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愛すべきクローズド・サークル系おすすめミステリー小説【21作品】

2017年3月30日更新

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ミステリーファンとしては絶対に外せないジャンル――

 

【クローズドサークル】

 

皆さんも読まれたことはあるかと思います。

 

傑作と呼ばれるクローズドサークルには、孤島や山荘に閉じ込められて、1人、また1人と殺人が起きていき最後には仰天の結末が…!?なんていう、ミステリーマニアからしたらよだれが垂れるような展開と、予想を上回る結末がたくさん存在します。そして現在も新しい作品が生まれています。

 

この記事は僕が実際に読んだ古今東西のクローズドサークル作品を様々なタイプに分類し、紹介することで、新しい【クローズドサークル作品】と出逢えるようにすることを目的としています。

 

 

ルール

  • 実際に読んで面白かった小説をランダムで紹介する。ランキングではありません[随時更新]
  • 映画、ドラマ、漫画、アニメなど、他の媒体の詳細情報はいずれ書く個別ページ
  • あらすじ・ストーリーは基本amazonからの引用で読んだ時に最大に楽しめるように基本的に重大なネタバレなし
  • ダラダラと長い記事なので目次を活用してもらえるとありがたい
  • 作品ごとに以下の3項目を独断と偏見で評価してみたが、面白さを示している訳ではない
  1. 《閉鎖感》その空間がどれだけ閉鎖的に描かれているか?
  2. 《衝撃度》予想を裏切る衝撃的な展開が描かれているか?
  3. 《恐怖度》作品に引き込まれ共に恐怖を感じるか?
  • クローズドサークルの定義についてはWikipediaの内容を採用する

クローズド・サークル(closed circle)とは、ミステリ用語としては、何らかの事情で外界との往来が断たれた状況、あるいはそうした状況下でおこる事件を扱った作品を指す。-Wikipediaより-

  • 多くのクローズドサークルが存在するが、今回は以下の6つのタイプに大別してみたので、自分の好みのクローズドサークルを発見するときの参考にしてほしい
  1. 【孤島系】オーソドックスな孤島に取り残されて数日後にしか助けが来ないクローズドサークル
  2. 【山荘系】雪などで山荘に閉じ込められて気候が安定するまで脱出できないクローズドサークル
  3. 【閉鎖空間系】乗り物や建物の中に閉じ込められて事件が発生するクローズドサークル
  4. 【非常事態系】自然災害や強盗といった非常事態に巻き込まれ発生するクローズドサークル(心理的なものも含む)
  5. 【デスゲーム系】バトルロワイヤル的な生き残りを懸けたクローズドサークル
  6. 【SF系】非現実的だが論理的な限定条件があるクローズドサークル 


新しい作品との出会いのきっかけになれば嬉しく思う。

 

 

そして誰もいなくなった #アガサ・クリスティー

そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

【孤島系】

閉鎖感★★

衝撃度★★★★★

恐怖度★★

あらすじ

その孤島に招き寄せられたのは、たがいに面識もない、職業や年齢もさまざまな十人の男女だった。だが、招待主の姿は島にはなく、やがて夕食の席上、彼らの過去の犯罪を暴き立てる謎の声が……そして無気味な童謡の歌詞通りに、彼らが一人ずつ殺されてゆく! 強烈なサスペンスに彩られた最高傑作!

とりあえず基本にして究極の作品なので一番初めにおすすめしたい、以後の作品に多大なる影響を与えているクローズドサークルの傑作。海外古典ミステリーだけあって、導入部分で少しだけ世界観に入りにくいが、中盤以降はシンプルでスピード感があり読者も登場人物たちと共に追い詰められていく。童謡「10人のインディアン」をなぞらえる殺害方法、金田一シリーズにも登場するいわゆる見立て殺人という舞台装置の魅力や、犯人が使った画期的トリックが生まれた瞬間でもあるので、ミステリー界に多大なる影響を与えた素晴らしい作品であり、なんといってもタイトルのセンスがずば抜けて素晴らしい。とてもクールな作品だと思っている。 

