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小説『しゃばけ』シリーズ全巻ネタバレ感想文と名言集 -畠中恵-

※2018/03/09 更新

しゃばけ (新潮文庫)

畠中恵の作品に登場するキャラクターたちはみな人柄が良い。もちろん畠中恵作品と一言ではまとめられないのだが、個人的に一番楽しめて一番温かい作品は、愉快な妖たちが登場する『しゃばけシリーズ』ではないだろうか。

 

『しゃばけ』シリーズの優しい登場人物たちは他人を想い共に苦しんだり、誰かのために己を犠牲にしたりと、切なさと温かさが同居する名言の数々を残している。そこで今回は『しゃばけ』シリーズに登場する魅力的な名言を挙げていきたいと思う。ちなみに、この記事は文庫版での感想に限定しており、単行本派の方々は文庫派の僕を許してほしい。

 

ということで、この記事は『しゃばけ』シリーズを読んでみたい人、そして読んだ感想を共有したい人へ向けた記事です。読んでない人にも少しでも興味を持ってもらえたら嬉しいので軽く紹介も兼ねるようにしておきますので、ぜひどうぞ。

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『しゃばけ』の魅力

長崎屋という廻船問屋兼薬種問屋の跡取り息子・一太郎と妖(あやかし)たちの日常と、彼らの周囲で起こる様々な事件を解決していく話で、同時に若だんなの成長物語でもある。登場する妖(あやかし)たちが可愛らしくユニークで、病弱な若だんなが、犬神である佐助と白沢である仁吉と共に推理物のような謎解きをしていく珍しい作品だ。

 

いくつも魅力のあるこの作品だが、大きく分けて3つの特徴がある。

 

1:時代物のミステリーであること

2:コミカルで魅力的な妖怪たちが登場すること

3:若だんなの成長物語であること

 

それらの3つの要素がキレイに融合しているからこそ飽きることなくこのシリーズがずっと人気を誇っているのではないかと思う。シリーズが進むにつれて1の時代物のミステリー要素が減ってきているような気もするが、やはり誰も解けない謎を若だんなが弱い身体と聡い頭で解決していく様は外せない要素である。

 

ではそんな作品たちの名言を紹介していきたいと思う。

あらすじはamazonからの引用。挿絵は以下から引用させていただきました。

http://book-sakura.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/109-113-2001200.html

しゃばけ倶楽部~バーチャル長崎屋~ | 新潮社

 

 

ざっくり登場人物

一太郎(若だんな)

廻船問屋兼薬種問屋の長崎屋の跡取り息子で周囲からは『若だんな』と呼ばれる。祖母・おぎんが妖(あやかし)だった為、妖怪を見ることができるが、病弱で何か行動を起こすとすぐに寝込んでしまう。両親や手代たちに甘やかされているが、誠実で芯が強くとても聡明な若者。僕は一太郎の人間性に惚れこんでいるからこのシリーズをずっと読んでいるといっても過言ではない。

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佐助(犬神)

長崎屋・廻船問屋の手代。元々は弘法大師が猪よけの為に描いた犬の絵の化身(『ねこのばば』の『産土』参照)。一太郎が幼いころからそばにいる兄や。若だんなの事が1番で、2番も3番もないという甘やかしっぷり。

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仁吉(白沢)

長崎屋・薬種問屋の手代。千年以上前から一太郎の祖母・皮衣に惚れて共に過ごした妖(『ぬしさまへ』の『仁吉の思い人』参照)。佐助と同じく一太郎が幼いころからそばにいる兄や。薬種問屋で働いているので佐助よりもやや登場回数が多い気がする。

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その他 

藤兵衛:廻船問屋兼薬種問屋の長崎屋の主人だけど婿養子。妻のおたえには一切頭が上がらない。おたえ大好き。おたえさえいれば何もいらない。

栄吉:まずい菓子しか作れない菓子屋の倅で一太郎の幼馴染。菓子修行のために店を出るので、後半になるほどたまに喧嘩したりする。

おたえ:半妖の美人で一太郎の母親。なんかズレてる変わり者。 

松之助:藤兵衛がよそで作った子。後半になるとあまり登場しない。 

おぎん(皮衣): 一太郎のおばあさん。有名なあやかしで一太郎の代わりに荼枳尼天様に仕える。 

清七(日限の親分):十手もちの親分。コミカル担当で一太郎の元へ難問を相談に来ることが多い。 

鳴家(やなり):メッチャ可愛い小鬼のあやかし。きゅわきゅわ言っててとても可愛い。

屏風のぞき:口が悪い屏風のあやかし。一太郎の将棋の相手をしたりする。(『ゆんでめて』では今後のストーリーを左右する存在になる)  

寛朝(かんちょう):妖封じで有名な、広徳寺の僧。お金にがめついが、それも困っている人のためだったりするおいしいポジションの人物

金次(きんじ):貧乏神だが長崎屋の面々には優しくされている為、まったく貧乏になる気配はない

 

他に挙げたらきりがないのでこれくらいで。

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しゃばけ  

しゃばけ (新潮文庫)

江戸有数の薬種問屋の一粒種・一太郎は、めっぽう体が弱く外出もままならない。ところが目を盗んで出かけた夜に人殺しを目撃。以来、猟奇的殺人事件が続き、一太郎は家族同様の妖怪と解決に乗り出すことに。若だんなの周囲は、なぜか犬神、白沢、鳴家など妖怪だらけなのだ。その矢先、犯人の刃が一太郎を襲う……。愉快で不思議な大江戸人情推理帖。日本ファンタジーノベル大賞優秀賞。

長編小説。2001年12月21日発行の第1作目(文庫2004年4月1日)

 

物語は江戸の時代、虚弱体質ですぐに死にそうになる主人公・一太郎が、夜中に殺人事件の現場に出くわしてしまう場面から物語がはじまり、その日から、薬種問屋を狙った事件が連続していく。

 

  • 違う犯人が同一犯のように連続して薬種問屋を襲うという事件はなぜ起こるのか?
  • 身体の弱い一太郎が夜中に出かけていた理由と、妖怪が見える理由とは何か?

