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カフェで読みたくなる癒される小説【22作品】コーヒーでホッと一息つきたい時にどうぞ!

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カフェで癒しの時間を過ごす時に、そのパートナーとして一冊の小説があることほど素敵なことはない。

香ばしいコーヒーに鼻腔をくすぐられながら、一つの物語に没頭できることは、読書好きにとってこの上ない贅沢だ。

できれば、その癒しの時間に読む物語はむやみに人が死ぬような話ではなく、優しさと温かさを兼ね備えた柔らかい読み心地の癒される小説であってほしい。

 

そんな時間を皆さんにも味わっていただきたいので、今回は『カフェで読みたくなる癒される小説』を紹介していきたい。

 

 

ルール

  • 実際に読んで面白かった作品をまとめとして紹介(ランキングではなく順番はランダム)
  • 現在個別ページがない作品もいずれ個別ページを作成し、映画、ドラマ、漫画、アニメなど、他の媒体になっているなどの詳細情報はそちらに
  • 基本的にはおすすめしたい点をフォーカスする。気になった点は個別ページに書く。あらすじはamazonから引用させてもらう
  • ダラダラと長い記事なので目次を活用してもらえるとありがたい
  • 重大なネタバレはしないが、見たくなかったり長い記事読むのが面倒だったら目次で飛んで欲しい

 

 

猫を抱いて象と泳ぐ #小川洋子

猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)

「大きくなること、それは悲劇である」。少年は唇を閉じて生まれた。手術で口を開き、唇に脛の皮膚を移植したせいで、唇に産毛が生える。そのコンプレックスから少年は寡黙で孤独であった。少年が好きだったデパートの屋上の象は、成長したため屋上から降りられぬまま生を終える。廃バスの中で猫を抱いて暮らす肥満の男から少年はチェスを習うが、その男は死ぬまでバスから出られなかった。成長を恐れた少年は、十一歳の身体のまま成長を止め、チェス台の下に潜み、からくり人形「リトル・アリョーヒン」を操りチェスを指すようになる。盤面の海に無限の可能性を見出す彼は、いつしか「盤下の詩人」として奇跡のような棋譜を生み出す。静謐にして美しい、小川ワールドの到達点を示す傑作。

まずはカフェでゆったりと読みたい小説という言葉から僕が一番に連想する作品から。文字の羅列にこれほどまで視覚的な美しさを感じることが出来るとは、小説とはなんて素晴らしいのだろうと感動した小川洋子の傑作小説

読んでいる自分すら透明に感じられるような読み心地と言っても大げさではなく、ポーンを抱いてインディラと共にチェスという広く深い海へ沈んでいく主人公リトルアリョーヒンの人生が描かれていく。暖かいマスターとの時間、ミイラとの出会いと別れ。楽しさも悲しみも感じながら、チェスという名の宇宙を描く物語は終わるのが惜しくなるような素敵な物語だ。 

 

 

 

Presents #角田光代

Presents (双葉文庫)

私たちはたくさんの愛を贈られて生きている。この世に生まれて初めてもらう「名前」。放課後の「初キス」。女友達からの「ウェディングヴェール」。子供が描いた「家族の絵」―。人生で巡りあうかけがえのないプレゼントシーンを、小説と絵で鮮やかに切りとった12編。贈られた記憶がせつなくよみがえり、大切な人とのつながりが胸に染みわたる。

題名のとおり角田光代のプレゼントにまつわる短編集。大切な人に贈るプレゼントとは、物の形をした”気持ち”を贈る行為であることに気付かせてくれる本。個人的には『名前』『初キス』『鍋セット』がお気に入り。

特に『名前』という作品では、生まれた子供が初めてもらうプレゼントが名前であるという当たり前の盲点を突いていて、その大切さをもう一度感謝したくなる小編になっている。この作品は”人に贈ること”。そして”人から贈られる事”のどちらも本当に素敵な事であることを気づかせてくれる角田さんからのプレゼントのような気がする。ぜひ大切な人とカフェで過ごす時間の中でどうぞ。 

 

 

 

カフーを待ちわびて #原田マハ

カフーを待ちわびて (宝島社文庫)

「嫁に来ないか。幸せにします」「絵馬の言葉が本当なら、私をお嫁さんにしてください」から始まるスピリチュアルなほどピュアなラブストーリー。ゆるやかな時間が流れる、沖縄の小さな島。一枚の絵馬と一通の手紙から始まる、明青(あきお)と幸(さち)の出会い。偶然に見えた二人の出会いは、思いも寄らない運命的な愛の結末へ。第1回「日本ラブストーリー大賞」大賞受賞作品。

