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フォレストラバー

気になることや好きなことを淡々と

この青春小説を読んどけ【26作品】

2017年4月10日更新

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はじめに

 

"素晴らしい青春小説""初恋"に似ている。

 

物語に感情移入し輝かしい時間を共に過ごすことで得られるトキメキはもちろんだが、読み終わった時に味わう喪失感が初恋に破れたときの感覚に近いからではないかと思う。

 

その失恋に似た喪失感への対応策は心が日常に戻るのを待つか、その喪失感を埋めてくれる新しい作品に出逢うしかない。失恋を癒すために時の流れと新しい恋という薬が必要なのと同じだ。

 

この記事はそんな青春小説が最高すぎて喪失感を味わったことがある人へ

『別の最高の青春小説をオススメすること』

を目的とした記事だ。

 

 

ルールとして

  • 実際に読んで面白かった作品をまとめとして紹介
  • 2016年の段階で読んだことがある本をランキングではなく順番はランダムで紹介するので、これから増えて更新していく事もある
  • 読んだ時に最大に楽しめるように基本的に重大なネタバレなし
  • 現在個別ページがない作品もいずれ個別ページを作成し、映画、ドラマ、漫画、アニメなど、他の媒体になっているなどの詳細情報はそちらに
  • 基本的には良い部分をフォーカスする。気になった点は個別ページに書く
  • 評価風の★を5段階で付けているが、完全な主観なので軽い参考程度にしてもらえたらと思う
  • ダラダラと長い記事なので目次を活用してもらえるとありがたい

 

素晴らしい本と出会うために微力ながら役に立てればと思う。

 

 

階段途中のビッグ・ノイズ #越谷オサム

あらすじ

軽音楽部の廃部を取り消せ!優柔不断が玉にキズの神山啓人は、猪突猛進型幽霊部員の九十九伸太郎に引きずられて行動を開始する。目指すは文化祭での一発ドカン!!のはずが…。周囲の冷たい視線、不協和音ばかりの仲間達、頼りにならない顧問。そこに太ももが眩しい同級生への恋心も加わって―。啓人達は見事にロックンロールできるのか。(引用:amazon)

感想

『陽だまりの彼女』『いとみち』で有名な越谷オサムが軽音楽部を舞台に閉塞感を突き破る最高の青春を描いた作品。作品の特徴を伝えるなら”疾走感”という言葉がピッタリ。前半は部活の復活も部員内の人間関係も上手くいかないことだらけ。さらに主人公たちが追いやられて練習している”部段”の閉塞感が、自分たちの上手くいかない現状のメタファーとして描かれており、中盤で屋上の扉の解放と共にその鬱々とした気持ちが空へ突き抜けていくので気持ちいい。その突き抜けるシーンは読みながらさわやかな風を感じるほどだ。そこから啓人、伸太郎、勇作、徹の4人の仲間が周囲の冷たい視線を跳ね除けて駆け抜けていく様も痛快。泣きながら笑顔になれる最高の”疾走感”を味わえる。文章はやたらとポップなのに内容が浮ついてみえない所が越谷オサムの凄さかもしれない。本当に一度読んでほしい。

熱さ  :★★★★
爽やかさ:★★★★★
余韻  :★★★

 

 

DIVE!!(上下) #森絵都 

あらすじ

オリンピック出場をかけて、少年たちの熱く長い闘いがはじまる! 2008年6月全国公開映画『DIVE!!』原作本。高さ10メートルから時速60キロで飛び込み、技の正確さと美しさを競うダイビング。赤字経営のクラブ存続の条件はなんとオリンピック出場だった!少年たちの長く熱い夏が始まる。第52回小学館児童出版文化賞受賞作。(引用:amazon)

感想

「とびこみ」という僅か1.4秒の演技に青春の全てを注ぐ少年たちの物語。とにかく素晴らしい傑作なので何も考えずにとにかく読んでほしい笑。不安定ながら芯の通った彼らの競技への想いがやわらかく描かれており、読んでいて心地よさを与えてくれ、才能、努力、選手本来の力、時の運、勝負の非情さなど多くのものが入り乱れた中での大会では、お互いを意識した彼らの真剣な戦いに魅せられる。しかし、友人としての関係性をもった彼らにも魅力があり、双方の合わさり方が絶妙に心を打つのでずっと彼らと共に歩んでいきたくなる作品だ。僕はまったく「とびこみ」に興味がなかったのにも拘らず、これだけ感情移入してしまうのはひとえに作者である森絵都の筆力の凄さの為と言わざるを得ない。こんなに胸が熱くなる作品に出会えて感謝。

熱さ  :★★★★★
爽やかさ:★★★★★
余韻  :★★★★★

 

 

一瞬の風になれ(全3巻) #佐藤多佳子 

あらすじ

主人公である新二の周りには、2人の天才がいる。サッカー選手の兄・健一と、短距離走者の親友・連だ。新二は兄への複雑な想いからサッカーを諦めるが、連の美しい走りに導かれ、スプリンターの道を歩むことになる。夢は、ひとつ。どこまでも速くなること。信じ合える仲間、強力なライバル、気になる異性。神奈川県の高校陸上部を舞台に、新二の新たな挑戦が始まった――。(引用:amazon)

