ドMのネトラレ好きだけが楽しめる闇落ちクソ恋愛小説『リケコイ。』感想文|喜多喜久

僕は基本的に、おすすめしたい小説の話をしたいのですが、多く本を読んでいるとたまに交通事故のように突発的にクソ小説にぶち当たることがあります

すべてが時間の無駄で、何一つ得るものもなく、過ごした時間も価値がない。マジで時間とお金を返して欲しいと、作者にジャンピングニーバットをかましたくなる小説が実際にあるんです。

出来れば皆さんにそんな思いをして欲しくないので、地雷処理班的な立場から、

“おすすめできない恋愛小説”

として、この作品を紹介してみたいと思います。

リケコイ。

あらすじ

恋愛経験ゼロ。冴えない理系大学院生の森は、ある日突然恋に落ちた。相手は、卒業研究をするためにきた、黒髪メガネの年下リケジョ・羽生さん。ところが、好みド直球な彼女にはある重大な秘密が!妄想と現実に身悶えながら、あの手この手でアプローチを仕掛けるが、ひたすら空回り。それでも諦めきれない…。どこまでも不器用で、思わず応援したくなる、歯がゆさ満載の青春ストーリー!(引用:amazon)

まず一言モノ申したい!!

この小説の内容ってあらすじと全然違うからね!!!

このamazonのあらすじを読むと、なんだかちょっと面白そうなのが腹が立つんですよね。でもこのあらすじから誘導される物語の展開と、実際の内容が違いすぎるから!!全然違うから!!

正しく描かれているのは、主人公のがリケジョの羽生さんに恋をすることまでです。あとは全然違います。違う部分をあらすじから抜き出してみましょう。まずこの部分。

ところが、好みド直球な彼女にはある重大な秘密が!

こんな風に重大な秘密なんて言われたら、主人公がその秘密を知って、共に解決していくことで愛情が芽生える話だと思うじゃないですか。でもこの秘密って、

“ただ羽生さんに彼氏がいる”ってだけですからね。大好きな彼氏がいるってだけですからね。重大でも何でもなく女子大生にとって当たり前なことが起きてるだけ。

あとここもおかしい。

あの手この手でアプローチを仕掛けるが、ひたすら空回り。

主人公・森のあの手この手でアプローチって、普通だったら不器用ながらデートに誘ったり、誕生日のプレゼントをあれこれ考えたりしながら思い悩むことだと思うじゃないですか。でも、このアプローチって、

“気持ち悪く迫りながら、酔った羽生さんにエロいことする”だけですからね。合宿で寝ている羽生さんにキスしたり、身体をまさぐったりするだけですからね。クソですわ、クソ。

だからここもおかしい。

どこまでも不器用で、思わず応援したくなる、歯がゆさ満載の青春ストーリー!

全然応援したくなんねーよっ!

むしろ、これほどまでに読んでいて不愉快になる小説は初めてと言ってもいいかもしれないレベルです。ウソとは言わないまでも、なぜこんな内容との相違があるあらすじを書いたのでしょうか?理解に苦しみます。

以下、ストーリーをザックリ書きます。ネタバレ注意です。

主人公の森が後輩の羽生さんに恋をして、性欲丸出しの下心で羽入さんの研究や試験勉強など様々な手助けをしてあげます。そして、早々に告白をするものの彼氏がいるのであえなく撃沈してしまいます。 

その後は、羽生さんと彼氏のノロケ話や性体験を、日常的にひたすら聞かされる地獄のような時間が流れます。その期間めっちゃ長いです。

それでも、あきらめずに羽生さんに言い寄っていた森は、最終的に土下座して一発ヤらせてくれと頼むものの撃沈。逆恨みして羽生さんにボロクソ言ったり、謝ったりゴチャゴチャしてたら、最終的にいきなり登場した無関係の後輩の男が、酔った勢いで羽生さんと一発ヤって物語が終わります。 

なんでしょう、この、クソストーリーは、笑。

感想…というより問題点

この作品の最大の問題点は、ズバリ、

読む前の爽やかなイメージ本の内容がかけ離れている点

にあります。

上記した、amazonのあらすじに対する感想もそうですが、本の爽やかな装丁が内容とのギャップを広げている部分も問題です。

ピンク色のポップな字体で『リケコイ。』と書かれた表紙には、黒上ロングのメガネ女子がこちらを向いて薄く微笑んでいて、手にした三角フラスコの上から小さな男の子がハートマークを贈っています。なんか純愛感がありますね。コミカルだけど素敵な恋の予感が漂う装丁じゃないですか!

