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甘く楽しいだけじゃない大人の恋愛小説【15作品】思わず泣けるおすすめのラブストーリーを厳選しました!

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出会いは最悪だったけど、一緒に過ごしているうちに気が付けばアイツのことが好きになっていた!?世界で一番ありえないけどちょっぴりキュートな恋がいま走り出す!?

といった クソみたいな 素敵な恋愛が描かれている小説も存在していて良いのだが、やはり大人になると恋愛の爽やかな面だけを見せつけられても心が揺さぶられなくなっていく。

 

身を溶かすような甘さも、身を焦がすような苦さも、それぞれを飲み込んで初めて恋愛というものの本当の味を知ることになる事実にもう気づいてしまったからだ。

 

そんなわけで今回は、大人が読んで楽しめるような、楽しさだけではなく悲しみも痛みも驚きさえも感じる本当の恋愛小説をおすすめしたいと思う。

 

 

 

 

ルールとして

  • 実際に読んで面白かった作品をまとめとして紹介(ランキングではなく順番はランダム)
  • 現在個別ページがない作品もいずれ個別ページを作成し、映画、ドラマ、漫画、アニメなど、他の媒体になっているなどの詳細情報はそちらに
  • 基本的にはおすすめしたい点をフォーカスする。気になった点は個別ページに書く。あらすじはamazonから引用させてもらう
  • ダラダラと長い記事なので目次を活用してもらえるとありがたい
  • 重大なネタバレはしないが、見たくなかったり長い記事読むのが面倒だったら目次で飛んで欲しい

 

 

新しい作品との出会いのきっかけになれば嬉しく思う。

 

 

ナラタージュ #島本理生

ナラタージュ (角川文庫)

お願いだから私を壊して、帰れないところまで連れていって見捨てて、あなたにはそうする義務がある―大学二年の春、母校の演劇部顧問で、思いを寄せていた葉山先生から電話がかかってきた。泉はときめきと同時に、卒業前のある出来事を思い出す。後輩たちの舞台に客演を頼まれた彼女は、先生への思いを再認識する。そして彼の中にも、消せない炎がまぎれもなくあることを知った泉は―。早熟の天才少女小説家、若き日の絶唱ともいえる恋愛文学。

感想

辛すぎて胃がキリキリするような刹那に再燃する恋愛小説。主人公・泉に対して精神的に依存してくる葉山先生と、その依存を内心では喜んでしまい求めていく泉の様子が本人の語りで綴られていく。葉山先生に対する衝動的な愛情と比較するように、まったく心が揺さぶられない恋人・小野君への感情が描かれているのだが、泉本人は無意識でも文字で読むと全然違う表現で描かれているので、手に入らない愛情を見せつけられて余計に悲しさを誘う。泉を抱きながら言う葉山先生の台詞があまりにもせつなくて、男側の罪を感じさせるので読んでもらいたい。僕の身近にもいるが罪な男とは世の中に一定数存在するものだ。 

 

 

 

ロマンス小説の七日間 #三浦しをん

ロマンス小説の七日間 (角川文庫)

あかりは海外ロマンス小説の翻訳を生業とする、二十八歳の独身女性。ボーイフレンドの神名と半同棲中だ。中世騎士と女領主の恋物語を依頼され、歯も浮きまくる翻訳に奮闘しているところへ、会社を突然辞めた神名が帰宅する。不可解な彼の言動に困惑するあかりは、思わず自分のささくれ立つ気持ちを小説の主人公たちにぶつけてしまう。原作を離れ、どんどん創作されるストーリー。現実は小説に、小説は現実に、二つの物語は互いに影響を及ぼし、やがてとんでもない展開に!注目の作家、三浦しをんが書き下ろす新感覚恋愛小説。

感想

私生活のささくれを、翻訳している作品に投影して重ね合わせていく恋愛小説。若干、ハーレクインをディスってる感じも否めないが、物語の側面として必要な演出なのでファンには割り切ってもらいたい。翻訳ではなく創作されたロマンス小説が普通に面白かったし、あかりの現実の話とガチガチにリンクさせずに、あかりの感情が見てとれる程度に寄り添わせている創作(翻訳?)だったがとても良かった。ちなみにあかりと神名の恋愛はなかなか良い恋愛なので読み心地は悪くない。 

 

 

 

7月24日通り #吉田修一

7月24日通り

地味で目立たぬOL本田小百合は、港が見える自分の町をリスボンに見立てるのがひそかな愉しみ。異国気分で「7月24日通り」をバス通勤し、退屈な毎日をやり過ごしている。そんな折聞いた同窓会の知らせ、高校時代一番人気だった聡史も東京から帰ってくるらしい。昔の片思いの相手に会いに、さしたる期待もなく出かけた小百合に聡史は……。もう一度恋する勇気がわく傑作恋愛長編!