 

殺人事件と一太郎自身の謎が交じり合い、読みながらも簡単には明かされない謎と共に物語が進んでいくので最初から最後までドキドキ出来るところが第一作目の特徴だ。名言は身体の弱い若だんなが、それでも自分を奮い立たせて障害に立ち向かっていこうとする心を表現した一言。

 

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”自分を哀れみ、それにおぼれることだけはしたくない。” 

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仁吉や佐助、その他の妖(あやかし)たちの紹介を兼ねており、店の人も妖怪たちも若だんなを大切に思っており、甘やかしたり安全な所に置こうとするが、当の若だんなは、虚弱体質だがその環境に甘えることなく人としてシャンと立っている姿にとても好感が持てる。 

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また、墨壺のなりそこないの狙いが判明した場面で、

 

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”なんてことだろう。私はその、なりそこないを、なんとかしなけりゃぁならないらしい”

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という勇ましくて責任感のある言葉が、自ら決心して敵に立ち向かう事を決めた場面の若だんなは、体の虚弱さとうらはらに力強い精神力を見せつけてくれる。身体は弱くとも、心の強さと賢さで問題ごとに立ち向かう若だんなを好きになってしまう作品なのではないだろうか。素晴らしいシリーズの幕開けにふさわしく、ミステリー要素を多く含んだ時代小説は心の底から楽しめる傑作になっている。

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ぬしさまへ 

ぬしさまへ (新潮文庫)

きょうも元気に(?)寝込んでいる、若だんな一太郎の周囲には妖怪がいっぱい。おまけに難事件もめいっぱい。幼なじみの栄吉の饅頭を食べたご隠居が死んでしまったり、新品の布団から泣き声が聞こえたり……。でも、こんなときこそ冴える若だんなの名推理。ちょっとトボケた妖怪たちも手下となって大活躍。ついでに手代の仁吉の意外な想い人まで発覚して、シリーズ第二弾、ますます快調。

全6話構成の短編小説。2003年5月22日発行の第2作目(文庫2005年12月1日) 

『ぬしさまへ』

"同じ冬の風に吹かれても、肌に感じるその寒さは違うのだ。守ってくれるものの、あるなしで。" 

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表題作。他人を貶しめる事でしか自分の立場に安心できない愚かなおくめが殺害される話。辛い目に遭ったとしても、誰かが寄り添ってくれるだけで違っているという名言。
この話では仁吉がモテキャラであることが判明する。おさきの行動の全てが悪な訳ではなく、ただその時その瞬間に鬼と化すことが人間にはあるのだろう。気を付けたいところだ。

 

 

『栄吉の菓子』

"植えられた草木を、美しい花と見るか、人を殺す毒と思うか"

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栄吉の菓子を食べた人が死んでしまい、栄吉に疑いがかかってしまう話。富くじ(今でいう宝くじ)が当たったことで逆に人が信頼できなくなることもある。毒も金も二面性があり、見る人間の視点によってその捉え方が変わってくるという名言。結構好き。

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『空のビロード』

"一人きりだということは、恐ろしいものだと人事のように思った。"

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一太郎の腹違いの兄・松之助が主人公の話。妖怪は特に出てこないが一番好き。時系列で言うと一作目『しゃばけ』の直後にあたる。松之助のような働き者のいい男でも心がぶれる時があり、自分を思ってくれる人がいる幸福を味わえてよかった。一人きりでいると知らず知らずに間違った道に足を踏み入れていることがあると気づかせてくれる名言。

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『四布の布団』

"他人にすがって助けを求める事を覚えた方が、自分も周りも楽になれる。ことにおかみさんはそうだろうよ。"

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布団から鳴き声が起こり、布団屋に取替えに行くことで事件に巻き込まれる話。布団に籠められた悲しみの深さはさほどでもなかったので良かったが、責任感の強さから気張りすぎると時に気づかずに人を追いこむことがあるという教訓。

 

 

『仁吉の思い人』

"無ければ日々を過ごすに不自由だが、心の行き場ではないのだ……。"

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仁吉の失恋話を若だんなに聞かせる話。大切な存在だけれど、なくても生きていけるというTENGAを指すような名言。ネタバレすると仁吉の失恋相手は、若だんなの祖父である大妖・皮衣。読むことで物語に説得力が増す素晴らしい作品。仁吉は男前だなぁ。

 

 

『虹を見し事』

"私は本当に、もっと大人になりたい。凄いばかりのことは出来ずとも、せめて誰かの心の声を聞き逃さないように"

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若だんなの周りから妖怪たちがいなくなってしまうミステリアスな話。短編なのにミステリー要素も強く、それでいて人情話でもあり、どんでん返しもあり、今後の一太郎の成長も予感させる素晴らしい作品だった。大きな事を成すよりも、近くの大切な心の叫び叫びに気づきたいという若だんなの素敵な名言。もはや抱いてほしい。

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ねこのばば 

ねこのばば (新潮文庫)

お江戸長崎屋の離れでは、若だんな一太郎が昼ごはん。寝込んでばかりのぼっちゃんが、えっ、今日はお代わり食べるって?すべてが絶好調の長崎屋に来たのは福の神か、それとも…(「茶巾たまご」)、世の中には取り返せないものがある(「ねこのばば」)、コワモテ佐助の真実の心(「産土」)ほか全五篇。若だんなと妖怪たちの不思議な人情推理帖。シリーズ第三弾。

全5話構成の短編小説。2004年7月22日発行の第3作目(文庫2006年12月1日) 

『茶巾たまご』

”己が殺す分には、止める理由が分からない。人に殺されるのは、御免こうむる。”

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松之助の縁談と貧乏神・金次が登場する話。これは名言というより自己中心的あるあるといったところ。現代風に言うとサイコパスな番頭が犯人であることが一風変わった展開を見せる。貧乏神に優しくすると幸せが運ばれてくるんですね。

 

 