沖縄のゆったりとした独特の雰囲気が楽しめる恋愛小説。「日本ラブストーリー大賞」の受賞作品だが、主人公・明青とヒロイン・幸の恋愛は逢えなくてセツなくて…みたいな辛い恋愛ではないので微笑ましく読んでいられる。

ひどい仕打ちをした友人に文句も言わない明青の人柄も全てを受け入れる幸の優しさも、どちらもとても素敵なので、温かい気持ちで読めるこの本はカフェで読むにはピッタリだと思う。物語が終わった先にあるであろう困難と幸せの予感を感じさせる余韻ある終わり方も良く、人が幸せになっていく様子をゆったりと味わえる優しい作品。 

 

 

 

センセイの鞄 #川上弘美

センセイの鞄 (文春文庫)

センセイ。わたしは呼びかけた。少し離れたところから、静かに呼びかけた。ツキコさん。センセイは答えた。わたしの名前だけを、ただ口にした。駅前の居酒屋で高校の恩師・松本春綱先生と、十数年ぶりに再会したツキコさん。以来、憎まれ口をたたき合いながらセンセイと肴をつつき、酒をたしなみ、キノコ狩や花見、あるいは列車と船を乗り継ぎ、島へと出かけた。その島でセンセイに案内されたのは、小さな墓地だった――。40歳目前の女性と、30と少し年の離れたセンセイ。せつない心をたがいにかかえつつ流れてゆく、センセイと私の、ゆったりとした日々。切なく、悲しく、あたたかい恋模様を描き、谷崎潤一郎賞を受賞した名作。

アラフォーのツキコさんとアラセブ(70歳くらい)のセンセイが、大人とも子供ともとれるような恋愛をしつつ、二人だけの時間を過ごす様子が描かれている温かくも切ない作品。

この作品を構成している文章は、余分も不足もなく絶妙なバランスでできている。二人が一緒に過ごす穏やかでしっとりとした時間を味わうと、二人の人生に自分の人生を重ねて残された時間に対して焦る気持ちが湧いてくる。それと同時に隣にいる人をとにかく大切にしたい気持ちが湧いてくる優しい物語になっている。ラストは悲しみの波が押し寄せてくるので、お店で読むような時は注意が必要。 本当に素晴らしい作品だと思う。

 

 

 

西の魔女が死んだ #梨木香歩

西の魔女が死んだ (新潮文庫)

中学に進んでまもなく、どうしても学校へ足が向かなくなった少女まいは、季節が初夏へと移り変るひと月あまりを、西の魔女のもとで過した。西の魔女ことママのママ、つまり大好きなおばあちゃんから、まいは魔女の手ほどきを受けるのだが、魔女修行の肝心かなめは、何でも自分で決める、ということだった。喜びも希望も、もちろん幸せも……。その後のまいの物語「渡りの一日」併録。

カモミールの香りが本当に感じられるような作品。そして美しい自然と共に暮らす素敵なおばあちゃんとその孫のまいの生活が描かれる癒しの小説。

西の魔女とはおばあちゃんのこと。タイトル通り西の魔女は死んでしまうが、死ぬ間際に残したおばあちゃんの行動の強さと優しさ、そしてお茶目な遊び心に胸が締め付けられるような感動の波が押し寄せてくる。読むたびにおばあちゃんからまいへの溢れんばかりの愛情の深さが伝わってきて、美しい話を読めて良かったと感嘆できる一冊だ。

ゆったりと流れる時間や、子供の成長を眺め読むことで満足のいく読後感が得られるはずなので、成長したまいの姿が読める「渡りの1日」も是非。 

 

 

 

はるがいったら #飛鳥井千砂

はるがいったら (集英社文庫)

両親が離婚し、離れて暮らす姉弟。完璧主義の姉・園は、仕事もプライベートも自己管理を徹底しているが、婚約者のいる幼なじみと不毛な恋愛を続けている。体が弱く冷めた性格の弟・行は、寝たきりの愛犬・ハルの介護をしながら高校に通い、進路に悩む。行が入院し、ハルの介護を交代した園。そんな二人に転機が訪れ―。瑞々しい感性が絶賛された、第18回小説すばる新人賞受賞作。

寝たきりの愛犬・ハルと姉弟の何気ない日常の話。特別なことはまったく起きないが、気が付くとスラスラ読めてしまう読みやすさがある。たぶん飛鳥井さんの人物描写が素晴らしいのと、言語化しづらい人間の中間の感情を自然な形で伝えてくれるから読みやすいのではないかと思う。特に主人公の行の考え方や人付き合いの距離感からは絶妙な共感力を感じてしまう