感想

刺激のない日常を過ごす小百合はリスボンに重ね合わせて自らの街を見ることで現実逃避をしているが、昔の片想いの相手と出逢うことでリスボンの7月24日通りは現実の道になっていく。amazonのあらすじには「もう一度恋する勇気がわく傑作恋愛長編」と書かれているが、僕はそんな明るい印象を受けなかった。むしろ書き方によっては明るい未来が見える終わり方なのに、吉田修一特有の閉塞感がありポンと荒野に投げだされて放っておかれたような読後感を感じる。もちろん、それが読者を甘えさせない感じがして個人的にはとても良かったのだが。映画化もされているので興味がある方はそちらもぜひ。 

 

 

 

黄色い目の魚 #佐藤多佳子

黄色い目の魚 (新潮文庫)

海辺の高校で、同級生として二人は出会う。周囲と溶け合わずイラストレーターの叔父だけに心を許している村田みのり。絵を描くのが好きな木島悟は、美術の授業でデッサンして以来、気がつくとみのりの表情を追っている。友情でもなく恋愛でもない、名づけようのない強く真直ぐな想いが、二人の間に生まれて―。16歳というもどかしく切ない季節を、波音が浚ってゆく。青春小説の傑作。

感想

同級生の木島と村田の青春の1ページが切り取られたような小説で、単純に恋愛と言い切れない関係性も含めて、16歳という年齢のアンバランスさが絶妙に表現されている。二人の成長の速度が同じようなペースで描かれているので、木島が思った事に近い事を村田が感じていたりして、読者目線で彼らの心の距離の近さを感じることで胸の中がポワリと温かくなれる。これから先の二人を様々な出来事が待っていると思うと、それを読めないのがもどかしくなるが、読み返せば12月の七里ヶ浜に立ち戻ることができる素敵な青春小説。 

 

 

 

蹴りたい背中 #綿矢りさ

蹴りたい背中 (河出文庫)

長谷川初実(ハツ)は、陸上部に所属する高校1年生。気の合う者同士でグループを作りお互いに馴染もうとするクラスメートたちに、初実は溶け込むことができないでいた。そんな彼女が、同じくクラスの余り者である、にな川と出会う。彼は、自分が読んでいるファッション雑誌のモデルに、初実が会ったことがあるという話に強い関心を寄せる。にな川の自宅で、初実は中学校時代に奇妙な出会いをした女性がオリチャンという人気モデルであることを知る。にな川はオリチャンにまつわる情報を収集する熱狂的なオリチャンファンであった。いびつな友情? 臆病な恋? 不器用さゆえに孤独な二人の関係を描く文芸賞受賞第一作。

感想

これを恋愛小説と言っていいか悩むところではあるのだが、言葉にできる明確なものだけが恋愛ではないと思う。実際、この作品も言葉で表現しにくい狭間の感情を絶妙に表現していて、僕も思春期の頃に感じていた“自分が特別だと勘違いしている孤独”のようなものを突きつけられるようで読んでいてとても恥ずかしくなる。ハツがにな川に対して感じる親近感、類似性、軽蔑感、愛情、性衝動は、明確な形を持たないために、言葉にできない感情が『蹴りたい』という衝動につながっているように思う。「ひとにしてほしいことばかりなんだ」は自分にも当てはまる。 

 

 

 

ふがいない僕は空を見た #窪美澄

ふがいない僕は空を見た (新潮文庫)

これって性欲?でも、それだけじゃないはず。高校一年、斉藤卓巳。ずっと好きだったクラスメートに告白されても、頭の中はコミケで出会った主婦、あんずのことでいっぱい。団地で暮らす同級生、助産院をいとなむお母さん…16歳のやりきれない思いは周りの人たちに波紋を広げ、彼らの生きかたまでも変えていく。第8回「女による女のためのR‐18文学賞」大賞受賞、嫉妬、感傷、愛着、僕らをゆさぶる衝動をまばゆくさらけだすデビュー作。