『花かんざし』

”思い出すなら、怖い思い出だけでなく、花かんざしのことも覚えていて欲しい。”

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迷子の於りんちゃんが家に戻ったら殺されると言い出す話。中家の正三郎とお雛も初登場。内容的にはかなり切なく辛い話なのだが、人生には悪いことだけではなく良いことも起こるので、そのどちらも受け止めて欲しいという名言。今後の展開も含めてしっかり読んでおくと後々楽しめる。

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『ねこのばば』

”この世の中には確かに取り返せないものがあるのだと、寂しく思う。”

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猫又が広徳寺の寛朝に捕まってしまい、取り戻す予定が殺人事件に巻き込まれ…という魅力的な展開。僕が個人的に好きなランキング上位の寛朝が初登場する。寺の中で起きる殺人と、それに対する若だんなの賢さと幼さがなんとも楽しめる。この辺りではまだ成長途中ですね、若だんな。名言は人の命の尊さを感じさせるものだ。

 

 

『産土』

”若だんながいて、仲間の妖らがいて、この店がまた、佐助の居場所になった。”

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佐助が主人公の叙述トリックの暗いミステリーで佐助のエピソード0的作品。全体的に緊迫感があり、今までとは一線を画す作品になっているので素晴らしい。果たして旦那さまに裏切られた若だんなを守ることができるのか?ってのが見所。自分の居場所を作ってくれるという喜びは代えがたいですよね。

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『たまやたまや』

”他の男が、気に掛けている娘さんのことを話すのは、結構嫌なもんでしょう?”

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栄吉の妹のお春が嫁に行く話。お春が一太郎を想う気持ちが切ない。一太郎と共に、「お春を不幸にしたら許せん!」と憤ってしまう作品になっているので、少し情けない庄蔵には何とかして頑張ってもらわないと。あと、一太郎ももう少し大人になれればね。名言というより、ジワリと自分の感情を認めさせられる言葉。

 

 

 

おまけのこ

おまけのこ (新潮文庫)

一人が寂しくて泣きますか?あの人に、あなたの素顔を見せられますか?心優しき若だんなと妖たちが思案を巡らす、ちょっと訳ありの難事件。「しゃばけ」シリーズ第4弾は、ますます味わい深く登場です。鼻つまみ者の哀しみが胸に迫る「こわい」、滑稽なまでの厚化粧をやめられない微妙な娘心を描く「畳紙」、鳴家の冒険が愛らしい表題作など全5編。

全5話構成の短編小説。2005年8月22日発行の第4作目(文庫2007年12月1日) 

『こわい』

”俺は薬を飲もうとは思わないんだ。そいつに頼るのが怖いからさ”

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人にも妖にも受け入れられない狐者異(こわい)が登場して人間の欲を刺激して人を不幸にする話。珍しく若だんなと栄吉が喧嘩をするので新鮮さもあるし、仲直りの時の栄吉の名言が格好よくてしびれた。最後、優しさからこわいを家に招き入れそうになる若だんなの優しさと辛さに惚れそうになる。

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『畳紙』

”畳紙を祖父母が持っていると夢で思ったのは、そうあってほしいと、信じたいと、己が思っている証だろう”

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お雛さんが己の顔面塗り壁を気に病んで自分を変えるきっかけを掴もうとする話。本来の自分を見せることの怖さと困難さはいつの時代も変わらないのかもしれない。願望を気づかせてくれる優しい言葉。ちなみにこの話の中では、最後までお雛の容姿特になにも変化はないが、続編で変わってきます。

 

 

『動く影』

”みなで手を繋いで行けば、たいていのことは心配ない”

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体が弱いが頭が切れる子供の頃の若だんなと仲間たちのはじめての冒険。元気さでは負けてしまうが、聡明さと勇気で子供たちの輪に入る少年若だんな。小さいころの大冒険が友情を作っているので、栄吉と若だんなのルーツともいえる。子供同士の大冒険で聞ける頼もしい名言。

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『ありんすこく』

”この世にある人の気持ちは、百万の不思議に思える”

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吉原の遊女の足抜けに若だんなが手を貸してあげる話。さらりと足ぬけの事を話す若だんながとてもお子様的なので面白い。そんな幼さと、サラリと頭の回転の良さを見せる若だんなは割と格好良いと感じてしまう。友としての情と嫉妬や妬みは時に共存することもあるのでしょうね。とはいえまだ幼さ残る若だんなの成長を予感させる名言。

 

 

『おまけのこ』

”鳴家はおまけの役立たずでは無いといってやるのだ!”

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真珠強奪の暴行事件と鳴家の小さな大冒険の話。この話でも若だんなの聡明な部分が見れて嬉しい。ぎゃわぎゃわ。鳴家が可愛いくて可愛くて。1匹欲しいなぁ…としみじみしてしまう。1匹だけでいいんだけどね、笑。名言ていうか、もう可愛いよね、鳴家。

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うそうそ 

うそうそ (新潮文庫 は 37-5)

若だんな、生まれて初めて旅に出る!相変わらずひ弱で、怪我まで負った若だんなを、両親は箱根へ湯治にやることに。ところが道中、頼りの手代たちとはぐれた上に、宿では侍たちにさらわれて、山では天狗に襲撃される災難続き。しかも箱根の山神の怒りが原因らしい奇妙な地震も頻発し―。若だんなは無事に帰れるの?妖たちも大活躍の「しゃばけ」シリーズ第5弾は、待望の長編です。

長編小説。2006年5月31日発行の第5作目(文庫2008年11月14日)

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湯治の為に箱根に行くことになった若だんなだったが、あれよあれよと巻き込まれ、侍にさらわれ、天狗に襲われ、挙句の果てに山神の怒りで大洪水が…。といった普段のしゃばけシリーズと違い、大冒険をする若だんなが描かれてる。登場人物で特にポイントになるのは何といってもお比女ちゃん。他人と自分を比べて、卑下してしまう感情というのは、当たり前のように自分も持っており、周囲の人間から何を言われたところで、その自己評価の低さという泥沼から抜け出すことは難しい。

 

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”生まれてきた者は皆、強いとこも弱いとこも、どっちも身の内に持ってるもんらしい”

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結局のところ自己評価を覆すには、自分のやるべきことをやり、出来ることをこなしていき、自分の事を信用できる自分になれるように生きるしかないのかもしれない。全く湯治が出来ず可哀そうな若だんなではあるが、人の良さと賢さで事件の本質を捉えていく様は流石で、その性格の良さを読んでいるとついつい笑顔になってしまう作品になっている。ちなみに名言は人間の本質を突く言葉になっている。

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ちなみに解説に書いてあった、

 

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“若だんなの目線と読者の目線がリンクしているので物語との距離が近くなる”

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という意見も素晴らしい名言なので素直に感心してしまった。解説もぜひ!