こんな記事も書いています

『そして誰もいなくなった』オマージュが楽しいから昔の推理小説は読んでおこう!【アガサ・クリスティ】

 

 

オリエント急行の殺人 #アガサ・クリスティー

オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

【閉鎖空間系】

閉鎖感★★

衝撃度★★★★

恐怖度

あらすじ

厳寒の季節、国際列車オリエント急行は世界各国からの乗客でいつになく混んでいた。一癖も二癖もある乗客たちが作る異様な雰囲気のなか、雪で立往生した車内で、老富豪が刺殺された。名探偵ポアロが腰を上げたが、乗客のすべてには堅牢なアリバイがあった……大胆なトリックで贈る代表作。

アガサ・クリスティーのクローズドサークルといえばこの作品も外せない。犯人が有名すぎて謎解き的な楽しみはないが、灰色の脳細胞を持つ名探偵エルキュール・ポアロの自信家な話しぶりと共にその世界観を楽しめる傑作。犯人がクローズアップされる作品ではあるが、実は話の落とし所(二つの結論)こそこの作品を傑作に押し上げている点なのではないかと思う。現代の日本でこの結論を使うと、社会倫理に反している様を少しダークに表現しそうだが、この作品中ではむしろ清々しく感じるのは、時代のせいか国民性のせいか、それともクリスティーの作品の魅力のせいなのか。 

 

 

十角館の殺人 #綾辻行人

十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

【孤島系】

閉鎖感

衝撃度★★★★

恐怖度★★

あらすじ

十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の7人が訪れた。館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。やがて学生たちを襲う連続殺人。ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける! 1987年の刊行以来、多くの読者に衝撃を与え続けた名作が新装改訂版で登場。

『そして誰もいなくなった』のオマージュ作品の傑作として知られているのがこの作品。孤島と本島にて同時に進行していく2つのストーリーが交差するその一点の驚愕は計り知れず、孤島に閉じ込められた推理小説研究会の面々が、それぞれ有名な推理作家にちなんだニックネームになっているのもミステリーファンとして嬉しい点だ。クローズドサークルで起こる事件とその空間で怖がる者、強がる者、冷静でいようとする者が一人ずついなくなっていく様を眺める醍醐味を最大限に楽しめる作品であることは間違いない。 

 

ちなみに館シリーズのクローズドサークルで他にオススメしたいのは『迷路館の殺人』『時計館の殺人』。二つとも傑作だ。もちろんクローズドサークルではない他の館シリーズも、色々な仕掛けや遊び心が満載で、漂ってくる不気味な空気感が素晴らしいので是非順番に手に取って欲しい。 

 

 

すべてがFになる #森博嗣

すべてがFになる (講談社文庫)

【孤島系】

閉鎖感★★

衝撃度★★★★

恐怖度★★

あらすじ

孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑む。新しい形の本格ミステリィ登場。

森博嗣のデビュー作にしてS&Mシリーズの1冊目。一見あり得ない様な設定のクローズドサークルではあるが、それが気にならないくらいの強烈な個性が登場人物にあり、話にグイグイ引き込まれてしまう。特に探偵役の犀川創平は単純には言い表せない魅力を持っており、論理性や現実味など抜きにして、この作品を読んでいること自体に楽しさを感じる事が出来る稀有な作品。次は自分が殺されるかもしれない…といった類の恐怖はないのだが、両手両足が切断されたウエディングドレス姿の遺体が機械に乗って登場するシーンは猟奇性に溢れており恐怖を覚える

 

長いシリーズのスタートになっており『Vシリーズ』『四季シリーズ』まで読み切れば、この『すべてがFになる』という作品の印象がガラリ変わるというロングスパンの伏線もあるので根気よく "順番に" 読んでいってほしいシリーズだ。 

 

 