感想

この作品は、第一部-イチニツイテ-、第二部-ヨウイ-、第三部-ドン-、という三部に分かれている作品になっていて、第一部では主人公の置かれている環境と性格、陸上競技の説明などのバックボーンを中心に描かれているので人によっては話があまり進んでないように思うかもしれない。しかしそれが理由で第一部で読むことをやめた人がいたら心の底からかわいそう。なぜならこの作品は後半に向けて最高に盛り上がる陸上青春小説となっているからだ。主人公の新二は周囲に才能がある人たちに囲まれながら焦る気持ちを抑え、力を貯えつつ練習を重ね結果につながるまでの過程は、もはや言葉にできない感動がある。また、走りの描写も素晴らしく、本当に風を感じているかのように爽やかな気分で読んでいけるので、単純に素晴らしい青春小説とだけ言っては勿体ないくらいの名作。結果を追求する陸上競技の中で、努力の過程と結果の後の行動の中にこそ、学生年代の競技者たちにとって本当に価値のあるものがあるのではないかと教えてくれた本だ。僕はこの本と出逢えた運命に感謝をしている。
熱さ  :★★★★★
爽やかさ:★★★★★
余韻  :★★★★★

 

 

疾風ガール #誉田哲也

あらすじ

柏木夏美19歳。ロックバンド「ペルソナ・パラノイア」のギタリスト。男の目を釘付けにするルックスと天才的なギターの腕前の持ち主。いよいよメジャーデビューもという矢先、敬愛するボーカルの城戸薫が自殺してしまう。体には不審な傷。しかも、彼の名前は偽名だった。夏美は、薫の真実の貌を探す旅へと走り出す――。ロック&ガーリーな青春小説の新たな傑作!(引用:amazon)

感想

音楽活動をベースにした少女の成長を描く青春小説。疾風ガールという名に恥じない疾走感と熱量が文字から感じられ、ティーン特有の甘苦さのような雰囲気が感じられる。誉田作品で見られる二人の視点(主人公の夏美とスカウトマンの祐司)から語られる物語なのでそれぞれの思惑がすれ違ったりする場面は面白いが、実は夏美の性格に賛否ありと云われる作品でもある。自由奔放な夏美が好きになれればこの作品も好きになれると思うが、僕のように少し安っぽい自由の主張に感じてしまう人もいる。しかし、この作品を読んだあと夏美が苦手だからという理由で続編の『ガール・ミーツ・ガール』を読まないのは勿体ない。理由は次に説明させてもらう。

熱さ  :★★★
爽やかさ:★★★
余韻  :★★

 

 

ガール・ミーツ・ガール #誉田哲也 

あらすじ

柏木夏美は、デビュー間近の事務所期待のミュージシャン。けれども、ビジネスモードな大人たちとは噛み合わないことばかり。マネージャーの宮原祐司も、気分屋で頑固な夏美に振り回されっぱなしだ。そんなとき、二世タレントのお嬢様アーティストとのコラボレーションの話が舞い込む。性格も音楽性も天と地ほど違う異色コンビの命運は? 痛快で熱い青春小説。(引用:amazon)

感想

『疾風ガール』の続編。痛快で熱いロック少女の出会いを描いた青春小説。前作を読んでなくても充分楽しめる構成だが是非2作を前後編のつもりで合わせて読んで欲しい。というのも『疾風ガール』は夏美の好き嫌いで評価が分かれるかもしれないがこの作品は2冊セットで、夏美の成長物語として楽しむものだと思う。新キャラであるルイと夏美が接していく過程での距離感が心地よく、脇を固める登場人物も暖かく見守っているようで微笑ましい。このテイストで進んでいくなら世界進出までついていきたくなってしまうが、おそらく完結という扱いなのかもしれない。ちなみに夏美は椎名林檎をイメージしたキャラ設定だと僕は勝手に思っている。

熱さ  :★★★
爽やかさ:★★★★★
余韻  :★★★

 

 

龍時(全3巻) #野沢尚 

あらすじ

2001年初夏、日韓A代表戦の前座として国立競技場で、スペインU‐17との親善試合が組まれた。監督の抜擢で急遽試合に呼ばれた無名の高校生、志野リュウジは後半アグレッシブなゴールを決めるが、敗退。世界との壁に愕然とする。「ここ(日本)にいたんじゃ駄目だ」。試合後、練習にも身の入らなかったリュウジのもとに、スペインのユース育成担当からの連絡が入る…。家族との葛藤、友情、淡き恋、そして国籍問題、悩み多き16歳のサッカー少年の成長を描くシリーズ第1弾。(引用:amazon)

感想

爽やかな青春ではなく、自らの命を燃やしながら闘い続ける青春も認められるべきだと感じさせられる作品。それでいて一級品の本格サッカー小説。主人公リュウジの乾いたサッカーへの渇望が読んでいて痛々しくも輝いている。日本に自分の居場所がないと感じたり、サッカー選手としての活躍できる20年が己の寿命と捉えるリュウジの考え方は精神的な若さにも感じられるが、リュウジのような絶滅危惧種タイプのサッカー選手だからこそ、その儚さが精神的な未熟さと相まって美しく感じられるのかもしれない。試合描写の臨場感、リアリティー共に素晴らしく、サッカーのプレー経験がある人ならば目に浮かぶほどの描写になっている。続編の『龍時 02-03』はスペインリーグでの飛躍を、『龍時 03-04』では日本代表としてオリンピックでの活躍が描かれておりどちらも素晴らしい傑作だ。作者の野沢さんはすでに他界しており、命をこぼしながらリュウジを書いていたように感じられ勝手に感情移入してしまう。