 

 

ちんぷんかん 

ちんぷんかん (新潮文庫)

「私ったら、死んじゃったのかしらねえ」長崎屋が大火事に巻き込まれ、虚弱な若だんなはついに冥土行き!?三途の川に着いたはいいが、なぜか鳴家もついてきて―。兄・松之助の縁談がらみで剣呑な目に会い、若き日のおっかさんの意外な恋物語を知り、胸しめつけられる切ない別れまで訪れて、若だんなと妖たちは今日も大忙し。くすくす笑ってほろりと泣ける「しゃばけ」シリーズ第六弾。

全5話構成の短編小説。2007年6月22日発行の第6作目(文庫2009年12月1日)

『鬼と小鬼』

”人は死ぬと、生きているときの、己の行いを諮られることになる”

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煙を吸って死にかけた若だんなが賽の河原から生還しようとする話。自分の命が関わっているのに鳴家達の事を第一に考える若だんなの懐の深さを感じられる作品。賽の河原で出会った冬吉とは現世で出会うことになるが、それはまた別のお話。生きている時の罪は死んでから必ず償うことになるのだろうか。

 

 

『ちんぷんかん』

”臨機応変、変幻自在、縦横無尽、馬頭東風。いやいや、人に与える助言は、それぞれ違うものだ”

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広徳寺の寛朝の一番弟子である秋英が主人公の怪異の相談話。普段とは違い秋英の視点で描かれている様子が新鮮で面白く、幼いころからの秋英の歴史も辿れる。一見、破天荒なようで誠実な寛朝の秋英への信頼が読んでいて心地よい話になっている。言葉の助言とはあくまでも相手ありきであることを認識させてくれる名言だ。

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『男ぶり』

”お嬢さんが泣くと、この世の全ての花が、枯れてしまいます”

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一太郎の母・おたえと父・藤兵衛の馴れ初めをおたえの口から聞くお話。おたえがしっかりと話している姿がとても新鮮な作品で、口ぶりからもさぞ奔放な娘だったのが読み取れる。おたえへの口説き文句の名言だが・・・読んでみると、「けっこう、おたえって簡単な女じゃね?」と思わなくもない。

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『今昔』

”どう思い、誰を思い、何を言うか。”

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兄・松之助の縁談と病弱な縁談相手と陰陽師が登場するミステリー話。他の作品に比べミステリー要素が強くてドキドキでき、結末の金次の笑顔はゾッとする印象を受ける。それはそうと松之助の兄やには何としても幸せになって貰いたいと改めて感じさせてくれる小編。人が人と関わり生きていくことの難しさを感じさせてくれる名言。

 

 

『はるがいくよ』

”命はいつか尽きる。だが人の営みは、そこで途切れはしないのだ。”

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桜の花びらの化身・小紅をめぐる、命の長さとその価値について描かれたひとあじ違う作品。個人の命が尽きる時に、種としての生命の営みに価値を見出すことが出来るのかを考えさせてくれる名言。命の話って、ついつい自分に置き換えて考えてしまうものですね。切ない。泣けるぜ。

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いっちばん

いっちばん (新潮文庫)

 

摩訶不思議な妖怪に守られながら、今日も元気に(?)寝込んでいる日本橋大店の若だんな・一太郎に持ち込まれるは、訳ありの頼み事やらお江戸を騒がす難事件。お馴染みの妖がオールキャストで活躍する「いっちばん」、厚化粧のお雛ちゃんの素顔が明らかになる「ひなのちよがみ」の他三編を収録。大人気「しゃばけ」シリーズ第七弾。

全5話構成の短編小説。2008年7月31日発行の第7作目(文庫2010年12月1日)

『いっちばん』

”とにかく若だんなは今、楽しそうではないか。これが大事だ。”

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孤独を感じる若だんなをあやかし達が元気づけようとする話。小さな事件がいくつも折り重なることで解決方法が見えてくるのでプロットが面白い。そして、いっちばん大切なのは誰かと一緒にいることなのかもしれないと感じさせてくれる名言だ。

 

 

『いっぷく』

”若だんな、生きてたんやな。やっぱり若だんなも、生きてたんやな!”

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商売をする上でのやり取りかと思いきや、実は前作『ちんぷんかん』の小編『鬼と小鬼』で出会った冬吉との再会の話。初めて読んだときにこの奇跡の再開に物凄くテンションが上がったのを覚えている。去る人もいれば、新たに出会う人もいる。一期一会の魅力を感じる作品。喜びの言葉はいいですね。

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『天狗の使い魔』

”いつか二人は、喧嘩だってするようになるのかなぁ”

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天狗・信濃山六鬼坊と管狐・黄唐(きがら)の個人的なドタバタに若だんなが巻き込まれる話。身体は弱いが、聡明で実直な性格をしている若だんなの魅力を存分に味わえるので、若だんなファンには溜まらない小編といえる。遠くて近い未来の関係性を予感させる一言だ。

 

 

『餡子は甘いか』

”何事に付け、やる続ける事が出来るというのも、確かに才の一つに違いないんだ。お前さんには、その才がある”

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珍しく栄吉視点の菓子修行の物語。栄吉にとにかく感情移入してしまって辛くなってしまう。人と比べて出来ないという劣等感から逃げずに立ち向かう為にはそばに見守る誰かが必要なのかもしれない。名言は師匠から贈られる励みになる一言。栄吉メッチャ応援してる、ファイト!おー!!