感想

山本周五郎賞を受賞した窪美澄(くぼ・みすみ)作品。高校一年生の斉藤くんが主婦のあんずとコスプレ不倫をしながら過ごす日常が描かれる。その行為が性欲なのか恋愛なのかは読み取れないが、二人の不倫の性描写がかなり激しめで、夫がその様子を盗撮し動画投稿サイトから世間へ流出させてしまうというハードな展開が続く。内容や性描写はエグイが、命というテーマはとても美しく、性行為と命の誕生は切り離せないハズなにの、感情面に開きが生じる矛盾を感じてやりきれない感覚が残る。 

 

 

 

ニシノユキヒコの恋と冒険 #川上弘美

ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)

ニシノくん、幸彦、西野君、ユキヒコ…。姿よしセックスよし。女には一も二もなく優しく、懲りることを知らない。だけど最後には必ず去られてしまう。とめどないこの世に真実の愛を探してさまよった、男一匹ニシノユキヒコの恋とかなしみの道行きを、交情あった十人の女が思い語る。はてしなくしょうもないニシノの生きようが、切なく胸にせまる、傑作連作集。

感想

女性の求めている事が本能的にわかってしまうニシノユキヒコを女性の視点から見る純粋で出口のない恋愛物語。モテてモテてモテまくるのだが、最終的に必ず一人になってしまう孤高のイケメン・ニシノユキヒコ。限りなく本物に近い偽物の愛情を女性たちに寄り添わせるが、そのハリボテの愛情では当然相手は現実のものとは見てくれない。ユキヒコが語る「どうして僕はきちんと女のひとを愛せないんだろう」という台詞は哀れで、その孤高の自意識に妙に苛立ってしまう部分はあるが、結局本人が望んでいることが起きているというようにも読める。夏目漱石『こころ』を恋愛小説にしたような印象の作品。 

 

 

 

アルジャーノンに花束を #ダニエル・キイス

アルジャーノンに花束を〔新版〕(ハヤカワ文庫NV)

32歳になっても、幼児の知能しかないチャーリイ・ゴードンの人生は、罵詈雑言と嘲笑に満ちていた。昼間はパン屋でこき使われ、夜は精薄者センターで頭の痛くなる勉強の毎日。そんなある日、彼に夢のような話が舞いこんだ。大学の偉い先生が、頭をよくしてくれるというのだ。願ってもないこの申し出に飛びついたチャーリイを待っていた連日の苛酷な検査。検査の競争相手は、アルジャーノンと呼ばれる白ネズミだ。脳外科手術で超知能をもつようになったアルジャーノンに、チャーリイは奇妙な親近感を抱きはじめる。やがて、脳外科手術を受けたチャーリイに新しい世界が開かれた。だが、その世界は、何も知らなかった以前の状態より決してすばらしいとは言えなかった。今や超知能をもつ天才に変貌したチャーリイにも解決しがたいさまざまな問題が待ちうけていたのだ。友情と愛情、悲しみと憎しみ、性、科学とヒューマニズム、人生の哀歓を、繊細な感性で描きだす感動の1966年度ネビュラ賞長篇部門受賞作。

感想

知能指数が高くなる手術によって賢くなっていく様子が日記形式で書かれた感動小説。愛する人の知能指数を飛び越えていくチャーリイと、その人の知能指数を下回っていく様子は悲しさで溢れて胸が苦しくなる。また、知能が高くなっていく喜び・驚き・羞恥・希望や、衰退していく中での恐怖・絶望・安堵は真に迫っており、知能が高くなる事が幸せに直結するわけではなく、大切な物が何かを考えさせられる内容になっている。恋愛の側面から考えると精神年齢というものが恋愛においてどういうファクターを担っているのかを感じられるようになっている。素晴らしい作品なのでぜひ手に取ってもらいたい。 

 

 

 

アシンメトリー #飛鳥井千砂

アシンメトリー (角川文庫)

結婚に強い憧れを抱く女、朋美。結婚に理想を追求する男、貴人。結婚に縛られたくない女、紗雪。結婚という形を選んだ男、治樹。朋美は、親友の紗雪が幼なじみの治樹と突然結婚を決めたことにショックを受ける。心から祝えない朋美だったが、ふたりの結婚パーティーで出会った貴人に次第に魅かれていく。しかし、紗雪と治樹の結婚には隠された秘密があった…。アシンメトリー(非対称)なアラサー男女4人を巡る、切ない偏愛ラプソディ。