熱さ  :★★★★★
爽やかさ:★★
余韻  :★★★

 

 

退出ゲーム(ハルチカシリーズ) #初野晴 

あらすじ

 「わたしはこんな三角関係をぜったいに認めない」―穂村チカ、廃部寸前の弱小吹奏楽部のフルート奏者。上条ハルタ、チカの幼なじみのホルン奏者。音楽教師・草壁先生の指導のもと、吹奏楽の“甲子園”普門館を夢見る2人に、難題がふりかかる。化学部から盗まれた劇薬の行方、六面全部が白いルービックキューブの謎、演劇部との即興劇対決…。2人の推理が冴える、青春ミステリの決定版、“ハルチカ”シリーズ第1弾。(引用:amazon)

感想

吹奏楽部の日常の謎を主人公のチカとハルタが解決することで弱小吹奏楽部の部員が増え、吹奏楽部の甲子園である普門館を目指すという作品。主人公のハルタ(♂)とチカ(♀)は吹奏楽部の顧問であるクサカベ先生(♂)に恋をしているが、この設定は特に不要だと思えるほど物語の出来が良い。謎・吹奏楽・青春と楽しめる要素は十分にそろっており、1,2作目は謎がメインなのに3作目あたりから青春小説としての流れが強くなるので良い意味で推理が邪魔に感じるパラドックスを感じる。読みやすい文章なのに中身が意外と重かったりするので、アニメを見て軽い気持ちだけで読もうとすると少し心にダメージを負うので注意が必要だ。それだけ感情移入できる作品ともいえるが。ちなみに平成28年4月の時点で『初恋ソムリエ』『空想オルガン』『千年ジュリエット』『惑星カロン』という続編が出ている。

熱さ  :★★
爽やかさ:★★★★
余韻  :★ ★

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チア男子!! #朝井リョウ 

あらすじ

柔道の道場主の長男・晴希は大学1年生。姉や幼馴染の一馬と共に、幼い頃から柔道に打ち込んできた。しかし、無敗の姉と比べて自分の限界を察していた晴希は、怪我をきっかけに柔道部を退部。同じころ、一馬もまた柔道をやめる。一馬はある理由から、大学チアリーディング界初の男子のみのチーム結成を決意したのだ。それぞれに事情を抱える超個性的なメンバーが集まり、チームは学園祭での初舞台、さらには全国選手権を目指すが…。(引用:amazon)

感想

 『何者』で直木賞を受賞したエゴサーチ大好きな朝井リョウが描く男子チアリーディングの青春小説。早稲田大学チアリーディングチーム「SHOCKERS(ショッカーズ)」に朝井リョウ自ら取材して書いたそうだが、題材も面白く主人公の生い立ちや周りの人間関係もとても良い。個人的に朝井リョウは劣等感・優越感など、人間の心の序列を描くのが好きな作家さんだと思っているので、広がった登場人物たちの背景をもう少し厚みを持って書いてくれたらより一層楽しめただろうと思うと少し残念だが、それだけ物語にのめり込ませてもらったという事なのだと思う。少し演技描写が説明的で伝わりにくかった部分があったので、逆にとてもアニメやドラマ等の映像化に向いている作品なのではないかと思う。あと、シリアスな雰囲気でぶちこんだ「なかまゆきえ」にはつい笑ってしまった。

熱さ  :★★★
爽やかさ:★★★★
余韻  :★★ 

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キケン #有川浩 

あらすじ

ごく一般的な工科大学である成南電気工科大学のサークル「機械制御研究部」、略称【キケン】。部長・上野、副部長・大神の二人に率いられたこの集団は、日々繰り広げられる、人間の所行とは思えない事件、犯罪スレスレの実験や破壊的行為から、キケン=危険として周囲から忌み畏れられていた。これは、理系男子たちの爆発的熱量と共に駆け抜けた、その黄金時代を描く青春物語である。(引用:amazon)

感想

 『図書館戦争』『植物図鑑』など読みやすいベタ甘恋愛小説に定評がある自衛隊好き有川浩が青春小説を書くとこうなるのか。なるほど、と納得してしまう作品。軽いタッチで「機械制御研究部」通称:キケンの日常を描いていており理系男子達に混じってドタバタと一緒に騒げる雰囲気が良い。が、実はポイントはそこだけではなく、章間に”大人になった誰か”の話が描かれており、キラキラした時代と今の現実が微妙に対比で描かれているところだ。つまり青春時代を切り取った小説であるのと同時に、昔を懐かしむ小説としても読めるので10代が読んでも30代が読んでも満足できる話になっていると思う。少しだけネタばれしてしまうが、最後の章、黒板のページで思わず胸にこみ上げるものがある。このページだけで余韻に★が一つ追加された笑。ポップな装丁に負けずに大人にこそ読んで欲しい作品だ。有川作品の中では変に説教がましくない所も個人的には好きだったりする。

