美人女教師よ永遠に美しくあれ

『美人女教師』と聞けば多くの殿方はAVのジャンルを想像することだろう。私だってそうだ。唯一例外があるのだとすれば、高校一年の担任教師が該当する。名前は高橋先生としておこう。

その高橋先生は当時24歳。見た目は元AV女優の「田崎由希」に似ていた。かなり前の女優なので、気になる人はググってくれ。

そんな高橋先生は、高1の少年にとって「身近にいる綺麗なお姉さん」と言うべき存在だった。本人もそれを自覚していたようで、毎日綺麗なスーツ、毛先を遊ばせたヘアースタイル、そしてミニスカという出で立ちで『美人女教師』を演じていた。そして、その高橋先生が放つ眩い光に、クラスの男は全員クラクラになっていた。

私を除いて。

フェロモン美人女教師

「高橋先生超綺麗!」
「高橋先生のような女の子いないかな?」
「今日高橋先生に怒られちゃった笑」

クラスメートがクラスの雰囲気になれた頃、こんな会話が毎日教室で繰り広げられた。女子も女子で「高橋先生優しい!」「高橋先生のような人になりたい」など、高橋先生を好意的な目で見る人がほとんどだった。

それでも私は高橋先生に対し、“教師以上”の気持ちを持つことはなかった。それは、どことなく本人から【私がこのクラスを美でまとめてます】感が漂っていたのが気持ち悪かったから。

確かに綺麗だった。高橋先生から香る匂いはいい匂いがしたし、ミニスカから出てる足は同級生の幼い足に比べて完成度も高く、メロメロになってしまう気持ちはよく分かる。ただ、天邪鬼だった私は、クラスメートと一緒に浮かれることはなく、一人の教師として接し、心踊ることなく一年を終える。

美人女教師を狙う猛者

二年になると担任も変わり「高橋先生超綺麗!」という声は隣のクラスから聞こえるようになる。高橋先生未経験の生徒達は歓喜し、引き続き担任が高橋先生になった生徒は自らの幸運を誇っていた。

そして二年になるとこんな話が出てき始めてきた。

「高橋先生の彼氏ってどんな人だろう?」

一年の頃、「先生は彼氏いるんですか!?」と聞く勇者がいたが、その際は隠すことなく「今はいない。この質問はもう終わり!笑」と答えていた。しかし、聞いたところによると、二年の新しいクラスメートからの質問時に「秘密笑」と答えていたようだ。

すると、高橋先生の恋人予想が始まった。高橋先生は女子バスケット部の顧問を務めていて、放課後のほとんどが体育館にいる。話しかけるのは他の部活の生徒は勿論、他の教師まで。既に学園のマドンナ化されていた高橋先生を放っておく奴は稀有な存在だったのだ。当然学校を出ても誘いはあるだろう。そもそも、長く付き合ってる人もいるかもしれない。

こうして様々な憶測が出てきては消え、多くの候補者が上がった。その度に高橋先生は「違います笑」と余裕で受け流していた。そして誰も話さなくなった頃、答えが突如やってきた。

射止めたのは・・・

同じ学年の担任を務めていた加藤先生(仮)だった。噂は当然上がっていて、年齢も加藤先生が一個上ということもあり、妥当といえば妥当。ただ、私はその事実を知ってもコレといった感情は湧いてこなかった。

そしてそのまま卒業する。

同窓会で再会

今から4年前、高校の同窓会が開かれることになり、私もその会に参加させてもらうことになった。その同窓会は大規模で行われることが決まっていて、教師も参加するとの事前情報を得ていた。

連絡をくれた友人が「高橋先生と加藤先生に会うの楽しみ!」という言葉で、私は久々に思い出した。そういえばいたなと。「あー懐かしいね」と、適当に相槌を打つと、「知ってる?二人結婚してるんだよ!」

・・・なるほど。出しましたか。

同窓会当日

約10年ぶりの同級生との再会は、時間を忘れるほど楽しかった。結婚してる人もいれば子供がいる人もいて、その他離婚してる人、婚活してる人、海外にいる人など様々。

そして小一時間が経過した頃、隣に女性が座り「アピュラ君久しぶり〜!元気!?」と聞いてきた。一瞬、「ん!?」と思ったが、その女性こそ高橋先生だった。

高橋先生は産休を経て今は中学校の教師を勤めているらしい。驚いたのは加藤先生が未だに綺麗だったこと。当然ながら私達の担任を務めていた頃に比べると肉は付いたし、目元のシワも増えていたが、相変わらず綺麗な人に変わりはない。ただ、その【綺麗】が昔よりも自然だった。

当時の高橋先生は“いい先生” “綺麗な先生”を演じすぎて疲れているように見えた。だから私は他の生徒と一緒に高橋先生に萌えることはなかったのだ。と、この時になって分かった気がする。

後遺症・・・

先生とは当然その後は何もないが、私自身は一つ変わったことがある。それは検索ジャンル。今では「人妻 教師」でDMM内をウロチョロしてる。

バカ野郎だ。私は今さらながら、高橋先生に萌えなかったことを後悔している。もっと一緒にはしゃいでいたら、もっと一緒に笑えてれば…そんなタラレバが私を襲っている。

加藤先生は高橋先生を射止めた。ダンクシュートを決めた数は数え切れないだろう。「最近髪が薄くなってきてさ笑」と同窓会の時に自虐ネタで使っていたが、それも今思いだすと「うすうす派です」と自慢していたような気もする。

マドンナ先生を攻略した加藤先生が憎たらしくなってきた。確実に一度は指示棒を使っただろうし、もしかしたら「では、今入ってるのは指示棒でしょうか?もしくはチョークでしょうか?それとも・・・ボクのでしょうか?」なんて、しょーもないクイズを2人でやっていたかもしれない。クッソー。加藤め。。。

「新婚旅行はイタリア行ってきた」と皆に自慢していた。高橋先生というカテナチオを突破した男の言葉は実に力強い。プライベートでも真実の口にピサの斜塔をねじこむという夢のコラボを達成した加藤には拍手しかない。

私の知らないところで、俺のアモーレ、キミはハモーレ、お前にダシーレしていたんだろうな。。。

はあ。。。イタリア行きたい。。