感想

四人のアラサー男女の非対称な恋愛・結婚・友情の話…と、だけ書くとバブル期のクソドラマみたいで読む気が失せるが、飛鳥井千砂の本なのでそこは流石の面白さなので安心してほしい。四人の視点から物語は進んでいくので、前半の朋美の一人称の自分評価と後半の周りから見た朋美の印象の違いの描写が絶妙だと感じた。とてつもない大事件が起きるわけではないのだが、作者が描く“人と人のつながりの距離感”の描写は、心のどこかで感じているが言葉にならない部分を言語化してくれているようで嬉しくなってしまう。やはり飛鳥井さんの本は素晴らしい。 

 

 

 

ノルウェイの森(上下) #村上春樹

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

限りない喪失と再生を描く究極の恋愛小説!暗く重たい雨雲をくぐり抜け、飛行機がハンブルク空港に着陸すると、天井のスピーカーから小さな音でビートルズの『ノルウェイの森』が流れ出した。僕は1969年、もうすぐ20歳になろうとする秋のできごとを思い出し、激しく混乱し、動揺していた。限りない喪失と再生を描き新境地を拓いた長編小説。

激しくて、物静かで哀しい、100パーセントの恋愛小説!あらゆる物事を深刻に考えすぎないようにすること、あらゆる物事と自分の間にしかるべき距離を置くこと――。あたらしい僕の大学生活はこうしてはじまった。自殺した親友キズキ、その恋人の直子、同じ学部の緑。等身大の人物を登場させ、心の震えや感動、そして哀しみを淡々とせつないまでに描いた作品。

感想

あまりにも有名な村上春樹の名作小説。初めて読んだときは凄まじいお洒落度に眩暈を覚えた。恋愛小説であり恋愛小説でないこの作品は、人の死や性描写に溢れているのに、風のない日の水面を見つめているような穏やかな読書感覚を味わえる。内容的にはやや過激なのに主人公の淡々とした語り口調が心地よく、性描写が多く盛り込まれているのに上品さを失わないのは、性が当たり前にそこにあるものとして説得力を持って描かれているからだ。友達の自殺によって世界のすべてが歪んでしまっているようだが、実は世界は元々歪んでいて、それに気がついた人間だけが「正常でない」と思い込んでしまっているのかもしれない。 

 

 

 

好き好き大好き超愛してる #舞城王太郎

好き好き大好き超愛してる。 (講談社文庫)

愛は祈りだ。僕は祈る。僕の好きな人たちに皆そろって幸せになってほしい。それぞれの願いを叶えてほしい。温かい場所で、あるいは涼しい場所で、とにかく心地よい場所で、それぞれの好きな人たちに囲まれて楽しく暮らしてほしい。最大の幸福が空から皆に降り注ぐといい。「恋愛」と「小説」をめぐる恋愛小説。

感想

タイトルはまぁそのアレだが、最愛の人を失ったあとに始まる悲しい恋愛小説。小説家の立場で恋人に死なれた主人公が、愛すること、祈ること、そして言葉を紡いで物語を作ることについて掘り下げている。どうやら「世界の中心で愛を叫ぶ」へのアンチテーゼ作品で、現実パート(柿緒)での物語展開は読んでいてうなだれてしまう。それでもただ好きな人が死んで涙を流すのではなく、その死について深く考えるべきだという作者のメッセージだと思うと真摯に受け止めたくなる作品なので、タイトルを読んで「うんざり」などと言わずにチャレンジしてもらいたいものだ。 

 

 

 

マドンナ #奥田英朗

マドンナ (講談社文庫)

人事異動で新しい部下がやってきた。入社4年目の彼女は、素直で有能、その上、まずいことに好みのタイプ。苦しい片思いが始まってしまった(表題作)ほか40代・課長達の毎日をユーモアとペーソス溢れる筆致で描く短編5編を収録。上司の事、お父さんの事、夫の事を知りたいあなたにもぴったりの1冊です。

感想

中年男性サラリーマンの心の機微が描かれている恋愛小説?で、中間管理職特有の微妙に胃が痛くなるような小編や、笑えるようで笑えない哀愁が感じられる小編などがならぶオジサンの為の物語。若い女性社員に惚れた中年管理職の片想いを読むとなんだか疲れるのだが、苦笑いしつつ微妙に共感できない感覚がまた絶妙だ。ただ、小編の一つ『パティオ』は爽やかさがあり、なんとも煮え切らない現実的な短編集の清涼剤のような役割を担っている作品なのでぜひ読んでみて欲しい。 