熱さ  :★★
爽やかさ:★★★
余韻  :★★★★★

 

69 sixty nine #村上龍 

あらすじ

1969年。安田講堂事件が起き、東大は入試中止。アポロが月に行き、ビートルズが「アビーロード」を、ローリング・ストーンズは「ホンキー・トンク・ウイメン」をリリースした。ベトナム反戦運動が高まり、基地の町・佐世保で、僕は高校をバリケード封鎖した―。明るく楽しく生きる青春のエネルギーに満ちた日々を描いた永遠の古典。(引用:amazon)

感想

1969年、高校三年生のケンは、同級生レディ・ジェーンこと松井和子の気を惹くため、友人のアダマらと共に高校のバリケード封鎖やフェスティバルの開催を進める。村上龍作品で初めて読んだ作品。村上龍作品がハードル高いと思っている人には一番初めに読んでもらいたい本だ。若く未熟でハッタリまみれだけど、理想のイメージを持ち『楽しむ』という事を強く渇望した17歳の日々。1969年で『69』だが、下ネタ的69を連想させるのもおそらく狙っている。村上龍本人の体験をベースに書かれた作品であることは有名だが、実体験に基づいたとは思えないほどに最高にエネルギッシュな傑作だった。当時の時代背景に知識が薄くても楽しめたので当時を知る人達はさらに楽しめたことだろう。名場面が多く、校長室のウンコのシーンは最高だし、親父がケンに言った台詞も最高だった。勝手な妄想だが村上龍は登場人物のアダマに「こんな味のコーヒー」を飲ませたことを謝る為にこの小説を書いたような気がしている。最後に気に入った台詞をひとつ。「17歳で童貞という事は、別に誇るべきことでも恥ずべきことでもないが、重要なことである」

熱さ  :★★★
爽やかさ:★★★
余韻  :★★★★★

 

 

屋上ミサイル(上下) #山下貴光 

あらすじ

アメリカ大統領を人質に取ったテロリストが、いつ日本に核ミサイルを打ってくるかわからない情況下、深刻なニュースが次々と報道されても、「屋上部」の面々には、もっと大事なことがあった。それは、屋上の平和を守ること。そんなある日、国重と沢木が屋上に持ち込んだのは、死体写真と一丁の拳銃。不穏な拾い物は屋上部の面々を、難事件に巻き込んでいく。それぞれの事件は、やがてひとつの大きな事件に繋がって……。(引用:amazon)

感想

賛否ある作品。伊坂幸太郎を目指して辿り着けなかった小説と良く揶揄されている。辻尾アカネ、国重嘉人、沢木淳之介、平原啓太の四人の微妙に冷めた関係性から徐々に仲間意識を持っていく様子は爽やかで楽しめるし「屋上部」という響きも良い。が、後半は顕著に都合主義的なストーリーへと変わっていくので、人によっては醒めてしまう気持ちも良くわかる。それは、どんな話でも作者と読者の”都合”で成り立っているが、この作品はその”都合”が見え見えに感じられるからだと思っている。しかしながら、その見え見えな”都合”をエンターテイメントとして楽しむように捉えて読むと、与えられた謎のピースがクモの巣のように広がり繋がる様に心地よさを覚えるはずだ。チャンスがあれば読んでみてもいい作品。ちなみに続編にあたる『屋上ミサイル~謎のメッセージ~』という本もあるがこちらは別に読まなくても良い。

熱さ  :★★
爽やかさ:★★★
余韻  :★

 

 

 

武士道シックスティーン(全4巻) #誉田哲也 

あらすじ

武蔵を心の師とする剣道エリートの香織は、中学最後の大会で、無名選手の早苗に負けてしまう。敗北の悔しさを片時も忘れられない香織と、勝利にこだわらず「お気楽不動心」の早苗。相反する二人が、同じ高校に進学し、剣道部で再会を果たすが…。青春を剣道にかける女子二人の傑作エンターテインメント。(引用:amazon) 

感想

誉田哲也的な少女主人公の青春武士道?物語。お気楽な西荻早苗と激情の磯山香織が出会いお互いに影響を受けていくのだが、ユルユルっと過ごしている早苗とギラついている香織のそれぞれの内面描写があまりにも違うので読んでいてニヤニヤしてしまう面白さがある。精神面で成長していく様も描かれるため、周囲の人達と接し己の剣道と向き合った香織に徐々に変化が見られる後半は微笑ましく読める。また、この作品に出てくる登場人物は筋の通った優しい人が多いので、ノンストレスで読める所も魅力的だ。少女同士の爽やかな友情ものは読んでいて幸せな気持ちになる。ちなみに主人公の一人香織は宮本武蔵の五輪書と鉄アレイ持って一人で過ごすヤバイ女子高生だが、中二病の延長だと思えば少し可愛い。『武士道セブンティーン』『武士道エイティーン』『武士道ジェネレーション』の4作で現在完結している。

熱さ  :★★★★★
爽やかさ:★★★★★
余韻  :★★★

 

 