そして二人だけになった―Until Death Do Us Part #森博嗣

そして二人だけになった―Until Death Do Us Part (新潮文庫)

【閉鎖空間系】

閉鎖感★★★★★

衝撃度★★

恐怖度★★★★

あらすじ

全長4000メートルの海峡大橋を支える巨大なコンクリート塊。その内部に造られた「バルブ」と呼ばれる閉鎖空間に科学者、医師、建築家など6名が集まった。プログラムの異常により、海水に囲まれて完全な密室と化した「バルブ」内で、次々と起こる殺人。残された盲目の天才科学者と彼のアシスタントの運命は……。反転する世界、衝撃の結末。知的企みに満ちた森ワールド、ここに顕現。

同じく森作品のクローズドサークルといえばこの作品。タイトルは『そして誰もいなくなった』のオマージュ。森博嗣の作品だけあって単純なクローズドサークルではなく、ガッツリとミステリーだと思って読むと最後のほうで置いてけぼりを食ってしまうような変化球作品。作品の最後に登場する2つの結論のどちらを採用するかは読者に委ねられる、俗にいうリドルストーリー*1の形式を取っているので、理路整然とした論理的結末を望む方にはあまりお勧めできない幻想的な側面を持つクローズドサークルだ。 

 

 

そして扉が閉ざされた #岡嶋二人

そして扉が閉ざされた (講談社文庫)

【閉鎖空間系】

閉鎖感★★★★★

衝撃度★★

恐怖度★★

あらすじ

富豪の若き1人娘が不審な事故で死亡して3カ月、彼女の遊び仲間だった男女4人が、遺族の手で地下シェルターに閉じ込められた!なぜ?そもそもあの事故の真相は何だったのか?4人が死にものぐるいで脱出を試みながら推理した意外極まる結末は?極限状況の密室で謎を解明する異色傑作推理長編。

秀逸な舞台設定でスタートから読者を物語に引きずり込む岡嶋二人の論理的クローズドサークル。男女4人が地下シェルターに閉じ込められ、そこからの脱出と事件の真相究明をしていくのだが、少ない登場人物の物語なのでそれぞれの人間関係が深く掘り下げられていくので、後半に向けてどんどん盛り上がりを見せていく。憎悪と悪意に溢れた重苦しい話のようだが、冷静に分析すれば愛情と思いやりが折り重なり、悲劇と誤解を生んだ気持ちのやり場のないサスペンスミステリーになっている。舞台にしても楽しめる作品だと思う。てか、舞台で見てみたい。 

 

 

月光ゲーム―Yの悲劇’88 #有栖川有栖

月光ゲーム―Yの悲劇’88 (創元推理文庫)

【非常事態系】

閉鎖感

衝撃度★★★★

恐怖度★★★★★

あらすじ

夏合宿のために矢吹山のキャンプ場へやってきた英都大学推理小説研究会の面々―江神部長や有栖川有栖らの一行を、予想だにしない事態が待ち構えていた。矢吹山が噴火し、偶然一緒になった三グループの学生たちは、一瞬にして陸の孤島と化したキャンプ場に閉じ込められてしまったのだ。その極限状況の中、まるで月の魔力に誘われでもしたように出没する殺人鬼。その魔の手にかかり、ひとり、またひとりとキャンプ仲間が殺されていく…。いったい犯人は誰なのか。そして、現場に遺されたyの意味するものは何。

有栖川有栖の "学生アリスシリーズ" の1作目にして、素晴らしい自然災害系クローズドサークル。主人公たちは大学生的なお気楽感と共に事件に巻き込まれていくのだが、火山の噴火によるパニック殺人事件がダブルの緊迫感で物語を非常に盛り上げているので最後まで締まった作品になっている。ちょっと登場人物が多いような印象を受けるが、作者からの挑戦状があるタイプの推理小説なので人数は多い方が良いのかもしれない。また、探偵役の江神さんが出しゃばりな探偵ではなく人間的で優しい好きなタイプの探偵象なところも魅力的だ。 