 

 

『ひなのちよがみ』

”しくじりは、何回してもいいんです。次に繋げていけばいい”

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化粧を落としたお雛と婿に入る正三郎との商売と色恋の話。同時に若だんなの商売修行の話でもある。賢く聡明な若だんなだが、商売と色恋沙汰についてはまだまだお子様扱い。話の落としどころも含めて、お見事!と口をついて出てきてしまうような良作。少しだけ若だんなを自立させるような名言。

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ころころろ

ころころろ (新潮文庫)

ある朝突然、若だんなの目が見えなくなってしまったからさあ大変。お武家から困ったお願いごとを持ち込まれていた長崎屋は、さらなる受難にてんやわんやの大騒ぎ。目を治すための手がかりを求め奔走する仁吉は、思わぬ面倒に巻き込まれる。一方で佐助は、こんな時に可愛い女房をもらっただって!?幼き日の一太郎が経験する淡い初恋物語も収録された、「しゃばけ」シリーズ第八弾。

全5話構成の短編小説。2009年7月31日発行の第8作目(文庫2011年12月1日) 

『はじめての』

”ああ、お紗衣さんと会うことは、もう無いんだろうなぁ”

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若だんなの自覚すらしてない初恋の物語にして、連作短編になっているこの本のエピソード0的作品。まだ12歳の頃の背伸びをしたい若だんながとても可愛らしく、同時に聡明さの片鱗も見え隠れしている言葉。人の心の中の確かめようのない感情と付き合っていくのはどのような覚悟があれば良いのだろうか。

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『ほねぬすびと』

”縁側を転がっていった玉は、元々神のものだったのかもしれない”

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お武家様が絡んで長崎屋が嵌められてしまうかもしれなかった実は大ピンチだった話。長崎屋が藩士に頼まれて干物を運ぶ話なのだが、ただでさえ身体の弱い若だんなの目が見えなくなってしまうので、そちらの方にばかり気を取られて、あまりストーリーが入ってこない。冷静に考えると嫌な話だ。

 

 

『ころころろ』

”やれ、あの子も道を見つけたようだのう”

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玉探しをしている仁吉が主人公だが、何やら色々な厄介事を頼まれてしまうコミカルな話。河童やらしゃべる人形やら、妖が見える子供やら、とにかくたくさんの存在が仁吉を頼りまくるので、普段は割とクールな仁吉が動揺している様が面白い。あと寛朝が便利屋のように見えてくる話。

 

 

『けじあり』

”女だ。時として、鬼かな”

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同じく玉探しをしている佐助が主人公の話。佐助が結婚していたり時間軸がおかしかったり、さらには謎の「けじあり」の文字が描かれていくミステリアスな展開。このまま結婚していても結構幸せな生活が送れたんじゃないかと思えるほど、お似合いな二人だったが、若だんなに勝るものなしの佐助は決してそんな選択はしないのだろう。ある意味では一番の名言だ、笑。

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『物語のつづき』

”神は人に、時に、置き去りにされる”

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いよいよ生目神(いきめがみ)が登場して、若だんなの目を見えるようにしてもらう謎かけの話。何かしらで対決していくものかと思ったが、話は思わぬ方向へ。侘しく悲しい結末に少し動揺はあるが、何にせよ無関係な若だんなの目が元に戻って良かったと思える結末だ。時代と共に忘れ去られる神の存在は確かに存在するのだ。

 

 

 

ゆんでめて

ゆんでめて (新潮文庫)

屏風のぞきが行方不明になり、悲嘆にくれる若だんな。もしあの日、別の道を選んでいたら、こんな未来は訪れなかった?上方から来た娘への淡い恋心も、妖たちの化け合戦で盛り上がる豪華なお花見も、雨の日に現れた強くて格好良い謎のおなごの存在も、すべて運命のいたずらが導いたことなのか―。一太郎が迷い込む、ちょっと不思議なもう一つの物語。「しゃばけ」シリーズ第9作。 

全5話構成の短編小説。2010年7月30日発行の第9作目(文庫2012年12月1日)

『ゆんでめて』

”明日も、明後日も、来月も、来年も、どうしてあの時、道を右へと行ったのだろうと、きっと繰り返し考える気がする”

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時間の経過の速さや屏風のぞきの死やら、いろいろな衝撃が走る作品。小編ごとに未来から過去に遡っていく構成が面白く、『しゃばけ』以来の謎の緊張感を味わうことが出来た。道を一本変えるだけでこれほど大きな人生の変化があるのかと思うと恐ろしいやらなんとやら。この言葉のように未来を見据えて過去を想うことが稀にある。

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『こいやこい』

”一太郎さんがお嫁にしてくれたら、江戸へ住むことになるわよ”

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上方からやってきた5人の許嫁の中から本物を見つける話。単体で見るとニヤニヤする若だんなの恋バナだけど、一冊読み終えてから振り返るとすれ違う二人の切ない物語。名言というか、若だんなの縁談話というだけでテンションが上がる言葉ですよね。

 

 

『花の下にて合戦したる』

”桜の下にいるのに、誰かが一人きりで田楽を食べてるなんて、嫌じゃないか”

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妖や人間が入り乱れて大宴会を開催する話。森見登美彦作品のような独特の華やかさとハチャメチャさがあって楽しめた。若だんながサラリと語る優しい名言はこの本の中で一番好きかもしれない。

 

 

『雨の日の客』

”敵うはずなくてもかい?いいねえ、男だよ、若だんな”

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禰々子(ねねこ)かっぱとはじめて出会い、洪水の日に起こる幾重にも重なる事件の話。敵うか敵わないかではなく、やらなければいけない時があるということを、若だんなはわかってるんだよね。いいねえ、男だよ、若だんな。

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『始まりの日』

”これよりは、弓手の道”

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この特殊な連作短編集の生まれたきっかけを元から絶つ作品。小さな選択が後の若だんなの運命に大きな影響を与えることになるが、最終的に今まで読んでいた人生が消えてなくなるので切なさと虚しさを感じる。それでも後の話にも小さく爪痕を残すところがにくい良作。構成も◎!

