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毒見師イレーナの続編『イレーナの帰還』感想文|魅力的なツンデレおじさんになり損ねたカーヒルがクソダサい件について|マリア・V・スナイダー

イレーナの帰還 (ハーパーBOOKS)

前作『毒見師イレーナ』はそれはそれは面白い作品だった。

  • 生死をかけたギリギリの緊張感
  • 間一髪を生き延びるカタルシス
  • ヴァレクとのロマンチックな恋愛描写

それらの要素が絶妙なバランスで混ざり合い、読み手を飽きさせないストーリーが展開する。読み手の誰もがイレーナを好きになり、心の底から応援してしまう素敵な作品と断言できる出来だ。

今回は、そんな名作の続編にあたる『イレーナの帰還』のネタバレ感想を書いていきたいと思う。

この作品も前作に引けを取らない面白さを持っているのは間違いないのだが、当然、続編なので前の作品を読んでいないのであれば全く楽しめないと思われる。

だから、読んでいない方は、すぐに前作を買って読んでもらいたいところだ。

では、感想を・・・と言っても、この作品はカーヒルという男がとにかくダサいという印象がとても強い小説だったのだが。

イレーナの帰還

あらすじ

死刑宣告を受けながらも生き延びたイレーナは、故郷シティアに14年ぶりに戻ってきた。両親は涙ながらに娘を迎えるも、兄を始めとする他の者たちは、敵対国で育ったイレーナをあからさまに嫌悪し、密偵に違いないと疑う。またも四面楚歌となったイレーナに、さらなる危機と試練が―明らかになる14年前の真実と、2つの国に蠢く陰謀、そしてイレーナが生まれ持つ宿命とは?見逃せない、第2章。(引用|amazon)

イレーナシリーズの続編(2作目)に当たる作品。

前回は毒見について学び、自らの運命を乗り越えるストーリーだったのでファンタジーというよりも現実的でシビアな展開が続いていたが、今回はかなり魔術を中心にした話になっている。

元々の邦題が『Magic Study』であることも頷けるほどに本当に魔力だらけ。物凄い説得力をもってMagic Studyだ。

しかも、前作でイレーナは魔力をコントロールできないがゆえにアイリスから命を狙われていたのに、今回ではその経歴がウソのように魔力を扱っていく。

何もできなかった状態から、魔力を操りどんどん能力を開花させていくイレーナは周囲から浮いてしまうが、信頼できる両親やアイリスなど周囲の助けがあることで、自分の居場所を見つけていく。努力が実って自分の居場所を見つけ出していく様子は、前作と同じように心地よい

感想

今回の話は、拉致される前に住んでいたシティアに戻ってきたイレーナが、家族と再会を果たしていく様子。そして、魔法を学ぶために魔術師養成学校に通う様子が物語の中心になっていくので、やはり今までのストーリー展開とは大きく異なる部分が多い。

その中でも特に兄・リーフの存在が大きい。それも悪い意味で大きい。

ずっと生き別れていたイレーナに対して、終始、辛辣で嫌なことしか言わないので登場する度に不愉快になってしまった。何故ここまで嫌味なことしか言わないのかは最後に明かされるものの、最後まで根本的な解決に至らないところには、やはりストレスを感じてしまう。

その分、前作で友情を育んだアーリ、ジェンコの再登場では思わず感動してしまったし、どんな状況でもヴァレクが助けてくれるのが本当に救いに感じられる。

※前回の感想に書いたように、僕は最強のツンデレおじさんのヴァレクが大好きなので、登場するたびにテンションが上がってしまった。

最高だよヴァレク。

かわいいよ、ヴァレク。ハァハァ

ヴァレクになれなかったカーヒル

さて、前作ではヴァレクの魅力について語ったが、今回はその真逆のような人物について語りたい。

その人物とは、自称王族のカーヒルだ。

カーヒルは、イクシアのクーデターで途絶えた王族の生き残りを名乗る男で、イクシア奪還を狙うちょいと底が浅いがそれなりに魅力的な人物だ。

カーヒルは出会いこそ悪かったものの中盤では、いい感じでイレーナと接触していき、あわよくばイレーナのヒーローになりそうなポジションだったのに、気が付けば最低のクソダサ男に成り下がっているという悲しい男だった。どんなことが起きたのか、簡単に書いていきたいと思う。

このカーヒル、途中までは悪くなかったのだ。

出会いこそイレーナを捕まえて手錠をはめて連行しようとしていたが、彼女の無実が判明した後は、イレーナの乗馬のセンセイとして日常的に顔を合わせる存在になる

その後、手錠をはめて連行しようとしたことを謝り「もう一度関係性をやり直さないか?」と提案して歩み寄るところまでは、100点に近いといっていい。

恋愛映画の王道パターンである、

【初めはケンカしていたのに気が付いたら好きになっていた】

のルートに間違いなく乗っかっていた。

さらに絶好調の時には、

「俺の隣はお前の為にあけてあるぜ」

的なことまで言っていたのだ。完全にイレーナラブ状態だ。

俗に言う、イケメン俺様系王子様というやつだ。ガチで王子だし。もう恋に落ちない方がおかしい。

しかし、だ。

イレーナはまったくカーヒルになびかないのだ。

だってヴァレクがいるからね。

ヴァレク大好きだから。

カーヒルはフラまくり、だんだん拗ねていってイレーナと対立するようになっていく。

ラストの方では自分の兵士たちを総動員してイレーナを襲おうとする。

フラれて武力行使とかクソダサいのだが、カーヒルは無自覚でやっちゃう。

マジでクソダサい。

最終的には、その部下たちにも舐められていたことがわかるわ、本当の王族ではないことがわかるわで、何一つとして良い所がないまま物語が終わっていく。

何この子カワイソウ。クソダサくてカワイソウ。

ポジション的にヴァレクになれそうで、なりそこなった悲しい存在。

それがこの物語におけるカーヒルという男なのだ。

なんだか、書いてて泣けてきた、笑。

最後に

感想の半分以上を使って、カーヒルをディスるという謎の感想をまたしても披露してしまった。

後悔はないが反省はしている。

なんでこうなるんだろう、笑。

色々書いたが、逆境に強く、折れない心を持つイレーナは本当に魅力的なヒロインだ。

このイレーナのシリーズがまだ続きがあるということが幸せなので、引き続き続編を読んでいきたいと思う。