 

ちなみに『孤島パズル』『双頭の悪魔 』『女王国の城』と傑作そろいの同シリーズの続編もオススメしておきたい。 

 

 

仮面山荘殺人事件 #東野圭吾

仮面山荘殺人事件 (講談社文庫)

【非常事態系】

閉鎖感★★★★

衝撃度★★

恐怖度★★

あらすじ

8人の男女が集まる山荘に、逃亡中の銀行強盗が侵入した。外部との連絡を断たれた8人は脱出を試みるが、ことごとく失敗に終わる。恐怖と緊張が高まる中、ついに1人が殺される。だが状況から考えて、犯人は強盗たちではありえなかった。7人の男女は互いに疑心暗鬼にかられ、パニックに陥っていった……。

読みやすい東野圭吾作品で、強盗犯の立てこもり事件の最中、殺人事件も発生するというパニック系クローズドサークル。読み終わってから考えると、確かに犯人が怪しい雰囲気を出しているのだが、決定打がなかったのですっかり騙されてしまうという作者の技術力が光る作品になっており、何も知らずに読めば、おそらく読者が想像するような結末は迎えないと思うので何も調べずに読んでほしい作品。でも単純に題名が悪い気がする。『容疑者Xの献身』なみのセンスあるタイトルだったらもっと評価されていた気がするのになぁ。 

 

 

ある閉ざされた雪の山荘で #東野圭吾

ある閉ざされた雪の山荘で (講談社文庫)

【非常事態系】

閉鎖感★★

衝撃度★★★★

恐怖度

あらすじ

早春の乗鞍高原のペンションに集まったのは、オーディションに合格した若き男女七名。これから舞台稽古が始まるのだ。豪雪に襲われ孤立した山荘での殺人劇である。だが一人また一人、現実に仲間が消えていくにつれ、彼らの中に疑惑が生じる。果してこれは本当に芝居なのか、と。一度限りの大技、読者を直撃。

同じく東野圭吾作品のクローズドサークルの傑作といえばこちら。この作品の賞賛すべき点は非常に考え抜かれた優れた舞台設定にある。実際に閉ざされた雪の山荘にいる訳ではないのだが、ある理由から外部に連絡を取る事が出来ないという心理的に生み出されたクローズドサークルの中で事件が起きて人が消えていく。読み易く面白いのだが、初期の東野作品にみられる "自信過剰だけど根はいいやつ主人公" があまり好きではない為、自己投影がしにくいのが、個人的には少し残念に感じてしまう。ラストに語られる最大のどんでん返しについては、是非読んだ時にその衝撃を味わってほしいので黙っておくことにする。 

 

 

インシテミル #米澤穂信

インシテミル (文春文庫)

【デスゲーム系】

閉鎖感★★★★★

衝撃度★★

恐怖度★★

あらすじ

「ある人文科学的実験の被験者」になるだけで時給十一万二千円がもらえるという破格の仕事に応募した十二人の男女。とある施設に閉じ込められた彼らは、実験の内容を知り驚愕する。それはより多くの報酬を巡って参加者同士が殺し合う犯人当てゲームだった―。いま注目の俊英が放つ新感覚ミステリー登場。

米澤穂信の閉鎖空間デスゲームのクローズドサークル。タイトルは "淫してみる" つまり "物事に熱中する、没頭する" という意味を持つ。作品はフーダニット(犯人当て)に重点が置かれているので、作品名の通り読み初めからラストに至るまで緊張感を持って作品に没頭できる。本格ミステリーではあるが、やや俯瞰でとらえたメタな視点の作品にも思えるので、ミステリー好きの人間が一歩離れて読むといっそう面白さを感じやすい作品かもしれない。完全なフィクションの土台の上に、ロジカルな推理が展開されるという状況をエンタメとして受け入れられる人には非常にオススメしたい。 