ラン #森絵都 

あらすじ

9年前、家族を事故で失った環は、大学を中退し孤独な日々を送っていた。ある日、仲良くなった紺野さんからもらった自転車に導かれ、異世界に紛れ込んでしまう。そこには亡くなったはずの一家が暮らしていた。やがて事情により自転車を手放すことになった環は、家族に会いたい一心で“あちらの世界”までの道のりを自らの足で走り抜く決意をするが…。哀しみを乗り越え懸命に生きる姿を丁寧に描いた、感涙の青春ストーリー。(引用:amazon)

感想

『カラフル』『アーモンド入りのチョコレートのワルツ』などで有名な森絵都さんの優しく励まされる作品。森絵都作品は読みやすく、優しく、元気になれるものが多く、言葉の選択も柔らかく心に響くものが多いので良い。一つのことに集中した燃えるような青春ではなく、悲しみからゆっくりと立ち上がる”再生”という言葉が良く似合う青春作品。物語には”死後の世界”が登場するのだが、森さんらしい少しゆるめの描写で描かれている為、微笑ましくも切なくそれでいて心から応援したくなる不思議な感情にみまわれる。作中で登場する叔母さん素敵すぎるので是非注目して読んで欲しい。自分の人生に迷いを感じた時に読めば、なんとなく前を向け、なんとなく力が湧いてくるはず。

熱さ  :★★
爽やかさ:★★★★
余韻  :★★★★★

 

 

カクレカラクリ #森博嗣 

あらすじ

同級生の真知花梨とともに鈴鳴村を訪れた郡司朋成と栗城洋輔。彼らを待ち受けていたのは村に伝わる奇妙な伝説だった。天才絡繰り師・礒貝機九朗は、120年後に作動する謎の絡繰りを密かに作り、村のどこかに隠した。言い伝えが本当ならば、120年めに当たる今年、それが動きだすという……。(引用:amazon)

感想

森博嗣らしい理系の青春小説。サラリと読めて読後感も良い作品。熱い物語こそ青春だと思っている人にとってこの作品は青春小説とは云わないのかも知れないが、僕は胸を張って青春小説だと言いたい。熱い青春には見えないかもしれないが、主人公たちは信念を持って自分たちの好きなことに夢中で、その好きなことにワクワクして、没頭していく様は間違いなく青春の1ページだといえる。大きな事件があり逆境をのり越える展開でないが、ちょっとの冒険と恋、あとコーラとロマンがある雰囲気が僕は結構気に入っている。明治時代に作られた絡繰りが120年後に動き出すという現実への論理的アプローチがとても森作品らしいので、S&Mシリーズ、四季シリーズが好きな方にも軽いタッチで勧めたい。 

熱さ  :★
爽やかさ:★★★★
余韻  :★★★★

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ボックス!(上下) #百田尚樹 

あらすじ

天才的なボクシングセンス、だけどお調子者の鏑矢義平と、勉強は得意、だけど運動は苦手な木樽優紀。真逆な性格の幼なじみ二人が恵美寿高校ボクシング部に入部した。一年生ながら圧倒的な強さで勝ち続ける鏑矢の目標は「高校3年間で八冠を獲ること」。だが彼の前に高校ボクシング界最強の男、稲村が現れる。稲村に勝つため、階級転向を希望する鏑矢。しかし監督はそれを認めない。一方、優紀は「いつかカブちゃんと戦いたい」その一心でデビュー戦に向けた練習を重ねていた。選抜予選大会3日目、ついに鏑矢と稲村の対戦が始まる。そして幼なじみ二人がグローブを重ねる瞬間がやってくる。圧倒的青春小説決定版。(引用:amazon)

感想

 『海賊と呼ばれた男』で本屋大賞を受賞した「人間のクズ」発言で有名(笑)な百田尚樹のアマチュアボクシングを媒体にした青春小説。主人公の鏑矢と木樽の友情がとても素晴らしく、調子のりで喧嘩っぱやい鏑木が木樽にだけ見せる友人としての顔には微笑ましいものがある。努力の木樽が徐々に力を付けていく様は王道中の王道だが、だからこそ心から熱くなれる展開。そして天才の鏑矢が見せる友情と男気がさらに物語を熱くする。個人的には2人がライバル関係になっても、嫉妬や劣等感ではなく友情で結ばれ続ける所がこの物語の一番魅力的な部分だと思う。一応、2人の成長を見守る英語教師の耀子がヒロイン的な立場になるのだが、たまに女性的な部分が出てて百田尚樹の理想と妄想を感じる笑。展開が松本大洋『ピンポン』に似ているので、同作が好きだった方には特におすすめしたい。読後感も人生の哀愁があって悪くない。

熱さ  :★★★★★
爽やかさ:★★★
余韻  :★★★★

 

 

世界でいちばん長い写真 #誉田哲也 

あらすじ

内藤宏伸は中学三年生。去年まで大の仲良しだった洋輔が転校したことで、すっかり塞ぎ込んでいた。やりたいことも、話したい相手もみつからず、すべてがつまらない。写真部にはいちおう籍をおいているけれど、同級生で部長の三好奈々恵に厳しく作品提出を迫られ、けれど、撮りたいものもみつからない。そんなある日、宏伸は、祖父の経営する古道具屋で、一台の奇妙なカメラを見つける。それは、台座が一回転して、三六〇度すべてを一枚の長い写真に納められるという風変わりなものだった。カメラとの出会いをきっかけに、宏伸は「世界で一番長い写真」を撮りたいという思いを抱き始める。でも、それだけの長さ、撮りたいと思える被写体って、なんだろう?!(引用:amazon)