読み終わると物事に対して「少しだけ熱くなってみようかな」みたいに前を向ける良作なので、少しだけ元気になりたい時に手に取ってもらいたいところだ。ちなみに気に入った台詞は園が言っていた「ちゃんと受け止めて、その後立ち上がるんだよ」。ちゃんと受け止めて…の部分がとてもいいと思う。 

 

 

 

アーモンド入りチョコレートのワルツ #森絵都

アーモンド入りチョコレートのワルツ (角川文庫)

ピアノ教室に突然現れた奇妙なフランス人のおじさんをめぐる表題作の他、少年たちだけで過ごす海辺の別荘でのひと夏を封じ込めた「子供は眠る」、行事を抜け出して潜り込んだ旧校舎で偶然出会った不眠症の少年と虚言癖のある少女との淡い恋を綴った「彼女のアリア」。シューマン、バッハ、そしてサティ。誰もが胸の奥に隠しもつ、やさしい心をきゅんとさせる三つの物語を、ピアノの調べに乗せておくるとっておきの短編集。

まさにカフェで読むにはピッタリの美しいタイトルの短編集。各小編では、幸せな瞬間が切り取られた文章が躍るように描かれているが、その素敵な瞬間は永遠ではないと気付かされて一抹の寂しさも覚えてしまう。それでも振り返ってみると、ほんの少しだけ自分自身にも覚えがあったりする共感力は、さすが森さんだなと感動してしまう。

劇的な事件が起こるわけではないけれど、チョコレートの様に甘く風味豊かでちょっとだけビターな物語になっている。ちなみに一番読んでもらいたい作品は『彼女のアリア』。ホットチョコレートとセットでおすすめ。 

 

 

 

カクレカラクリ An Automaton i… #森博嗣

カクレカラクリ An Automaton in Long Sleep (MF文庫ダ・ヴィンチ)

郡司朋成と栗城洋輔は、同じ大学に通う真知花梨とともに鈴鳴村を訪れた。彼らを待ち受けていたのは奇妙な伝説だった。天才絡繰り師・磯貝機九朗は、明治維新から間もない頃、120年後に作動するという絡繰りを密かに作り、村のどこかに隠した。言い伝えが本当ならば、120年めに当たる今年、それが動きだすという。二人は花梨たちの協力を得て、絡繰りを探し始めるのだが…。廃墟マニアの大学生とメカ好きのヒロインたちが挑む、カクレカラクリの謎。かつて天才絡繰り師が仕掛けたというその絡繰りは、いったい何のために作られ、そして、どこにあるのか。全編にわたって張りめぐらされた伏線、論理的な展開。謎解きに加えて、個性的な登場人物たちのユニークなやりとりも楽しい爽やかな青春ミステリィ。

サラリとした読み心地の森博嗣の青春ミステリー作品。120年前に生み出されたカクレカラクリの謎を解き明かすべく、大学生たちが鈴鳴村で調査をしていく。こういった村落にありがちな薄暗い伝承などはなく、誰かが死んだりもしないし誰かが傷つく大事件も起きない。あるのは爽やかな青春な雰囲気とロマン。そしてコーラがあるだけ

とんでもないお宝が眠っているわけではないのだが、それも含めてひと夏の物語としてとても楽しめる。カクレカラクリへのアプローチの仕方がとても現実的だったのでそこも森作品らしくて良いので、できるなら爽やかな風を感じられるテラス席でコーラを飲みながら読んでもらいたい1冊だ。 

 

 

 

蜜蜂と遠雷 #恩田陸

蜜蜂と遠雷

3年ごとに開催される芳ヶ江国際ピアノコンクール。「ここを制した者は世界最高峰のS国際ピアノコンクールで優勝する」ジンクスがあり近年、覇者である新たな才能の出現は音楽界の事件となっていた。養蜂家の父とともに各地を転々とし自宅にピアノを持たない少年・風間塵15歳。かつて天才少女として国内外のジュニアコンクールを制覇しCDデビューもしながら13歳のときの母の突然の死去以来、長らくピアノが弾けなかった栄伝亜夜20歳。音大出身だが今は楽器店勤務のサラリーマンでコンクール年齢制限ギリギリの高島明石28歳。完璧な演奏技術と音楽性で優勝候補と目される名門ジュリアード音楽院のマサル・C・レヴィ=アナトール19歳。彼ら以外にも数多の天才たちが繰り広げる競争という名の自らとの闘い。第1次から3次予選そして本選を勝ち抜き優勝するのは誰なのか?