でも内容はクズみたいな話ですよ。気を付けて。この爽やかな装丁は無駄に爽やかな恋愛を連想させ、読者の感覚と内容のズレを感じさせているのです。

もちろん、本の内容が自分の想像と違うと感じるのは、勝手な想像をした読者側の責任だと思いますが、この手の小説は読者が主人公に対して感情移入していくことで、疑似恋愛を味わう側面もあると思うんです。(てか、恋愛小説は基本そうです)だから、主人公の森に感情移入しつつ読もうとすると、嫌な思いしかしない為、心の底から不快な気分になってしまうというわけです。

そんな、ある意味リアルな主人公・森の性欲爆発の思考回路を不愉に感じるのは置いておいて、実はヒロインの羽生さんがクソビッ〇であることも、この作品の不快さに深く関わっているのです。

歴史に残るクソビッ○ヒロイン羽生さん

森がクズ主人公であることは明白ですが、同時にこの作品のヒロインである羽生さんもかなり酷い。彼女ほどお股と頭がユルユルなヒロインは初めてなので、僕も動揺を隠せないのですが、どの辺りが頭の悪いクソビッ○ヒロインなのかを一つずつ検証してみましょう。

①振った相手に「ワンチャンあるかも」って思わせる

物語のけっこう序盤で、主人公の森は羽生さんに電話で告白をします。え?もう告白すんの?って驚くくらい早めに告白するので、それもある意味衝撃なんですが、結果的に森は振られてしまいます。

その理由なのですが、

「この前、ずっと好きだった人と付き合いだした」

というタイミングの悪いものでした。

そこまではいい。

それは仕方ない。

問題はそのあとに、

「今の彼氏がいなければ森先輩と付き合ってました」

と、振った相手に気を持たせる発言をぶち込む事なんですよね。

そんなこと言われたら、「お ワンチャンあるかも」って思ってしまいますよね。そして、そう思ってしまったがゆえに森の地獄の日々が始まるのです。

②振った相手に「今の彼氏との性体験」を話す

告白した後の羽生さんは自らが振った森に、彼氏とのノロケ話や性体験をガンガン話しはじめます。頭でもおかしくなったのでしょうか。

森もバカなので少しでも羽生さんと話すチャンスを失いたくないから、その下ネタに乗っかっちゃうんですよね。引くくらいのドM野郎である森は羽生さんと話す為に、彼氏との性体験を聞かなければならないという悪循環から抜け出せなくなります。

たとえば、途中で森が羽生さんにAVを貸してあげます。すると数日後に、羽生さんは彼と「AVを観て盛り上がっちゃった、ウフフ」的な話を森にするのです

マジでサイコパス羽生。マジでドM森。

一生やってろバーーーーーーカって感じですね。

③酒の勢いで襲ったら、キスで迎え撃つ羽生さん

そんなモンモンとした毎日を送っている森だが、ついに一歩踏み込みます。

ゼミ旅行の夜。みんな酔っぱらって寝てしまったときに、寝ている羽生さんの身体にムラムラして、寝ている羽生さん相手に身体をまさぐり始めるんです!!なんて羨ましいまったくもって許せない犯罪です!!

身体をまさぐられていたら流石に起きます。途中で目を覚ました羽生さんは怒り出すのかと思いきや…なんと、キスで応戦するではないですか!!

さらにもっと酔ったらどうなるかわかりませんよ、うふふ」みたいなことを言い残して去っていきます。すげービッ〇にしてヤ〇マン!!人類の希望、友達になりたいどうしようもありませんね。

というわけで、結局羽生さんはゲットできず。でもこの場面を思い出して、森はさぞ良いオナーニをしたことでしょうね。むなしいだけだけどね。

④正論をぶつけたらショックで寝込んじゃう

そんな思わせぶりな態度がつづき、焦らされすぎて、もはや頭がおかしくなってしまった森は、羽生さんの大事な研究発表の前日に土下座して一発ヤらせてください。と頼み込むパワープレイに出ますが、・・・盛大に振られます。

まぁこれはしょうがない。

森はドMなんだから、おとなしくギャグボールだかヨダレ玉でも咥えてればよかったんですよね。

で、そのことで森は、

「思わせぶりな態度をとるな!」

と逆ギレして、溜まっていた感情を羽生さんにぶつけます。

するとどうでしょう。

なんと羽生さんはショックで寝込んでしまうのです今まで森にしてきたことのツケが廻ってきたら、アタシモウ傷ツイタワ。と、かよわぶってフェードアウトです。ヤレヤレだぜ。

そして結局、長い間不登校気味で過ごすことになり、最終的に森は羽生さんに謝罪をして微妙な距離感のまま物語はクライマックスに向かいます。

⑤最後は違う男と一発ヤっちゃう

何だかんだで、心の中では付き合っている彼氏一筋の清純な羽生さんは、森に対してどんなヒドイ行動をとっていたとしても別にいいと思うんです。

だって、なんだかんだでやっぱり彼氏のことが好きで、その想いを貫いているのですから、正義は常に羽生さんにあるのではないでしょうか。

・・・なんて思っていたら、最後にクソみたいなどんでん返しがあります。簡単に言うと、酔った羽生さんがゼミの後輩と酒の勢いで一発ヤります

で、それを間接的に森が聞いて絶望しながらこの物語が終わっていくのです。

なんて気分の悪い物語なのでしょうか。ドMのネトラレ好きしか楽しめない、近年稀にみる闇落ち小説だとは思いませんか?

最後に

という訳で、おすすめしたくない恋愛小説『リケコイ。』は以上となります。

展開はどうしようもないし、大学生たちの会話も低俗としか言いようがないのですが、最後の最後に<物語の語り手>が誰なのか?という謎が判明する場面があります。

この小説のタイトルである『リケコイ。』が、森の事だけではなく、<物語の語り手>の奥手さの事も表現しているのであれば、少しだけ楽しめるかもしれません。

でも、もうちょい面白い話に出来たよな、絶対。