感想

誉田哲也はエグイ話も上手いが青春小説も素晴らしいので何冊もオススメしてしまう。この作品も例に漏れず魅力的な作品。自分に自信が持てない内気な主人公・宏伸が、360度を1枚の写真に撮れる特殊なカメラとの出会いで少しずつ変わっていく話。この作品が魅力的に思えるのは主人公の宏伸の変化が魅力的だからだと思う。宏伸が自分自身がポジティブに変化していることに気が付いていないが、読者目線では周囲の人間との会話やリアクションで間接的に感じとれるところが、思春期における男子中学生の変化の表現としてハマって見えるのだ。本当に素晴らしい表現方法だと思う。心の底から夢中になれる何かに出会った時、人は成長して変化していくものだと教えてくれる本だ。

熱さ  :★★
爽やかさ:★★★★★
余韻  :★★

 

 

砂漠 #伊坂幸太郎 

あらすじ

入学した大学で出会った5人の男女。ボウリング、合コン、麻雀、通り魔犯との遭遇、捨てられた犬の救出、超能力対決……。共に経験した出来事や事件が、互いの絆を深め、それぞれを成長させてゆく。自らの未熟さに悩み、過剰さを持て余し、それでも何かを求めて手探りで先へ進もうとする青春時代。二度とない季節の光と闇をパンクロックのビートにのせて描く、爽快感溢れる長編小説。(引用:amazon)

感想

名言工場長の伊坂幸太郎節全開の大学生活青春物語。大学で新しく作られた男女の友達グループを経験したことがある人は何となく自分を重ねてしまいそう。しかしそんな日常的な話のようで結構ショッキングな展開もあり、その中で西嶋という男が自分の信じたことを空気も読まずに突き通す。砂漠のように厳しい世の中に雪を降らせる西嶋と過ごす大学生活はどのようなものになるのか、是非とも西嶋の発する台詞と共に楽しんでもらいたい作品だ。あと、この小説は主人公・北村の言葉で語られる一人称なので、北村にとって言いにくいことは、すっとばしたりしている所についニヤリとしてしまう。最後に気に入った台詞「人間にとって最大の贅沢とは、人間関係における贅沢のことである」おれ、こういうの好きだよ。

熱さ  :★★★
爽やかさ:★★★★
余韻  :★★★★★

 

 

レヴォリューションNo.3(シリーズ) #金城一紀

あらすじ

「君たち、世界を変えてみたくはないか?」オチコボレ男子高に通い、死んだような毎日を送っていた「僕たち」は生物教師ドクター・モローの言葉で突如生き返り、世界を変えるために行動を開始する。その方法は―難攻不落のお嬢様女子高の学園祭に潜入してナンパをすること!果たして「僕たち」の潜入作戦は成功するのだろうか!?革命的おバカストーリーが炸裂する、ザ・ゾンビーズ・シリーズ第1弾。(引用:amazon)

感想 

『GO』で有名な金城一紀の作品。オチコボレの男子高のグループ「ザ・ゾンビーズ」が出てくる一作目。落ちこぼれで、バカで、暴力的だけど、それでも彼らには彼らの世界があり、その世界は正常に機能していく。主人公たちが味わう世の中の理不尽さが話の主軸になりつつも、生きている事の楽しさを描ける心が素晴らしく、世界は自分の中から変えられることを教えてくれる。ちなみに語り部の視点は変わるが、同じ主人公たちが登場する『フライダディフライ』『SPEED』『レヴォリューションNo.0』も最高の作品たちだ。特に『フライダディフライ』は30代40代の人が読むときっと何かを始めたくなる、力の湧いてくる作品になっている。ギョウザ大好き!

熱さ  :★★★★★
爽やかさ:★★★★★
余韻  :★★★

 

 

風が強く吹いている #三浦しをん 

あらすじ

故障でトップランナーへの道を諦めたハイジと、走る場所を奪われたカケル。天才的な走り才能をもった2人の若者が出会いこの物語は始まる。ハイジは秘かに同じ寮で共同生活を送る8人のメンバーと箱根駅伝出場を目指そうと画策していた。ところが彼らはほとんど陸上未経験。ヘビースモーカーや漫画オタク、長距離経験のないアフリカから来た留学生など、およそ現実的ではない夢なのだが、ハイジの熱意や信頼がカケルを含めた仲間たちの意識を変えていく。やがて、ハイジの故障の理由とカケルの事件の真相が語られ、仲間と一丸となってトレーニングに打ち込んでいくのだが。果たして、彼らは箱根駅伝を走ることが出来るのか?魂が揺さぶられる熱い青春小説の傑作。

感想

『船を編む』『まほろ駅前多田便利軒』などで有名な三浦しをんさんの王道中の王道にして名作中の名作スポーツ青春作品。読むたびに箱根駅伝が見たくて堪らなくなる。ほぼ長距離未経験のメンバーで箱根駅伝を目指す物語で、登場人物たちが緩い同居人の関係から努力を重ねることで強いチームへ変わっていく様子は全てを超越して応援してしまう。大会の時のそれぞれの選手の疾走感、集中しゾーンに入った主人公・カケルの感じている世界など、おそらく三浦しをんでしか書けないリアリティになっている。この本が好きな人は佐藤多佳子さんの『一瞬の風になれ』がオススメだ。絶対に気に入ることを保証する。