 

 

 

私の男 #桜庭一樹

私の男 (文春文庫)

落ちぶれた貴族のように、惨めでどこか優雅な男・淳悟は、腐野花の養父。孤児となった十歳の花を、若い淳悟が引き取り、親子となった。そして、物語は、アルバムを逆から捲るように、花の結婚から二人の過去へと遡る。内なる空虚を抱え、愛に飢えた親子が超えた禁忌を圧倒的な筆力で描く第138回直木賞受賞作。

感想

恋愛といっても孤独な親子間で行われるかなりハードな近親相姦の恋愛小説。愛憎入り乱れた二人の関係性から生まれる感情は圧倒的なエネルギーで読み手の心を侵食してくる。淳悟にとっての花は母親であり娘であり海でもある。花にとっての淳悟は父親であり子供であり、二人は恋人になっていくのだが、血の結びつきの強さを感じつつ、本当の意味での家族を求めている二人を読んでいると悲しい気持ちでいっぱいになる。出来事だけをなぞるとおぞましさを感じるが、語られる個人の感情面から考えると受け入れられるという不思議な感覚を味わえる。ありえないほど屈折しているけどこの出来事は愛情であると信じたくなる作品だ。 

 

 

 

タイニー・タイニー・ハッピー #飛鳥井千砂

タイニー・タイニー・ハッピー (角川文庫)

東京郊外の大型ショッピングセンター「タイニー・タイニー・ハッピー」、略して「タニハピ」。商品管理の事務を務める徹は、同じくタニハピのメガネ屋で働く実咲と2年前に結婚。ケンカもなく仲良くやってきたつもりだったが、少しずつズレが生じてきて…(「ドッグイヤー」より)。今日も「タニハピ」のどこかで交錯する人間模様。結婚、恋愛、仕事に葛藤する8人の男女をリアルに描いた、甘くも胸焦がれる、傑作恋愛ストーリー。

感想

ついつい“共感”してしまう飛鳥井さんが描く、タイニータイニーハッピーという大型ショッピングセンターに係る人たちの連作短編集。作品毎に視点が変わりそれぞれの話が少しずつ交差する構成や、全ての小編を通して漂う優しい雰囲気が、有川浩の『阪急電車』に似た印象を受けるが、こちらの方が幅広く共感を呼べる心情が描かれていると思う。ちなみに僕は北ちゃん夫婦が一番好きで共感できたのだが、読み手によって誰に共感するかが大きく変わるのもこの作品を読む楽しみなのかもしれない。 

 

 

 

マチネの終わりに #平野啓一郎

マチネの終わりに

天才ギタリストの蒔野(38)と通信社記者の洋子(40)。深く愛し合いながら一緒になることが許されない二人が、再び巡り逢う日はやってくるのか――。出会った瞬間から強く惹かれ合った蒔野と洋子。しかし、洋子には婚約者がいた。スランプに陥りもがく蒔野。人知れず体の不調に苦しむ洋子。やがて、蒔野と洋子の間にすれ違いが生じ、ついに二人の関係は途絶えてしまうが……。芥川賞作家が贈る、至高の恋愛小説。

感想

成熟した大人の恋愛小説。個人的な理由からとても感情移入しやすかった作品。運命的な二人が小さなすれ違いとたった一度の大きな罪によって違う道を歩むことになっていく様子は、心が引き裂かれるようにつらい気持ちになる。行動は自身の未来を決めていくように見えるが、実際に自分の行動では望んだ未来を手に入れることができず、逆に過去こそ今の心の在り方で変えていくことができるという考えがとても新鮮で、それこそがすれ違う二人にとっての救いになるように感じられる上質な恋愛小説。時の流れは偉大であり、同時にその時を振り返り美しく肯定できる人間の感覚も素晴らしいものなのだろう。 

 

 

最後に

いかがだっただろうか?

 

楽しくワクワクするような作品たちではないが、そこに存在する憎しみや苦しみ、裏切りだってある意味では愛情の裏返しだ。表と裏の両方がそろって初めて、人と人が織りなす本当の恋愛小説になりうるのではないだろうか。

 

そんなことを教えてくれる大人の恋愛小説を、皆さんもぜひ手に取ってみてくださいね。