パイオニアVS奇行種の新人【新しい常識はどのようにして生まれるのか?】

常識は新しく誕生する

礼儀や常識はもっと『個々の単位』で発揮するべきなのかもしれない。

社会的な常識・非常識なんていうものは時代と共に変化する。

メールで新年の挨拶をするなんて非常識だと言われていた時代から数年が経ち、謹賀メールに近況写真を添付し取引相手に送るような時代に変わっている。

初めてメールで新年の挨拶をした人はきっと周りから「そんな非常識な事をするなんて、あいつは礼儀がなってない」と、さんざん言葉を浴びせられただろうが、今となってはそれも常識。

むしろ年賀状を数百枚出す為の手間とはがきの節約が出来て、自然にも優しくスピーディと、非常に便利になっている。

それは今ある『社会的な常識』に囚われず、『個々の単位の常識』を発揮したが故に、『新しい社会的な常識』が生まれたということだ。

今までの常識に捕らわれず、己の信じる方向へ進み背後に道を作っていく彼らは、先駆者つまり『パイオニア』と呼ばれている。

ある程度社会に慣れて染まってしまった人間は「常識」という檻の中に気づかずに入ってしまうため、ある意味では新入社員のように新しい仕事にチャレンジしようとする人の方がパイオニアになり得るのではないかと思う。

僕もパイオニア

かくいう僕もパイオニアと呼ばれる人間の端くれだ。話は25年前にさかのぼりまくる。

僕等が小学生の頃、ドラゴンボールが物凄い人気だった。昼休みはみんな悟空やベジータのモノマネをし、かめはめ波をやたら溜めて打ったり、大猿に変身し技を放っていた。大抵その技をくらっているのはクラスでも若干立場が弱いスクールカースト最下層の文科系男子だったりする。

実際、小学6年生の時点で禁煙パイポを咥えていた不良の秋山くんは、税理士を目指していたメガネの斉藤くんに対して「お前は今日からサイバイマンだ!」などと、鬼畜生のような命令をしながら、斉藤くんにチョップを連発していた。

斉藤くんに、サイバイマン。

明かに『サイ』だけしかかかってなくスベリまくっているのに、スクールカーストの上位の人間に決定されてしまったら最後で、斎藤くんは『サイバイ君』なるアダ名をつけられていた。

ただ、そのあだ名が少しづつ変化し、最終的にサイバー君とか呼ばれてて、なんだか逆にスゲー格好良いアダ名に変わったりする奇跡も起きた。

話はそれたが、誰もがドラゴンボールに夢中になっていた頃、僕は女性のおっぱいに夢中になっていたとにかく女性のおっぱいを見ること。ふくらみを凝視することに情熱のすべてを注いで夢中になっていた。

坂本竜馬の見つめる先が海の向こうの大国にあったように、あの当時、僕の見据える世界の先には常におっぱいがあった。

まわりはドラゴンボールばかりという茨の道の中、ただ一人黙々とおっぱいを見つめていた鬼。まさに、幼少期におけるおっぱいのパイオニアといえる存在だと自負している。

パイオニアVS新人

先日、そんなパイオニアが対決する出来事があった。相手は去年入ってきた新人の男の後輩だ。

その日は会社の飲み会があり、その後輩が僕の目の前に座った。

その後輩は身長187cmの巨人で通称『ジャイアント古山』といい、入社3ヶ月目に行った社員旅行の宴会で酔っ払って進撃してフスマを蹴り破り、宴会場を狂気と混乱の渦に陥れたウチの会社の期待の奇行種だ。彼の場合は奇行種と書いてパイオニアと読む

そんな古山くん、つい先日彼女と同棲し始めたらしく、その飲み会の席でも饒舌に女性の話をしていたが、

「女っていいもんなんですよね。いやぁ女っていいもんなんですよ」

といった、糖質と中身が70%カットされたようなスカスカの持論を展開し、

「俺の彼女は巨乳でグラビアアイドルみたいな体型をしているんすよ」

といった、1mmたりとも彼がすごい訳ではないことを自慢していた。グラビアアイドルにだってデブはいる

その飲み会は未婚で彼氏彼女なしの社員が多かったので、恋愛系話はなんとなく避けていたのに彼はガンガン攻めている。場の空気を読まないパイオニアとして堂々と君臨する彼。

生意気な彼にキれそうになりつつも、切れてるのはケツの穴だけの僕はあくまでもクールに。

「じゃあ判定してあげるから、おっぱいのパイオニアである僕に彼女の自慢のおっぱいの写真を見せてごらん」

と申し出てみた。そのまま「え~いやっすよ~勘弁してくださいよ~」みたいな後輩オーラを出してきたら、そのままこちらのペースにして話題を変えようと企んでみたのだ。

それに、もしかしたら後輩の彼女のおっぱいを拝み倒すのが常識になる時代がやってくるかもしれない。だからその新たな文化のパイオニアとして、僕が道を切り開かなくてどうする。安心しておっぱいの写真を僕に。もっと光を!

と、僕は僕でスカスカの持論を展開しつつ、ニヤニヤと気持ち悪く微笑んでいたら古山くんに、

「つーか。ヌキ之介さんって『パイオニア』じゃなくて、ただの『ぱいマニア』じゃないすか?」

という笑点の山田君もビックリの粋でいなせな返答をされ、なんだかその場が盛り上がってしまい、恋愛話もそっちのけで僕には「ぱいマニアさん」などという不名誉なあだ名をつけられることとなってしまった。

挙句の果てに最後の方には「ぱニアさん」まで省略され、僕は新人との勝負に完敗することとなったのだ。ぱニアさん・・・

パイオニアとは

結局、新しい道を切り開く人間は、ただ他の人と違ったことをしているわけではないのだろう。彼のように一見その場にそぐわないような行動をしているように見えて、実は適切なタイミングに適切な行動・言葉を発信することが出来た人間が『パイオニア』として成功していくのかもしれない。

単純にグラビアアイドルみたいな体型をしている後輩の彼女のおっぱいを見ようと奮闘したところで僕の後ろに道は出来ない。パイオニアにはなれないという事だ。

そして・・・

僕は今、不名誉な「ぱニアさん」というあだ名を、なんとかして「サイバー君」くらいの格好よさまで進化させようと社内で一人奮闘中だ。