 

 

 

やなりいなり

やなりいなり (新潮文庫)

偶然みかけた美しい娘に、いつになく心をときめかせる若だんな。近頃通町では、恋の病が流行しているらしい。異変はそれだけに止まらず、禍をもたらす神々が連日長崎屋を訪れるようになって……。恋をめぐる不思議な騒動のほか、藤兵衛旦那の行方不明事件など、五つの物語を収録。妖たちが大好きな食べものの“れしぴ”も付いて、美味しく愉快な「しゃばけ」シリーズ第10作!

全5話構成の短編小説。2011年7月29日発行の第10作目(文庫2013年12月1日)

『こいしくて』

”私はずっと、本当に長く、病で苦しんできております。その病を、より多くの人にばらまく手伝いなど、する訳がありません”

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八百万の神が何人か江戸の町に集まったことで、恋の病が発生してしまった話。橋をまもる神様の存在などは、なるほど神話にも出てくるので興味深い。名言は、若だんなが健康と引き換えに交換条件を出されたときに放った一言。人間としてちゃんとしておるのう。

 

『やなりいなり』

”世間によくある万能薬は、大概、毒にも薬にもならない程度のものだから”

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古典落語の粗忽長屋(そこつながや)をモチーフにしていて、下手糞な噺家の幽霊が登場してその正体を探る話。死んでいない霊、つまりは生き霊だったので変に生きている感覚が強い所がユニーク。最終的には鳴家の顔入りのいなりをほのぼの食べるほっこり話。 

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『からかみなり』

”親とはぐれた、小さい子供じゃないか。見た目が可愛くないからって、邪険にするのは可哀想だよ”

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藤兵衛が迷子の子供を心配して帰宅せず、長崎屋がバタバタしてしまう話。藤兵衛は本当におたえさんのことが好きなんだなと感じられるのでこの話もかなり癒される。ちなみにこの台詞は藤兵衛のもの。若だんなによく似て優しい。

 

『長崎屋のたまご』

”派手な兄弟喧嘩を見はしたが、一緒にいる三十魅と百魅が、ちょっぴり羨ましかった”

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逢魔が時に生まれた百人の魔が降りてきて兄妹げんかをする話。”逢魔が時”だなんていうと禍々しいが、要はただの兄弟げんかの話だ。台詞は若だんなは今でもたった一人の兄・松之助と共にいたいと願っている一言。

 

『あましょう』

”いて欲しいと言ってくれる友がいる”

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友が友でいてくれることに感謝したくなる名作。結婚と友情が絡み合って泣ける物語になっている。一番おすすめの作品かもしれない。切なく哀しいが必ず起こりうる人と人の別れは、遠い先かと思いきや本当にすぐ目の前にあることを思い出させてくれる名言。

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ひなこまち 

ひなこまち (新潮文庫)

長崎屋へ舞い込んだ謎の木札。『お願いです、助けて下さい』と書かれているが、誰が書いたか分からない。以来、若だんなの元には不思議な困りごとが次々と持ち込まれる。船箪笥に翻弄される商人、斬り殺されかけた噺家、売り物を盗まれた古着屋に、惚れ薬を所望する恋わずらいのお侍。さらに江戸一番の美女選びまで!? 一太郎は、みんなを助けることができるのか? シリーズ第11弾。 

全5話構成の短編小説。2012年6月29日発行の第11作目(文庫2014年12月1日)

『ろくでなしの船箪笥』

”そやな。これ以上の揉め事は、もう要らんわな”

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相続で貰った開かない箪笥を開けることに関するドタバタの話。若だんなと違い、七之助は将来的に清濁併せ吞む商人になりそうで楽しみになってしまう。引き際というか、落としどころをわきまえた七之助の一言。

 

『ばくのふだ』

”全く人ってぇのは、怖い、怖い”

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悪夢を食べるばくが噺家として怖い話を披露する話。自分の罪を悪夢で見るということはつまり、心の底に流しきれない罪の意識があるということだ。ある意味では人間には心の自浄作用が備わっているのかもしれない。獏ならではの名言は皮肉にあふれている。

 

『ひなこまち』

”自分であれこれしたいでしょうけど、それをやったら途中で倒れる事も、ちゃんと承知なさってる”

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ひな人形のモデルになる雛小町なるものを決める、いわば美人コンテストのお話で、同時に着物泥棒を捕まえる話。全く望んでいないのに雛小町に選ばれてしまうという辛さなんて世間は考えないのだろう。名言は、若だんなのことをしっかり理解している仁吉の言葉。

 

『さくらがり』

”夫婦であり、互いの気持ちが互いに向いているとしても、難しい事もあるのですね”

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『ゆんでめて』で行った花見を別の未来として再度行う話。場所もなにかと融通の利く広徳寺でメンバーも違うのだが共通項もある。寧々子河童も登場し、その秘薬の惚れ薬から事件が発生する。名言は、人の気持ちと行動は必ずしも一致するわけではないという言葉。

 

あともう一つ。この言葉も良かった。 

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”やれ、桜が咲いて散るまでは短い。故に、色々考えてしまうな”

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日本人は破滅願望があり、儚いものが好きと言われているが、それは桜があまりにも美しいからなのではないかと思ってしまう一言。 

 

『河童の秘薬』

”もう赤ん坊が、母から離されずに済みますように”

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河童の秘薬を差し上げた相手と夢の中で再会し、子供を護る話。安居と雪柳がなんとものほほんとしていて魅力的なので、この先のシリーズでもぜひ再開したいと思ってしまう。ちなみに赤ん坊のこの言葉って、色々な言葉の中でトップクラスに毒のない優しい言葉だと思う。

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たぶんねこ 

たぶんねこ (新潮文庫)

病弱若だんなが兄やと交わした五つの約束とは? 累計580万部「しゃばけ」シリーズ最新作! えっ、若だんなが大店の跡取り息子たちと稼ぎの競い合いをすることになったってぇ!? 長崎屋には超不器用な女の子が花嫁修業に来るし、幼なじみの栄吉が奉公する安野屋は生意気な新入りの小僧のおかげで大騒ぎ。おまけに幽霊が猫に化けて……。てんやわんやの第十二弾の鍵を握るのは、荼枳尼天様と「神の庭」!

