2017年元旦からタイトルに見離された川崎フロンターレ

サッカーの第96回天皇杯全日本選手権が1日、大阪・吹田スタジアムで行われ、延長戦の末、鹿島が2-1で川崎を降し、6大会ぶり5回目の優勝を果たした。鹿島はJリーグに続き、今季二つ目のタイトルを獲得。川崎はまたも準優勝に終わった。

延長戦での2−1なのでスコア上は接戦だが、内容は鹿島の完勝だった。11月下旬から続く過密日程、金崎夢生の体調不良による不在でもタイトルを獲得した姿は王者に相応しい。

一方、川崎フロンターレはまたしても勝負弱さを露呈してしまった。
これで2016年から1st、2nd、年間勝ち点に続く新たな準優勝記録を更新。(Jリーグ最終はCSの準決勝で敗れたので年間順位は3位)

川崎フロンターレが優勝できない理由

サッカーの質は間違いなくリーグ屈指。ボール扱いに長けた選手をピッチに多く配置し、小気味よいパスワークでボール支配率を高めた攻撃は魅力的。一方で堅守速攻のチームに弱く、シーズン中は勝ち点の取りこぼしが目についた。

チームの弱点は選手もスタッフも気づいていたことだろう。その証拠にシーズン前、GKに韓国代表のチョン ソンリョン、DFには柏レイソルからエドゥアルドをレンタルで、ボランチにエドゥアルド・ネットを獲得し、他クラブに比べて後ろの選手に外国人枠を使った。狙いは当然守備力の強化。結果として2015年に48失点だったのが今シーズンは39失点と、分かりやすく数字に現れてる。

攻撃面を振り返っても、中村憲剛はシーズン9ゴール11アシストで36歳とは思えない溌剌としたプレーを見せ、見事2016年のMVPを獲得。FWの小林悠はシーズン最後の怪我を除けはコンスタントに出場し、15ゴール11アシストとこちらも大活躍。

それでも勝てない。。。理由はどこにあるだろう?

1・デュエル、マリーシア

一番は中盤のフィルター力。天皇杯決勝でも鹿島と比べて激しさと泥臭さで劣っていた。攻撃が終わった後の切り替えも遅く、カウンター攻撃に滅法弱い。

中盤のフィルターが弱ければディフェンスとGKに優秀な選手を揃えていても失点してしまう。大事な試合は勿論、下位チーム相手にもあっさり崩されるシーンが目立った。2ndステージの横浜F・マリノス戦やガンバ大阪戦のように立て続けの失点も目についた。

過去記事:川崎フロンターレが優勝するためにはバルセロナのプレッシングを参考に

2・ビハインドの展開に弱い

天皇杯決勝で一度は小林悠のゴールで追いついたが、基本的に追いかける展開が得意でない。追いかける展開の時はボール回しが単調になり、ゴール前で大久保がイラつきを露わにする。今シーズンこんな展開を何度見たことだろう。

また、悪い癖として中央突破を狙いすぎてカウンターを喰らうこと。中央でボールを奪われるリスクはサイドの比でない。しかし、今シーズン何度も同じようなシーンが目立った。まるでザックジャパンを見ているようである。

3・メンタル

なんといってもメンタル。浦和レッズもそうだが、負けることが「またか…」となってしまっている。また、大事な試合でキープレーヤーが高いパフォーマンスを発揮できてない。

チャンピオンシップ第2戦目、鹿島が浦和に先制を許した際、鹿島は「二点取らないといけない状況に変わりはないし焦りはなかった」のようなコメントを残していたが、川崎にそういう切り替えはできないだろう。

風間監督就任以降、ボールを大事にするポゼッションサッカーは十分育ったが、勝負に必要なハート部分は最後まで強化できなかった。

以前も似たようなこと書いてましたね。

過去記事:今シーズンも川崎フロンターレは優勝できない

過去記事:川崎フロンターレの優勝が近づいたの確かだけど、有利なのは鹿島アントラーズ

川崎フロンターレが優勝するためには?

ここからは2017シーズンのことを考えてみたい。

既に決まっているのが風間監督の退任と大久保嘉人の移籍。

監督はコーチの鬼木達氏が昇格することが決まっているので、チームの方向性は継続だろう。エース大久保の移籍はそこまで大きなダメージではないと考えてる。しかし、前線の補強は必須。

優秀な外国人FWの獲得

2017シーズンからは外国人枠が5人になるので、現所属の外国人選手が全員残っても強力なFWは必要。

浦和レッズのワシントン、ガンバ大阪のアラウージョ、名古屋グランパスのケネディ、柏レイソルのレアンドロ・ドミンゲスと、初優勝時にはどのチームにもMVP級の活躍を見せた外国人FWがいた。

Jリーグで活躍すれば中国と中東のクラブに狙われるリスクを抱えることになるが、それでも外国人選手の得点力は魅力。ビッグゲームに強い前線は必要不可欠だろう。

日本人の汗かき役を

ボールに長けた選手も必要だが、今の川崎には中盤を引き締める選手が必要。2016年はエドゥアルド・ネットにその役割を期待したようだが、コンビネーションや声掛けなどを考えると、やはり日本人が適している。当然チームの心臓部分を務める選手は、各チームとも簡単には放出しないのでハードルは高いが、現状のメンバーなら2016年の二の舞を演じかねない。

小林悠と大島僚太

大久保移籍後にFWの軸となるのが小林悠、シーズンフル稼働が難しくなってくる中村憲剛に変わってもっと存在感を出したい大島僚太。この2人が2016年よりも活躍できるかどうかで川崎の今後が変わってくる。

と、幾つか挙げてみたが、川崎がタイトルを獲得するのは当分先のような気もする。大事なゲームで見せるメンタルの弱さを克服しない限り、いつまでも2016年を繰り返すことだろう。

願わくば中村憲剛には引退前するまでにタイトルを獲らせてあげたい…