何の小説かを聞かれたら「コンクールでピアノ弾く話」としか答えられないのがもどかしくなるような傑作小説。音楽という形のない存在を、本当に聞こえてくるかのように読者に伝えてくる作者の表現力に畏怖の念を覚える。

作中での天才の描き方も素晴らしく、登場する天才の表現を読むとその素晴らしさに鳥肌が立ち、その天才を超える天才が登場してまた鳥肌が立っての繰り返し。そして気が付けば物語が終わってしまうくらい没頭してしまう確固たる世界観を持った作品だ。面白すぎてカフェで注文した飲み物が冷めないようにご注意を! 

 

 

 

 

廃墟建築士 #三崎亜記

廃墟建築士 (集英社文庫)

ありえないことなど、ありえない。不思議なことも不思議じゃなくなる、この日常世界へようこそ。七階を撤去する。廃墟を新築する。図書館に野性がある。蔵に意識がある。ちょっと不思議な建物をめぐる奇妙な事件たち。現実と非現実が同居する4編収録の最新作。

建物に不条理さを加え、ノスタルジックでコーティングしたような三崎亜記のファンタジーな短編集。僕が建築に携わる職業ということもあるが、空想の話を現実的な感性で突き詰めていくことで生まれる作品たちは他の作家にはない独特の世界観を持っている。

個人的には最初から廃墟にするための廃墟を建てる建築士が登場する表題作『廃墟建築士』が、退廃的でやるせなくて、それでいてどこか温かみも感じられて好みだった。雨の日の午後にカフェで読んだら浸れる作品だと思う。ちなみに、単行本はカバーがトレーシングペーパーのようになっていてワクワクするので建築業界の方は是非注目してもらいたい。 

 

 

 

君は素知らぬ顔で #飛鳥井千砂

君は素知らぬ顔で (祥伝社文庫)

文具メーカーで働く由紀江は耕次と付き合って半年。気分屋の彼は機嫌が悪くなると手がつけられない。耕次の怒りを理不尽に思いながらも言い返せない由紀江。次第に彼の態度はエスカレートしていき……。(「今日の占い」より) とある女優の成長を軸に、様々な時代を生きる人々の心のささくれを丁寧に描いた六編。 最後に新鮮な驚きと爽やかな感動が待っている、連作小説の傑作!

日常生活の小さな心のささくれと、後に生まれるの心のかさぶたを文字にして読ませてくれる飛鳥井作品。女優・ゆうちゃんの成長をすべての話の軸に据えつつ連作短編の構成をとっており、各話の主人公たちの心の在り方や物事の捉え方は、感覚的に近く感じられるのでスイスイ読めてしまう

人は存在しているだけで誰かに影響を与えているという”当たり前”を再認識できる素敵な本なので、逃げたくない時、負けたくない時など、踏ん張って立ち上がりたい時に読んで欲しい。きっとあなたの力になってくれると思う。 

 

 

 

 

博士の愛した数式 #小川洋子

博士の愛した数式 (新潮文庫)

[ぼくの記憶は80分しかもたない]博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていた──記憶力を失った博士にとって、私は常に“新しい"家政婦。博士は“初対面"の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。数字が博士の言葉だった。やがて私の10歳の息子が加わり、ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに変わった。あまりに悲しく暖かい、奇跡の愛の物語。第1回本屋大賞受賞。

80分で記憶を失う博士と私とルートの物語。『猫を抱いて象と泳ぐ』でも感じたが、小川洋子さんの作品は本当に綺麗。汚くても綺麗という印象を受ける不思議さがある。数学という美しい静けさを好む博士は同時にルートに対する愛情の温かさでとても魅力的に描かれている。

博士は数字という無機質な世界を生きているにもかかわらず、誰よりも血が通っている魅力的な人物であるのが面白いところ。また矛盾した表現かもしれないが、未亡人の義姉も汚くて人間らしくて美しいから不思議だ。これほど静かに温かい作品なのだから、ゆったりとした喫茶店で温かく静かに読んでもらいたい一冊。 

 

 

 

先生と僕 #坂木司

先生と僕 (双葉文庫)

都会の猫は推理好き。田舎のネズミは…?―ひょんなことから大学の推理小説研究会に入ったこわがりな僕は、これまたひょんなことからミステリ大好きの先生と知り合う。そんな2人が、身のまわりにあるいろいろな「?」を解決すると同時に、古今東西のミステリ作品を紹介していく連作短編集。事件の真相に迫る名探偵は、あなたをミステリの世界に導く名案内人。巻末には仕掛けに満ちた素敵な「特別便」も収録。

