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『ドラえもん短歌』の魅力は黒いドラえもんから生まれる -枡野浩一-

僕らにとっての”ドラえもん”とは、どのような存在なのだろうか?

アニメや映画のイメージからすると、かわいらしくて文句を言いながらものび太君を助けてあげて頼りがいがあったり、涙もろくてドジでポンコツなところもある未来から来たネコ型ロボット。それでいて原作の漫画ではドラえもんの毒舌っぷりが好まれていたり、意外と黒い性格をしているところも愛されている。

僕が思うにクリーンなイメージだけではなく、ポンコツだったり少し黒い部分も持ち合わせた、とても”人間的なキャラクター”。それがドラえもんという存在なんじゃないかと思う。

その人間的な部分もひっくるめたドラえもんをとてもよく感じることが出来るのが、今日紹介したい。歌人・枡野浩一がまとめ上げた『ドラえもん短歌』という作品集だ。

ドラえもん短歌

ぼくたちみんなの共通語=「ドラえもん」の仲間たちや、ひみつ道具を詠み込んで作る歌、それが、「ドラえもん短歌」。若者に圧倒的支持を受ける歌人・枡野浩一の呼びかけに、全国から続々と寄せられた、傑作の数々。「ドラえもん」×「短歌」という言葉のひみつ道具を駆使し、みんなの今の想いを詰め込んだ、待望の文庫決定版。

ドラえもんの世界を短歌に掛け合わせた素晴らしい作品集。短歌にはドラえもんのひみつ道具について詠まれた歌や、現実をドラえもんの世界と比較して皮肉を込めて読まれたものまでさまざま。単純に夢のような楽しいものだけではなく、辛かったりせつなかったりする作品も含まれているのは、”人間的なキャラクター”であるドラえもんならではなのではないだろうか

作中の短歌は大きく分けて二つに分けられる。

「ドラえもんの世界の中から詠んだ短歌」

「ドラえもんの世界を現実から詠んだ短歌」

の二つだ。

「ドラえもんの世界から詠んだ短歌」は、詠み手もドラえもんの世界に入り込んで、向こうの世界の現実のルールにのっとった短歌。

「ドラえもんの世界を現実から詠んだ短歌」はドラえもんという創作物を現実から眺めながら、現実世界とのギャップを詠んでいる短歌となっている。

感動的なものや、ひねくれたものまで様々な視点からドラえもんと短歌を融合した作品が集められている。気に入った短歌をいくつか紹介すると共に、自分なりの解釈を書いてみたいと思う。

「ドラえもんの世界からの短歌」

四六時中

一緒はつらい

思春期の

のび太が僕に

そっともらした

篠田算

男の立場から考えたら心の底から共感できる短歌。思春期の時期に一人の時間がないとやっぱり辛くなってしまうよね。ドラえもんがそういう道具を出してくれればいいのだが・・・この歌の中の”僕”という視点が誰なのかが結構気になる作品。

ドラえもん

話を聞いて

そばにいて

ひみつ道具は

出さなくていい

麦ちよこ

ドラえもんとひみつ道具は切っても切れない関係だが、ドラえもんの魅力はひみつ道具にあるわけではないということに気付かされる歌。友達としてのドラえもんを求めていることが伝わってほっこりする作品。

大丈夫

タイムマシンが

なくっても

あの日のことは

忘れないから

加藤千恵

加藤さんの短歌大好き。これはドラえもんの世界として考えると、ドラえもんが帰ってしまったあとに振り返っている切ない歌のように感じるし、タイムマシンという象徴的なひみつ道具を引き合いに出しているだけで、現実の歌とも読めるのが素敵だった。流石だよなぁ・・・。

「現実からの短歌」

ぼくのこと

ドラえもんだと

思うのかい

バックと愛は

もう出せないよ

みうらしんじ

みんなみんなみんなかなえてくれる♪ふしぎなぽっけでかなえてくれる♪

というドラえもんの歌を全力で求めてくるような、ワガママでかまってちゃんの彼女が頭に浮かんでくる作品。お金の問題があるのでバックは無理かもしれないが、頑張れば愛は出し続けることが出来るかもしれない、笑。

「永久に

借りておくだけ」

ジャイアンの

言葉で今日も

言い訳をして

ごみたゆうこ

不倫でどこかの夫婦の片割れを借りている人の現在進行形の短歌。奪うんじゃなくて、永遠に借りておくってのと、ラストの”言い訳をして”に人間性が表れている気がする。でも、本当は永久に借りておくことなんて出来ないんだよね、きっと。

スネ夫って

粋な髪形

してるよな

漢字で言うと

「司」に似てる

古内よう子

単純に面白い。脱力してしまうような短歌。ちなみにちびまる子ちゃんの花輪くんも「司」側の人間だ。

「タケコプターは

 力学的に

 ありえない」

野暮な男と

朝焼けを見る

沼尻つた子

朝焼けを見ているのは、コトが済んだ後なのか?それとも朝までドライブデートの後なのか?なんにしてもロマンの欠片も感じない男との朝焼けは果たして素敵なものなのかどうか。結婚しても幸せになれなそうだよね。

営業を

終えた車中で

スネ夫から

自分に戻る

ために聴く歌

柳澤真実

ジャイアンを相手にするスネ夫のようなへりくだり方を営業でしてるんだと思うと、お腹が痛くなってきてしまう一首。自分がスネ夫になっているという自覚があるところもお腹が痛い。自分に戻るために聴く歌は、なんとなく洋楽かブルーハーツであってほしい

「本当に気に入った3首」

自転車で

君を家まで

送ってた

どこでもドアが

なくてよかった

仁尾智

どこでもドアはとてもとても便利だけれど、その便利さがないからこそ生まれる気持ちや出来事もある。不便さの中を過ごす時間や、目的までの過程をまるごと受け入れてくれるような心が温かくなる魅力的な一首。柔らかい作品だよなぁ。

あの頃は

どこでもドアが

なくたって

どこでも行ける

ぼくだったのに

みうらしんじ

どこでも行ける自分を信じることが出来たあの頃の一首。今はもう現実を知って、壁を知って、諦めることを知ってしまったからこそ、ノスタルジックな気持ちにさせてくれるせつない作品。

どこにでも

行けるドアって

本当に

必要なのかい

ねえドラえもん

紺野匠次

どこでもドアがあればどこでも行けるし楽しめるけど、本当に本当に必要なことはキミと一緒にいることなんだよ。なんていう心の声が聞こえてきそうな一首。最後の「ねえドラえもん」があることで一気に情景が広がる気がする。

てか今気が付いたけど、気に入った作品は全部どこでもドア関連だった!!そうなると僕はただのどこでもドアフェチなのかもしれない。

最後に

ちなみに先日感じたことを僕も短歌にしてみた。

「それだぁれ?」

世代違いを

自覚する

大山のぶ代

を知らないなんて

芥川ヌキ之介

僕らのようなオッサン世代からすると、ドラえもんの裏に大山のぶ代さんの影がちらつく。そんな存在がドラえもんだったのだけど・・・。