 

 

金田一少年の事件簿〈3〉電脳山荘殺人事件 #天樹征丸・さとうふみや

小説 金田一少年の事件簿(3) (講談社漫画文庫)

【雪の山荘系】

閉鎖感★★

衝撃度★★★★

恐怖度★

あらすじ

雪で閉ざされた山荘に集まったのはチャットで知り合った7人と金田一耕助の孫・金田一一、それに七瀬美雪。そこで「僧正」が殺された!7人の中にいる「トロイの木馬」を名乗り、皆殺しゲームを操ろうとしているのは誰か!?果たして、金田一少年は全員が“消去”される前にゲームのスイッチを切ることができるのか。

言わずと知れた金田一少年の事件簿のノベライズ版。「たかが漫画のノベライズでしょ?」なんて思った人もいるかもしれないが、この作品はかなりレベルの高い作品なので騙されたと思って読んでみてほしい。登場人物達はネット上のミステリーサークル「電脳山荘」のメンバーで、初めてリアルで会うオフ会で事件が発生する。それぞれ推理小説家のハンドルネームを持っている設定も魅力的で、動機となった裏側の部分も良く考えられており、シリーズの中では飛びぬけて名作なのではないかと思う。ちなみに他の『幽霊客船殺人事件』『オペラ座館・新たなる殺人』などのノベライズは、面白くなくはないが別に読まなくていいと思う。 

 

 

涙香迷宮 #竹本健治

涙香迷宮

【非常事態系】

閉鎖感★★

衝撃度★★

恐怖度★

あらすじ

明治の傑物・黒岩涙香が残した最高難度の暗号に挑むのは、IQ208の天才囲碁棋士・牧場智久! これぞ暗号ミステリの最高峰!いろは四十八文字を一度ずつ、すべて使って作るという、日本語の技巧と遊戯性をとことん極めた「いろは歌」四十八首が挑戦状。そこに仕掛けられた空前絶後の大暗号を解読するとき、天才しかなし得ない「日本語」の奇蹟が現れる。日本語の豊かさと深さをあらためて知る「言葉のミステリー」です。

2016年の『このミス』1位作品だが、どことなく気の抜けたソフトで特殊なクローズドサークル。多方面で才能を発揮した黒岩涙香が残した暗号に天才棋士・牧場智久が挑むのだが、主人公の智久が天才すぎるので、その天才を眺めて目の保養をする作品になっている。天才の智久の意識は、事件の解決よりも作中に登場する大量の『いろは歌』の暗号に向かっているのだが、常人がそれを解くのは不可能と言い切ってしまってもいいレベルなので読者は見てるだけだ。つまり犯人とかクローズドサークルとかはかなり脇役になっているので、ミステリーとして評価される作品ではないかもしれない。が、物語や話の空気感の緩さに関してはとても読みやすいので、黒岩涙香に関する長いうんちくを適度に読み飛ばして読めばドキドキしながら読める冒険譚のような小説になっている。 

 

 

殺しの双曲線 #西村京太郎

新装版 殺しの双曲線 (講談社文庫)

【雪の山荘系】

閉鎖感★★

衝撃度★★★★

恐怖度★★

あらすじ

都内で起きる連続強盗事件。東北の雪に閉ざされたホテルに無料で招待された6人の若い男女。強盗事件は双子の犯行とわかっていながら、兄弟どちらが実行犯か、警察は立証できない。一方、陸の孤島と化したホテルでは密室殺人事件が起きる。そして再び…。あざなえる縄のごとくに並行する二つの物語は、どこでどう結びつくのか。

西村京太郎といえばトラベルミステリーの印象が強いが、こんな作品も書いていたのかと嬉しい喜びを感じてしまうクローズドサークル。冒頭に「双生児トリックを使っている」という宣言が入ることで、物語全体が何倍も魅力的に読めるので、そこは作者の素晴らしいテクニックのたまものだと思う。またクローズドサークルと通常の世界が同時進行で進んでいく物語の展開は、どことなく『十角館の殺人』のようでもあり、最後まで胸を高まらせて読むことが出来る。この作品を気に入ってしまうと、大量にある西村京太郎作品に手を出したくなるので注意してほしい笑。 