全5話構成の短編小説。2013年7月22日発行の第12作目(文庫2015年12月1日)

『跡取り三人』

”本当に働きたかったんだ。嘘じゃない。寄席でお菓子が売れた時は、そりゃ嬉しかったんだから・・・”

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大店の跡取りが集まって腕試しをさせられる話。新しい二代目若だんなネットワークが構築されていくようで面白かった。名言は初めて己の力だけでお金を稼いだ若だんなが体調を崩したときの心の叫び。一太郎は身体が丈夫だったら大した商人になっていたんだろうなぁ。 

 

『こいさがし』

”人と人との、気合い入りの勝負!これが見合いだったんだ!”

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重なって起こる見合いと長崎屋に花嫁修業をするため於こんがやってくる話。どうにも人と人との色恋沙汰は他人の思い通りにはいかないので、結局は気持ちを確かめ合って手探りで進んでいくしかないものなのだろう。名言は初めてお見合いを目の当たりにした若だんなの勘違いの一言。

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 『くたびれ砂糖』

”器用だろうが、親に金があろうが、お前さんは菓子屋になどなれないよ”

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愛すべき栄吉が生意気で甘ったれの後輩に四苦八苦する話。生意気でどうしようもない小僧に腹を立てつつ読んでしまうのだが、こういう勘違い人間はいつの時代のどんな場所にも存在するんだろうね。名言は甘えて心の足りない後輩へ伝えた栄吉の一言。

 

『みどりのたま』

”でもね、これだけ大勢の想いが、古松さんへ集まったんじゃないか。きっと皆、古松さんが大好きなんだよ”

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記憶喪失になった仁吉が己を探りつつ神の庭に行きそうになる話。久々におぎんと再会した仁吉がガツンと衝撃を受けて記憶が戻る様子についつい思っちゃいましたよね。童貞かっ!!って。それくらいおぎん大好きなんですね。会ったら泣いちゃうもんね。名言は全然関係ないけど素敵な言葉。

 

『たぶんねこ』

”己の最期を、人に言われて決めるのは駄目だ。己で決めな”   

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入道に連れられて神の庭から幽霊が江戸にやってくる話。若だんなも巻き込まれて共に幽霊・月丸が江戸で暮らしていけるかを探るのだが、人斬りの窃盗団と出くわして揉めてしまう剣呑な展開に・・・。久々の緊迫感で楽しめた。名言は屏風のぞきが月丸に伝えた粋な一言。

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すえずえ 

すえずえ (新潮文庫)

若だんなの許嫁が、ついに決まる!? 幼なじみの栄吉の恋に、長崎屋の危機……騒動を経て次第に将来を意識しはじめる若だんな。そんな中、仁吉と佐助は、若だんなの嫁取りを心配した祖母のおぎん様から重大な決断を迫られる。千年以上生きる妖に比べ、人の寿命は短い。ずっと一緒にいるために皆が出した結論は。謎解きもたっぷり、一太郎と妖たちの新たな未来が開けるシリーズ第13弾。

全5話構成の短編小説。2014年7月31日発行の第13作目(文庫2016年11月28日)

『栄吉の来年』

”たぶん……生まれて初めて、本気で好いた相手が出来た” 

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栄吉の縁談のゴチャゴチャとした話。栄吉と一太郎の二人が色恋沙汰の話をしていると、なんだか大人になったなぁとしみじみしてしまう、笑。気の強いお千夜と栄吉はお似合いな気がする。言葉は栄吉の素直な告白。

 

『寛朝の明日』

”良き者がおれば、とっくに側に置いておる。唯一の弟子、諦めて働けよ”

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寛朝があやかし退治のために旅に出る話。寛朝の旅という今までの話とは一風変わったストーリー展開が新鮮で、さらに間一髪で喰われそうになるスリリングな物語でシリーズの中では久々に緊張感のある話だ。名言は弟子の秋英に対して言い放った厳しくも愛に溢れた言葉。

 

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『おたえの、とこしえ』

”きっと、とこしえにこういう日が続いたなら、それはそれは幸せに違いない” 

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藤兵衛が不在の中、長崎屋を乗っ取ろうとする輩から店を守ろうとするおたえさんの話。なんとなく、おたえが主役だとテンションが上がる。が、若だんなが上方へ父を探しに出かけるという大冒険をしているのに、おたえ目線では省略されているので少し悲しい。名言は何気ない日常の大切さと儚さを教えてくれる一言。

 

『仁吉と佐助の千年』

”それで私は正しい答えではなく、やりたいことを決めました” 

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若だんなに突然多くの縁談話が舞い込む話。 嫁が決まれば若だんなと一緒に暮らせない兄やたちが荼枳尼天様がいる神の庭に帰るかどうかを迫られるのだが、いつもおぎんは急にこういうことを言う印象がある。ドッキリ好きですよね、おぎん。でもこうもあっさり花嫁が決まるとは驚いた。でも、一番いいよね、きっと。名言は人生の岐路に思い出したくなる力強い言葉。

 

『妖達の来月』

”誰か誰か誰か、己の側に居て。どこへも行かないで。”

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金次、おしろ、場久が隣の一軒家で暮らし始める話。長崎屋の面々も徐々に変わっていく様子が新鮮なようで寂しい気もする。ただもう金次は貧乏神なのだからあやかし達と同じような感じで生活していてよいものかと急に我に返ってしまった、笑。言葉は切実さを感じる一言。  

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えどさがし しゃばけ外伝 

えどさがし (新潮文庫)

時は流れて江戸から明治へ。夜の銀座で、とんびを羽織った男が人捜しをしていた。男の名は、仁吉。今は京橋と名乗っている。そして捜しているのは、若だんな!? 手がかりを求めて訪ねた新聞社で鳴り響くピストルの音! 事件に巻き込まれた仁吉の運命は――表題作「えどさがし」のほか、お馴染みの登場人物が大活躍する全五編。「しゃばけ」シリーズ初の外伝、文庫オリジナルで登場!

