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有川浩『植物図鑑』感想文:女性の願望も男性とあまり変わらないのかもしれない

植物図鑑 (幻冬舎文庫)

現実の女性が、アニメやドラマの女性キャラクターを見た時に「いや、こんな女の子はいないよ。空想上の生き物だよ」という感想を抱くと聞いたことがある。

 

普通に生活していれば、「~だにゅ」だとか「~だにゃ」だとかを語尾に付けて喋っている女性を見かけないのは当たり前だ。そういった女性キャラクターは確かに男の願望を集めて煮込んで固めた”煮こごり”のような創作物である。現実には存在しないし、実際に存在したら気持ち悪いと感じるキャラクターもいる。


男性目線のそういった創作物は本当によく目にするが、当然というべきか女性目線で願望を固めた”煮こごり”も存在する。「ハーレクイン」といった女性のお姫様願望を刺激するシリーズを始め、俗にいう「一途ないい男」が登場する作品たちだ。

 

今日の作品『植物図鑑』も100%女性目線から語られる願望をこれでもかという程集めて集めて集めまくって固めた作品だ。有川浩ファンの僕としては男性目線でツッコみつつも暖かい書評を書くことが出来ればなと思う。ネタバレとかもあまり気にしないでいく。

 

 

植物図鑑 

 

作者:有川浩

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出典:BOOKインタビュー 有川浩 - TSUTAYA online

ベタ甘系と呼ばれる甘い恋愛描写で有名な有川浩(ありかわひろ)『自衛隊3部作』『図書館戦争シリーズ』『阪急電車』など多くのヒット作を生み出している。

 

上記のような初期作品は男女間の恋愛描写がベタベタに甘い作品が並ぶが、『県庁おもてなし課』『フリーター家を買う』などの作品は、文章が少し説明的でメッセージ性が強い部分が目立つので、好みが分かれるところか。何となく、そのメッセージ性に有川浩の性格が見え隠れしていて気になるっちゃ―気になる作品が並ぶ。ゆえに個人的には『図書館戦争シリーズ』くらいの作品の方が好みだ。

 

 

作品の内容

お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか。噛みません。躾のできた良い子です――。思わず拾ってしまったイケメンは、家事万能のスーパー家政夫のうえ、重度の植物オタクだった。樹という名前しか知らされぬまま、週末ごとにご近所を「狩り」する、風変わりな同棲生活が始まった。とびきり美味しい(ちょっぴりほろ苦)“道草"恋愛小説。レシピ付き。

(引用:amazon)

というように、この作品『植物図鑑』はビッチの話だ(偏見)。

 

物語のあらすじを端的に説明すると、

一人暮らしのOL、さやかが夜帰ってきたら家の外にイケメン、イツキが座っていて「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか。噛みません。躾のできた良い子です」という、実際に言われたらマジ超怖いギャグさやかが笑ってしまい、その男を家に上げて泊まらせてあげて、そのまま住まわせて、同棲して草食って抱かれて付き合って別れて再開して結婚する話だ。 

 

見知らぬ男を家に上げて泊まらせてあげて、翌朝から同居の提案をするのは流石にビッチすぎる(個人の感想です)。そしてこれほどまでに「※ただしイケメンに限る」という言葉がしっくりくる作品もないかもしれない。

 

しかし、つまらない作品かと聞かれたら答えはNOだ。この作品は面白いのだ。その面白さの魅力はほぼ1つに集中している。それは上記説明文の草食っての部分だ。

 

ただ甘いだけの恋愛小説だと自分は受け付けないのだが、恋愛を包みこむプラス要素として草花や山菜が出てくるのだ。山菜を採ってきて料理して食べることが二人のデートで、大切な時間なのだ。それにより物語に四季が感じられ、時間の経過がとても自然な流れで伝わってくる効果を感じた。 

 

また、『植物』は2人の関係性を繋ぐ重要な要素になっていくので、単純なあらすじでは見えない魅力にあふれた物語になっている。

 

 

美味しそうな山菜

この作品は読み終わると、単純に山菜を食べたくなって大変だ笑。 

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有名な山菜というとフキノトウなどがあげられるが、天ぷらにしても実際はあまりおいしくない事が書かれていたり、逆に有名な山菜ではないが、ノビルユキノシタなど本当に美味しそうに描かれているので、読んでいると、本当にその辺に草を探しに行きたくなってくる。

でも慣れないと、山菜はきっとうまく調理することが出来ないのだろう。だからこそ、身近な所からチャレンジしてみようかな?と行動に起こしたくなる作品になっている。

 

 

料るという言葉問題

そんな魅力的な作品である『植物図鑑』なのだが、気になってしまう表現が出てくる。作者である有川さんは作中で山菜を調理することを「料る(りょうる)」と表現するのだが、どうやら高知県で使われる言葉のようだが、読んでいるとなんかすごい気になるのだ。高知県民以外で初めてこの作品を読んだ人の多くはこの「料る(りょうる)」という言葉に引っかかるのではないかと思う。

 

別にそれが嫌な訳ではないのだが、出てくるたびに一回「ん?料る?ああ、料理することね」と考えなければならないのでちょっと面倒くさいのだ。校閲の時に話とかでなかったのかな。物語がポンポン進んで面白いだけに、個人的には結構邪魔に思っていたりする。

 

そんな男はいないぞ問題

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それともう一点。この作品の王子様・イツキだが、こんな爽やかで誠実、怒るのは恋人を心配している時だけ、そして料理もうまくて、一皮むけたら結構エロい、なんていう男は流石にほぼいない。いくらなんでも無理があるだろう。と世の中の男性たちは感じているのではないだろうか。

 

だが、そんな男性たちは性別を逆転して考えてみてほしい。


一人暮らしの男の家の前に可愛い女の子がいて、家に転がり込んできて料理を作ってくれて、定期的に「格好いい」と言ってくれて、付き合った後は何だかんだで夜のベットも好き。そんな女の子が出てくる話だ。それって魅力的な状態ではないだろうか。

 

男性からみて魅力的な願望は、性別を逆転した場合女性から見ても魅力的な願望といえるのかもしれない。結局、女性が抱く願望も男性のソレとあまり変わらないのかもしれない。

 

重要なことは現実にこんな素敵な人がいなくともいいということだ。それでもこの話にはロマンがあるということに変わりはないのだから。

 

 

映画化情報

この小説を原作として、映画『植物図鑑~運命の恋、ひろいました~』が2016年6月4日から全国ロードショー。

shokubutsu.jp

 

主演として、イツキ役に三代目 J Soul BrothersEXILEを兼任している岩田剛典。まぁオジさんである僕からすると「がんちゃんって誰?」って感じだけど笑顔が爽やかで惚れそう。

 

そして、さやか役には「とと姉ちゃん」で奮闘中の高畑充希。超美人って感じじゃない所がさやかのイメージにとても近い。 

 

予告動画を見る限りだと、映画は是非とも行きたいと思っているので、今から楽しみだ。

 

 

最後に

この作品はとても女性目線で描かれてるので、男の立場としてはちょっと苦笑してしまう所もある。が、それはつまり女性から見て「男性とはこうあって欲しいという要望書」のようなものであるわけだ。


こういった作品をフィクションとして切り捨てて、自らに生かさないのは勿体ない。そのようなモチベーションで、登場人物のイツキのような一面を持てるように努力していきたいものだ。