 

 

夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) #麻耶雄嵩

夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社文庫)

【孤島系】

閉鎖感★★

衝撃度★★★★★

恐怖度★★

あらすじ

歪んだ館が聳え、たえず地が揺れ、20年前に死んだはずの女性の影がすべてを支配する不思議な島「和音島」。真夏に雪が降りつもった朝、島の主の首なし死体が断崖に建つテラスに発見された。だが、殺人者の足跡はない…。

衝撃的な問題作を連発する麻耶雄嵩のアンチミステリー作品でノックスの十戒*2なんぞクソくらえと中指を立てているようなクローズドサークル。幻想的で不思議な島「和音島」に起こる不可解な殺人事件は、前半はやや間延びした印象を受けるかもしれないが、後半に向けて怒濤の展開が読者を離すとことなく突き上げていく。一応、探偵・メルカトル鮎シリーズなのだが、本人はラスト数ページにしか登場せず、その数ページで発せられる言葉によって、幻想的だった物語が全く別の側面を見せるようになるので、「お見事!」としか言いようがない。キュビズムとか、理解しにくい部分も書かれているので読者を選ぶかもしれないが、個人的には衝撃度の方が上回った。 

 

 

クリムゾンの迷宮 #貴志祐介

クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)

【デスゲーム系】

閉鎖感★

衝撃度★★★★

恐怖度★★★★★

あらすじ

星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された。死を賭した戦慄のゼロサムゲーム。一方的に送られてくるメッセージ。生き抜くためにどのアイテムを選ぶのか。自らの選択が明日の運命を決める―!

最終的に広間に集合し、論理的に推理をするような作品ではなく、ミステリー要素を含んだサバイバルデスゲームのクローズドサークル。とてつもなく非現実的な環境に投げ出された主人公が、死なない為に支給されるアイテムを頭をフル回転させながら選び、生き抜いていく作品なので、感情移入すると恐怖感や焦燥感がとんでもなく、最後の最後まで手に汗握る感覚で読み切れる。賛否あるようだが最後の終わり方も、小説全体を漂う非現実的な絶望感を壊さない配慮に思えて好印象だった。デスゲーム内の設定やストーリーの進め方、最後のどんでんがえしも含めて僕はすべて楽しめたので、出来ればハリウッドで映画化してほしいと思っているくらいの作品。 

 

 

箱の中の天国と地獄 #矢野龍王

箱の中の天国と地獄 (講談社文庫)

【デスゲーム系】

閉鎖感★★★★

衝撃度★★

恐怖度★★

あらすじ

生死を分かつ二つの箱。ノンストップ! 脱出ゲーム小説。少女は生還できるのか?閉ざされた謎の施設で妹と育った真夏(まなつ)。ある朝、施設内に異変が起こり、職員たちは殺戮された。収容されていた他の男女とともに姉妹は死のゲームに強制参加させられる。建物は25階、各階には二つの箱。一方の箱を開ければ脱出への扉が開き、もう一方には死の罠が待つ。戦慄の閉鎖空間! 傑作脱出ゲーム小説。

同じくデスゲーム系だと、矢野龍王のこの作品もオススメしておきたい。理不尽に参加させられるデスゲームなので、感覚的にはギリギリクローズドサークルと呼べるライン上に入る作品。命がけで箱を開けていく主人公たちの一挙手一投足に目が離せない緊迫感があるので最後まで楽しめるのだが、文句をつけるとすると、登場人物たちの性格や行動原理が一貫してないように感じてしまうので、世界観に浸りにくい部分がある。また、メインの大オチのトリックの必要性が薄く、間抜けな印象を受けるので残念な部分も多い。それでもキャラ立ちしている人物がサックリ死んでしまう思い切りの良さがある作品なので、興味があれば是非読んでほしい。 