熱さ  :★★★★★
爽やかさ:★★★★★
余韻  :★★★★★

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横道世之介 #吉田修一 

あらすじ

大学進学のため長崎から上京した横道世之介18歳。愛すべき押しの弱さと隠された芯の強さで、様々な出会いと笑いを引き寄せる。友の結婚に出産、学園祭のサンバ行進、お嬢様との恋愛、カメラとの出会い…。誰の人生にも温かな光を灯す、青春小説の金字塔。第7回本屋大賞第3位に選ばれた、柴田錬三郎賞受賞作。(引用:amazon)

感想

『パレード』『悪人』などで有名な吉田修一の青春小説。上京してきた主人公・横道世之介が過ごす大学時代の物語なのだが、こんな友人が自分にもいてほしいと心から思えるほど世之介が魅力的に描かれる。文章構成として世之介が大学生の時代と、世之介以外の登場人物たちの未来の話が交互に描かれるのだが、その未来パートが妙にシリアスで刺さるような時間なのに対して、世之介が登場しているパートは緩くて包み込まれるように温かいのも心地よい。シリアスに生きすぎず、肩から少し力を抜きながら生きたいと感じさせてもらった名作。ほめ言葉として言うが、何も起きてないのにこんなに面白い文章が存在するのかと驚くとともに、意図してないすれ違いや、感性の違いというものが吉田修一の手によって描かれるとこんなに面白くなると思うと感動してしまう。吉田さんの本の中でもトップレベルに好きな作品。ずっと読んでいられる気がする。

熱さ  :★★
爽やかさ:★★★★
余韻  :★★★★★

 

 

くちびるに歌を #中田永一 

あらすじ

長崎県五島列島のある中学合唱部が物語の舞台。合唱部顧問の音楽教師・松山先生は、産休に入るため、中学時代の同級生で東京の音大に進んだ柏木に、1年間の期限付きで合唱部の指導を依頼する。それまでは、女子合唱部員しかいなかったが、美人の柏木先生に魅せられ、男子生徒が多数入部。ほどなくして練習にまじめに打ち込まない男子部員と女子部員の対立が激化する。一方で、柏木先生は、Nコン(NHK全国学校音楽コンクール)の課題曲「手紙~拝啓 十五の君へ~」にちなみ、十五年後の自分に向けて手紙を書くよう、部員たちに宿題を課していた。提出は義務づけていなかったこともあってか、彼らの書いた手紙には、誰にもいえない、等身大の秘密が綴られていた--。(引用:amazon)

感想

乙一さんの別ペンネームの中田永一作品。気弱な桑原サトルと男性嫌いの仲村ナズナの視点で語られる中学生の合唱青春物語。アンジェラ・アキさんの「手紙-拝啓、一五の君へ-」の歌詞が物語とリンクしているように生徒たちの手紙が間章に描かれている。中学生の彼らにとっては重くて辛くて人に言えないような悩みが手紙で書かれているのだが、くちびるに歌を持ち、悩みを吹き飛ばすのではなく、受け入れて強く進んでいくような印象を与えてくれる作品。起きる事件や揉め事のスケールが中学生的でリアルなのも好印象。

熱さ  :★★
爽やかさ:★★★★★
余韻  :★★★★★

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ミュージック・ブレス・ユー!! #津村記久子 

あらすじ

オケタニアザミは「音楽について考えることは、将来について考えることよりずっと大事」な高校3年生。髪は赤く染め、目にはメガネ、歯にはカラフルな矯正器。数学が苦手で追試や補講の連続、進路は何一つ決まらないぐだぐだの日常を支えるのは、パンクロックだった!超低空飛行でとにかくイケてない、でも振り返ってみればいとおしい日々。野間文芸新人賞受賞、青春小説の新たな金字塔として絶賛された名作がついに文庫化。(引用:amazon) 

感想

津村記久子さんが描く、音楽を愛して依存して崇拝している主人公・アザミのパンクでスローな青春物語。文章自体は独自のリズムがありニヤリと笑える展開で、男女の違いはあれど、村上龍さんの『69 sixty nine』に少し似たエネルギッシュな文章でスピード感を感じた。低空飛行のアザミにとって音楽は神様に近い存在として描かれるが、音楽はアザミの心のよりどころではあるものの社会的に救ってくれはしない。好きな事はあるが進むべき道がわからず物事を先延ばしにしてしまう10代のアザミの感情が非常にリアルで辛くなってしまうが、物語のラストで見える希望の光に読み手は少しだけ救われるのではないかと思う。

熱さ  :★★
爽やかさ:★★
余韻  :★★★★★ 

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トリガール! #中村航

あらすじ

ひょんなことから人力飛行機サークルに入部した大学1年生・ゆきな。エンジョイ&ラブリィな学生生活を送るはずが、いつしかパイロットとして鳥人間コンテストの出場をめざすことに。個性豊かな仲間と過ごす日々には、たった1度のフライトにつながる、かけがえのない青春が詰まっていた。年に1度の大会で、ゆきなが見る景色とは―。恋愛小説の旗手が贈る、傑作青春小説。(引用:amazon)

