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この胸いっぱいの貝を

『仕事はミスしてもいいから、思い切ってやったほうが後悔が残らない。』

これは、私に仕事のイロハを叩き込んでくれた上司の言葉だ。名前はハセガワさん。ハセガワさんは会社で上司部下関係なく「ハセさん」と呼ばれていたシティーボーイ。人柄も良く、仕事も出来る。スーツにシワはなく、シャツはパリっと、髪もしっかりとセットされたハセさんに穴を見つけるのは難しい。

会社の顔として活躍するハセさんから盗めるものは盗もうと、徹底的に食らいついた。朝はハセさんより早く会社へ行くことを心がけ、電話はハセさんよりも早く出る、ランチのご飯は無駄に大盛り、他の人のサポートも行う。いつしか憧れからライバル視していたが、そんな私に対してもハセさんは優しかった。

しかし、一つだけ気になることがあった。プライベートが全く見えてこないのだ。昼休憩中に普段の話を聞いても常に『寝てた』『洗濯&掃除』『プレゼン資料の作り込み』『サイト制作の続き』など、「どこかへ行った」「◯◯買った」という話がないのだ。ちなみにハセさんは独身。見た目は爽やかで彼女がいないことが不思議だったので、「もしかしてアッチ?」とも考えた。

ある日、営業に出ていたハセさんから電話がかかる。用意していた資料を忘れてしまったため、持ってきてくれないかと。ハセさんがこんなことするなんて珍しいなと思いながら、持って行くことした。問題はハセさんのパソコンのどこに該当ファイルがあるかだが、ハセさんは自分が使うパソコンのフォルダをしっかり記憶しており、『◯◯フォルダの◯◯という資料』と分かりやすい説明で該当フォルダまで導いてくれた。言われたとおり、ハセさんのパソコンを開き、該当フォルダまで行くと直ぐに必要な書類が見つかり印刷。気になったのが横のフォルダ『参考資料』。

少し気になったので開けてみると、様々な画像が見つかった。恐らくプレゼン資料製作時に使うものなのか?会社内の風景、ビル、風景、オフィスで働くサラリーマン、OL風な画像、、、、、、

そして、、、武田久美子。。。。。。

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???

やっぱり武田久美子。しかも貝殻水着。

一瞬止まってハセさんが口酸っぱく言ってきた言葉を思い出した。

仕事はミスしてもいいから、思い切ってやったほうが後悔が残らない。

『思い切ってやったほうがコウカイが残らない。』

が残らない。』

貝。武田久美子。貝。阿藤快。このフォルダに阿藤快の画像まであることを期待したが、他は武田久美子のアップ画像だけ。

頼まれた資料を持っていくか、武田久美子の画像を持っていくか悩み、私は二つを印刷して持って行くことに決めた。

指定した待ち合わせで資料と武田久美子の画像を一緒に渡すと、ハセさんは怒らずに『おい!』と軽いツッコミ。さすがだ。しかし、翌日以降ハセさんとの距離は広がった気がする。仕事面で頼らなくなったということもあるが、確実にハセさんは距離を取ってきた。

そしてそれから数カ月後、ハセさんはヘッディングされて会社を後にした。ハセさんには感謝しかない。ほぼ全てのことをハセさん経由で教わったノウハウは今でも有効に活用させてもらっている。武田久美子の画像以外は。

数年後、ハセさんとFacebook上で再会を果たした。以前よりも趣味に使う時間が増えたようで、ようやくハセさんのプライベートを見ることが出来た。どうやら趣味はサーフィンだったようだ。結婚もして奥さんと写っている画像も沢山アップしていた。めでたしめでたし。

何年も経っているのでどうでもいいけ、奥さんは武田久美子のこと知ってるのだろか???まあ、いいか。