のローテーションがここで遂に完成することになった。

そしてこの瞬間から僕らのアダルトDVDのリレーがスタートした。

リレー

僕らの”ヌッキ”は見事なローテーションで行われた。

誰一人争うことなく、品行方正に順番を待ち、淡々とやるべきことをやるプロの集団のような見事なローテーション。

リビングの大きな画面でメインのアダルト映像が流れる中、僕らは順番にトミーの部屋へ行った。片手にはそれぞれ違うDVDを持ち、力強く大地を踏みしめて。

しばらく時間が経ち、ヌッキが終わった者はみんな、同じようなハニカミスマイルを浮かべながらリビングに戻ってくる。

「 おっ おう 」

恥ずかしいような、それでいて誇らしいような複雑な表情を浮かべながら片手をあげてリビングに入ってくる。

そして、次の奴に部屋を明け渡すのだ。そいつはまた違うDVDを持って静かにトミーの部屋へ向かっていく。ひたすらそれの繰り返しだ。

DVDを持ってはリビングを出る。しばらくするとDVDを持ってリビングに帰ってくる。

繰り返し

繰り返し

繰り返し

それはまるでアダルトDVDをバトンにしたリレーのようだ。

エロのリレーだ。僕らはエロのリレーをしているのだ。

そして・・・気が付くと窓の外から美しい朝の光が差し込んできている。

一晩中こんなことを繰り返していたのか。

もう朝じゃないか。僕らにも朝が来たんだ。

その時、僕はまぶしい光に目を細めつつ、谷川俊太郎の「朝のリレー」を思い出していた。

朝のリレー

今もどこかの国では一日が終わり、代わりにどこかで『朝のリレー』が行われている。

そして、同時にトミーの部屋で僕らは『エロのリレー』をしている。

そんな様子を見て僕の心の中に、美しい詩が浮かんでくる。

「エロのリレー」

 日本の若者が
 トミーの部屋でDVDを見ているとき
 もう一人の若者は
 リビングでヌッキを待っている

 また違う若者が
 ほほえみながらDVDを見ているとき
 我慢しきれない若者は
 亀の頭を染める我慢の汁にウインクする

 この地球で
 いつもどこかでエロがはじまっている

 ぼくらはエロをリレーするのだ
 つぎからつぎへと
 そうしていわば交換で地球を守る

 眠る前のひととき耳をすますと
 どこか遠くでティッシュをとる音が鳴ってる
 それはあなたの送った精を
 ティッシュがしっかりと受けとめた証拠なのだ

感動で手の震えが止まらない…

ああ、僕らはなんて素敵なことをしているのだろう。

生命の始まりを感じ、生命の終わりを知り、そしてそれを次の者へ受け渡していく。

これこそが、生きるということなんじゃないか?

そう、これこそが生きていくことなんだ。僕らは、今、この瞬間を生きているんだ!

大いなる感動と共に、僕は初めて味わうこの感情に身を任せて、生命を実感していた。

僕らはまた大切なことを勉強しつつ、輝ける明日へ向かい新たな一歩を踏み出していったのだ。

こうして僕らの思い出の中でも最低最悪な部類に入るアダルトDVDの祭典は無事幕を閉じたのだった。

最後に

ちなみに、一緒に泊まっていた高井くんの”ヌッキ”が終わったあとにトミーの部屋のゲーム機の蓋を開けてみた。

さっきは空だったはずなのに、中には『ときめきメモリアル』のソフトが入っていた。

高井くんが『ときめきメモリアル』のファンだったのは知っていたが、まさかアダルトDVD祭りの中で一人だけ『ヌキめきメモリアル』しているとは思わなかった。

高井くん。

キミが一番COOLだ。