全5話構成の短編小説。2014年12月1日発行の外伝作(文庫オリジナル)

『五百年の判じ絵』

”この店には、守るべき者と、友と、顔なじみと、暮らしていく場所があるんだな”

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佐助が茶店の判じ絵(絵文字)の謎解きから長崎屋にやってくるまでの話。佐助とおぎん&仁吉の出会いもわかるのでファンには溜まらない話。佐助が本当に欲しいものとは何かという問いは何気ないようで核心を突いているようにも思える。名言はその核心に自ら気が付いていく言葉。

 

『太郎君、東へ』

”ああ、これが人を好くって事なんだね” 

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利根川の化身・坂東太郎と利根川の流れを変えようとする人間のいさかいを禰々子(ねねこ)河童が治める話。禰々子の強さもスカッとするが、実は普請を行う侍・小日向に自分でも気が付かない恋心を抱いていたらしい描写になんだかほっこりしてしまう。禰々子は意外と惚れっぽいと思う。

 

『たちまちづき』

”ならばそれを示しなさい。誰も止めやしないから”

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口入屋で発生したトラブルを解決する話。紹介した人間が大名家の大切な花入れを壊してしまい、それを理由にその口入屋が乗っ取られそうになるのを普段は温和な店主がピシャリと阻止する。プレーヤーとマネージャーに求められる才能の違いを感じてしまう話だった。ちなみに名言は「自分の方が優秀だ」と言ってきかない番頭に対する優しいようで何よりも厳しい一言。

 

『親分のおかみさん』

”おっかさんになると、赤ん坊の事が第一。寝ちゃいられません”

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日限の親分のおかみさん(おさき)が赤ん坊の面倒をみる話。なんか、外伝だなぁ・・・って感じがする主人公だが、話の内容は結構シビアでおさきの気持ちになって読むと切なくて辛くてたまらなくなる。名言はその辛さを乗り越えたおさきの力強い一言。

 

『えどさがし』

”ああ……本当に会えるんだ”

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時は流れて明治の時代になったあやかし達が「長崎商会」を営みながら若だんなの生まれ変わりを探す話。さらに新聞社で殺人事件も起きて剣呑な展開をみせる新しい「しゃばけ」の物語。江戸の時代の「長崎屋」とその仲間たちが姿かたちを変えつつ時代を超えている様子はジーンとくるものがある。言葉は名言というか、佐助が見つけたと手紙をよこしたことに対して仁吉が感じた気持ちの一言。永かったろうにねぇ・・・。

 

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なりたい 

なりたい (新潮文庫)

来世で何になりたいか苦悶中の若だんな! 神様に気に入られる答えは見つかるの~? 許嫁も決まった病弱若だんなは仕事を覚えたくて仕方がない! 渋る兄や達を説き伏せて働いたものの、三日で寝こんじゃった。寝ながらできる仕事を探すことになったけど、悪戦苦闘。しかも消えた死体を探せとか、猫又の長を決めろとか、おまけに神様まで……。長崎屋の離れは今日も事件でてんてこまい! シリーズ第十四弾!

 全5話構成の短編小説。2015年7月22日発行の第14作目(文庫2017年12月1日)

『妖になりたい』

”丈夫になったら寺の屋根で酒を酌み交わそう”

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若だんなが考案した薬に必要な蜂蜜を手に入れるため、妖になりたがる男の願いを叶える話。『天狗の使い魔』でもそうだったが、意外と天狗が寂しがり屋なことにほっこりしてしまう。名言・・・というか寿真が若だんなに伝えた気持ちの良い一言。

 

『人になりたい』

”人っていうのは時々、気味の悪い生き物になるね”

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お菓子好きが集う江戸甘々会で起きた人殺しの話。ただ好きなものを好きといえる人間関係というのは意外と難しいのかもしれない。江戸甘々会(えどあまあまかい)という名前からは思いつかないくらい剣呑な話だった。妖と違い人間は都合の悪いことは口をつぐんで時が流れるのを待つことがある。名言は妖から人間をみたそんな一言。 

 

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『猫になりたい』

”ここいらで、他の生き方をしてみた方がいい。元の主達とて、とうに別のものに生まれ変わっておろうさ”

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猫又の頭選びの相談を受ける話。若だんなの頭の回転が良く、人間的にも優れているために、頭選びの条件が状況によってコロコロ変わるのが面白い。さらに大福帳が盗まれたり、金次が嫌がらせを受けたりと色々と詰め込まれたお話。名言は新しい猫又の頭・虎が復讐心に囚われたくろに対して伝えた器の大きな一言。

 

『親になりたい』

”親、大変。なのに親、なったら良いの?”

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長崎屋の奉公人・おようの見合いの話。相手のもらい子である三太と共に生きることを決意したが離れて暮らすことになってしまったのは切ない。新しい子が出来てもきっと三太のことは気に病むだろうから・・・。名言は、親になるのは大変なのに親になりたがることに疑問を持った鳴家の可愛いつぶやき。

 

『りっぱになりたい』

”一つの事が、ありがたかったり、困り事だったり。物事は不思議です”

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近所の大店の万之助が亡くなったことから始まるひと騒動の話。同じ病弱仲間だった万之助だが不思議と若だんなと縁がなかったが、死んでから縁を持つというのも面白いものだ。先立つ立場として親の枕に立ち、来世の事を話して安心させたいと思えるだけで立派なもんだ。名言は事件に巻き込まれて良いことも悪いことも起こる人生の不思議さをあらわしている一言。

 

 

これ以降の最新刊は文庫待ちです

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あしからず

 

 

おおあたり

 

 

とるとだす