 

 

極限推理コロシアム #矢野龍王

極限推理コロシアム (講談社ノベルス)

【デスゲーム系】

閉鎖感★★

衝撃度★★

恐怖度★★

あらすじ

二つの館に強制的に集められた七人の「プレイヤー」たちに「主催者」は命じる―「今から起きる殺人事件の犯人を当てよ」―もちろん、被害者もプレイヤーの中から選ばれる。二つの館で起きる事件を、互いにもう一つの館より早く、解決しなければならないのだ。不正解の代償は「死」!過酷きわまるデス・ゲームの幕が開く!究極のサバイバル・サスペンス!

同じく矢野龍王のデスゲームだとこの作品。隔離された2つの館で同時に起こる事件を、互いにもう一つの館より早く解決できなければ死ぬというワンアイデアの設定で最後まで読ませてくれるクローズドサークルもある。舞台装置のインパクトが素晴らし過ぎてワクワクしながらページをめくっていける部分は良いのだが、逆に登場人物たちが全体的に間抜けで緊張感が足りない印象を受けたり、ご都合主義な記憶操作があったりと、魅力的な設定に内容が追い付いていない残念さがある。とはいえ、"2つの館"で沸き起こるデスゲームという設定の魅力はそれらを凌駕するのではないだろうか。 

 

 

『クロック城』殺人事件 #北山猛邦

『クロック城』殺人事件 (講談社文庫)

【SF系】

閉鎖感★★

衝撃度★★★★

恐怖度★★

あらすじ

終焉をむかえつつある人類の世界。探偵・南深騎(みき)と菜美の下に、黒鴣瑠華(くろうるか)と名乗る美少女が現れた。眠り続ける美女。蠢く人面蒼。3つの時を刻む巨大な時計。謎が漂うクロック城に2人を誘う瑠華。そこに大きな鐘が鳴り響いたとき、首なし遺体が次々と現れた。驚愕のトリックが待つ、本格ミステリ。 

非現実的な舞台設定が生きるSF系クローズドサークル。SFと推理小説の融合作品になっているが、謎解きに関しては限定条件の中で首なし死体にする意味が納得できる形で描かれていたり、終盤での大きな逆転劇もあり、素晴らしい内容になっている。全体を通して退廃的な雰囲気が漂っており、その通りの世界感は生まれているのだが、少し過剰演出に見えてしまう部分もあるので、読む時は特殊な世界感であることも意識しておいた方が楽しめると思う。 

 

ちなみに続編として『『瑠璃城』殺人事件』『『アリス・ミラー城』殺人事件』『『ギロチン城』殺人事件』があり、明言は避けるが、クロック城よりも名作があったりもするので是非。 

 

 

冷たい校舎の時は止まる(上・下) #辻村深月

冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)

【SF系】

閉鎖感★★★★

衝撃度★★

恐怖度★★

あらすじ

雪降るある日、いつも通りに登校したはずの学校に閉じ込められた8人の高校生。開かない扉、無人の教室、5時53分で止まった時計。凍りつく校舎の中、2ヵ月前の学園祭の最中に死んだ同級生のことを思い出す。でもその顔と名前がわからない。どうして忘れてしまったんだろう―。

作者・辻村深月が学生時代に書いた作品にして、特殊な状況に閉じ込められたSF系クローズドサークル。これがデビュー作とか頭がおかしいレベル。犯人当ての面白さではなく、物語として優れており、それぞれの背景まで良く考えられている。細かい所まで描かれているので、登場人物たちの信頼関係のある仲間の空気感まで文章から感じられるのは流石といったところ。しかし、逆に丁寧に描かれすぎているとも言えるので、読了までには時間がかかるかもしれないが、2ヵ月前の学園祭の最中に死んだ同級生に関するヒントはいくつも散りばめられているので、是非とも"同級生"の正体を見つけ出してみてほしい。 