感想

中村航のザ・青春!といった印象の鳥人間コンテストの話。感想ではないが表紙の女の子が可愛い。全く飛ぶ事に興味がなかった主人公のゆきなが徐々に空への情熱を燃やし始めるまでの過程が描かれており、鳥人間コンテストに関わる裏方の作業も描かれているので新鮮な気持ちで楽しめる。パイロットになると決意してからの展開も楽しめるが、なんといっても大会当日の空での先輩とのやり取りは最高に面白い。実際の大会でも似たようなことがあるので、鳥人間コンテストをよく見ている人なら脳内で映像化されて思わず笑ってしまうはずだ。あと最後にオマケ漫画があり、ささやかな後日談が描かれているので是非。

熱さ  :★★
爽やかさ:★★★★★
余韻  :★★★ 

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反乱のボヤージュ #野沢尚

あらすじ

坂下薫平19歳。首都大学の学生寮で、個性溢れる面々と楽しい日々を過ごしていた。だが、寮の取り壊しをもくろむ大学側は、元刑事の舎監・名倉を送りこみ、厳しい統制を始める。時を同じくして起こった、寮内のストーカー事件や自殺未遂騒動。だが、一つ一つのトラブルを乗り越えながら結束を固めた寮生達は、遂に大学側との戦いに立ち上がる。現代の若者達の「旅立ち」を描く、伸びやかな青春小説。(引用:amazon)

感想

野沢尚が贈る大学寮をめぐる青春奮闘小説。話自体はクンペーこと坂下薫平の視点で語られる大学の寮の存続に関する話なのだが、実際は舎監としてやってきた名倉さんの背中をクンペーと共に見つめ、成長していく物語なのではないかと思う。それほどとにかく名倉さんの芯の通った大人として弦巻寮の学生たちと接している姿に感動を覚えるのだ。物騒な事件が連続する中で傍観者から当事者へと変わっていくクンペーも心情の変化も魅力的だが、負けを覚悟したあと、目を閉じていったん心を無にしてから360度見回してみろという名倉さんの言葉を実践する最後の場面は、心に理不尽な混乱を焼き付けろという仮の父親的名倉さんの人生を通した助言に思える。傑作だ。

熱さ  :★★★★
爽やかさ:★★
余韻  :★★★★★

 

 

夜のピクニック #恩田陸 

あらすじ

高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて、歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために――。学校生活の思い出や卒業後の夢など語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけは、小さな賭けに胸を焦がしていた。本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。(引用:amazon)

感想

第2回本屋大賞受賞作品。何かに懸ける燃えるような青春ではなく、本当にただ80kmを歩いて話しているだけの小説。それなのに恋、友情、葛藤、希望などの青春の多くの要素が自然な形で詰め込まれているという奇跡の様な作品になっている。友人に言えない秘密や、転校して名前だけしか登場しない親友のおまじないなど物語を彩る要素も多く、疲労感のピークで余計なものが全て落ち去りつつ語り合う、二人の主人公の姿は尊くて眩しいものに思えた。振り返った時に「ああ、あの時が自分の青春だったんだな」と思える瞬間に、読者も立ち会わせてくれる貴重な小説だと思う。是非読んでもらいたい。

熱さ  :★★
爽やかさ:★★★★
余韻  :★★★★★

 

 

島はぼくらと #辻村深月 

あらすじ

瀬戸内海に浮かぶ島、冴島。朱里、衣花、源樹、新の四人は島の唯一の同級生。フェリーで本土の高校に通う彼らは卒業と同時に島を出る。ある日、四人は冴島に「幻の脚本」を探しにきたという見知らぬ青年に声をかけられる。淡い恋と友情、大人たちの覚悟。旅立ちの日はもうすぐ。別れるときは笑顔でいよう。(引用:amazon)

感想

表紙を見ると爽やかな島の日常を描いたゆるりとした青春小説に思えるが、実は島という閉鎖空間だから起こる良し悪しだけで判断できない対人関係のささくれが詰まっている作品。全体的にテーマが見つけにくい日常が描かれているので、感情移入するまでに時間がかかるが、後半は不思議な緊張感が生まれていく。明言は避けるが最後に島から出迎える人間と、島に帰ってくる人間が「おかえりなさい」「ただいま」と叫びあうシーンが描かれており、冴島の青空と風を本当に感じることが出来るような美しいシーンになっているので味わってほしい。独特の読み応えと、本当に存在する島の日常のリアリティーに触れたような気持ちになる良作。

熱さ  :★
爽やかさ:★★★
余韻  :★★★★★

 

 

最後に

青春とは過ぎ去った思い出を美化して懐かしむときにだけ存在する幻想ともいえる。しかし、その思い出は過ぎ去っただけで失われたわけではない。過去にすがって今の自分を憐れむ必要などない。

 

むしろ振り返った時に美化して懐かしめるだけの経験をしてきた自分を誇るべきだ。

 

しかし同時に、いくつになっても自分の青春は今この瞬間だといえる人生を歩まなければならない。最高の青春小説たちは僕らにそんなことを教えてくれている気がする。

 

長くなってしまった。

読んでくれた方に心から感謝を。