 

 

月の扉 #石持浅海

月の扉 (光文社文庫)

【非常事態系】

閉鎖感★★★★

衝撃度★★

恐怖度

あらすじ

週明けに国際会議を控え、厳重な警戒下にあった那覇空港で、ハイジャック事件が発生した。3人の犯行グループが、乳幼児を人質にとって乗客の自由を奪ったのだ。彼らの要求はただひとつ、那覇警察署に留置されている彼らの「師匠」石嶺孝志を、空港滑走路まで「連れてくること」だった。緊迫した状況の中、機内のトイレで、乗客の死体が発見された。誰が、なぜ、どのようにして―。スリリングな展開とロジカルな推理!デビュー作『アイルランドの薔薇』をしのぐ「閉鎖状況」ミステリーの荒業が、いま炸裂する!

石持浅海らしい論理的な推理パートと幻想的なSF部分が融合している作品で、同時に飛行機ハイジャックの中で巻き起こる殺人事件を扱っている欲張りなクローズドサークル。主人公側がハイジャック犯なので、殺されてしまうような恐怖はないのだが、不明確なまま進んでいくハイジャックの動機と、飛行機内で起こる殺人事件が読者を不安な気持ちにさせていき、クライマックスの話の落としどころまで一気に読めてしまう隠れた名作。あまり人気がないのは、タイトルが良くないのではないかと思っている。ちなみに石持作品の雪の山荘といえば『扉は閉ざされたまま』があるが、あればクローズドサークルとは呼ばないと思うので除外してみた。 

 

 

偽のデュー警部 #ピーター・ラヴゼイ

偽のデュー警部 (ハヤカワ・ミステリ文庫 91-1)

【閉鎖空間系】

閉鎖感★★

衝撃度★★★

恐怖度★

あらすじ

ロンドンに住む花屋の店員アルマは、妻ある歯科医ウォルターとひそかに愛し合っていた。ウォルターの妻がアメリカに渡ると言い出したとき、別れたくない二人は妻の殺害計画をたてて、大西洋を横断する豪華客船に乗り込む。しかし、予期せぬ殺人事件が船内で起きた。伝説的な名警部に間違えられたウォルターは、捜査にあたるはめになり……。 英国推理作家協会賞ゴールド・ダガ―賞受賞、ユーモアあふれる本格ミステリの傑作(文庫裏表紙より引用)

不倫相手と共に妻を殺害する計画を建てた主人公・ウォルターが『クリッペン事件』を解決した名警部・デューに間違えられて船内で起きた殺人事件を解決するというコミカルとシリアスが絶妙にマッチングした船上のクローズドサークル。殺人者から一転、名警部として扱われる様子にはユーモアが溢れ、同時にミステリーとしても成り立たせているあたりは思わず唸ってしまう出来の名作だ。鮮やかなクライマックスを魅せてくれる作品で、視覚的にも絶対に楽しめるので映画や舞台にこれほど向いている作品はないと思う。  

 

 

最後に

いかがだっただろうか?興味の沸いた作品が一つでもあっただろうか?

 

クローズドサークルは推理小説のロマンの結晶だと思っている。読めばワクワクしてくるし、結末に向かって一気に読み切ってしまう素晴らしいジャンルの小説だ。まだいくつも紹介したい作品はあるのだが、あまり長くなってもいけないので、それらはいずれ追記していきたいと思う。

 

長い記事を読んでくれた方に感謝を。

*1:リドル・ストーリー (riddle story) とは、物語の形式の1つ。物語中に示された謎に明確な答えを与えないまま終了することを主題としたストーリーである。-wikipediaより引用-

*2:ロナルド・ノックスが1928年に“The Best of Detective Stories of the Year 1928”(邦題『探偵小説十戒』)で発表した、推理小説を書く際のルール-wikipediaより引用-