坂木司が贈る柔らかいライトミステリー・・・であるのと同時にミステリーの紹介本。テイスト的には「引きこもり探偵シリーズ」に近い印象を受ける。坂木作品にはよく優しいお人好しキャラが登場するが、その人物がとてもBL的なので人によっては受け付けないかもしれない。

しかし、それを抜きにして優しさと驚きに満ちた癒され系ミステリーなのであーだのこーだの言わずに読んでみて欲しい。なんとなく誰かい優しく出来るようになる素敵な本なのだから。 

 

ちなみに同氏の別の作品である『ワーキング・ホリデー』『ホテルジューシー』を読んでおくと最後の短編がもう一段階楽しめる。100%楽しむために本書の前に読んでおくことをすすめたい。 

 

 

あと、続編として『僕と先生』という作品も発売されているので気に入ればぜひ。 

 

 

 

古道具 中野商店 #川上弘美 

古道具 中野商店 (新潮文庫)

東京近郊の小さな古道具屋でアルバイトをする「わたし」。ダメ男感漂う店主・中野さん。きりっと女っぷりのいい姉マサヨさん。わたしと恋仲であるようなないような、むっつり屋のタケオ。どこかあやしい常連たち……。不器用でスケール小さく、けれど懐の深い人々と、なつかしくもチープな品々。中野商店を舞台に繰り広げられるなんともじれったい恋と世代をこえた友情を描く傑作長編。

この作品の一番の魅力は中野商店から醸し出される雰囲気だ。古道具の中野商店の人達は良く言えばゆるくてほのぼのだし、悪く言えば真剣みにかけるともとれるが、お店から生まれてくる空気はのんびりと透き通っていて心地よいのだ。

内容を冷静に読めば、熟年恋愛だとか不倫だとか、けっこうディープな恋愛ばかりをしているが、不思議と不潔さを感じないのは中野商店の人達の人間的な魅力のおかげなのだろう。緩い空気に点在している危うい人間模様は、ゆったりとした時間に感じる小さなスパイスとして最適だ。 

 

 

 

カラフル #森絵都

カラフル (文春文庫)

「おめでとうございます! 抽選にあたりました! 」 生前の罪により輪廻のサイクルからはずされたぼくの魂が天使業界の抽選にあたり、 再挑戦のチャンスを得た。 自殺を図った中学三年生の少年、小林真の体にホームステイし、 自分の罪を思い出さなければならないのだ。 ガイド役の天使のプラプラによると、父親は利己的で母親は不倫しており、兄の満は無神経な意地悪男らしい。 学校に行ってみると友達がいなかったらしい真に話しかけてくるのは変なチビ女だけ。絵を描くのが好きだった真は美術室に通いつめていた。 ぼくが真として過ごすうちに、しだいに家族やクラスメイトとの距離が変っていく。 モノクロームだった周囲のイメージが、様々な色で満ちてくるーー。 高校生が選んだ読みたい文庫ナンバー1。累計100万部突破の大人も泣ける不朽の名作青春小説。

軽い文体と読みやすい表現で描かれた森絵都さんの青春小説。自殺を図った真の身体に一時的に入りこみ、自分の罪を思い出さなければいけないという不思議な生まれ変わりのお話。

生まれ変わりや命をテーマにしているのに、作品が香り立つ雰囲気が脱力気味なので重苦しくない読書が出来るはず。読みやすくて、読んでいる時間を忘れさせてくれるのも魅力だし、自分の生き方を客観的に眺める事が人生を生きる為の大切なポイントであることを教えてくれるので、 友達関係に少し疲れてしまって一人でカフェに避難している中高生におすすめしたい。

 

 

 

少し変わった子あります #森博嗣

少し変わった子あります (文春文庫)

失踪した後輩が通っていたお店は、毎回訪れるたびに場所がかわり、違った女性が相伴してくれる、いっぷう変わったレストラン。都会の片隅で心地よい孤独に浸りながら、そこで出会った“少し変わった子”に私は惹かれていくのだが…。人気ミステリィ作家・森博嗣がおくる甘美な幻想。著者の新境地をひらいた一冊。

現実とも幻想とも言い切れない狭間の世界観で展開される森博嗣作品。書かれている内容は、所作が美しい少し変わった女の子とご飯を食べるだけ。ただそれだけ。それなのに読んでいると不思議な浮遊感を感じたり、矛盾と秩序と美しさで満たされていくような時間を過ごせる幻想的な作品になっている。

独特な作品なので読む人を選ぶかもしれないが、幻想的な小説に耐性がある人には是非オススメしたい。作品が独特なので、やはり少し変わった雰囲気の喫茶店なんかでページをめくってほしいところ。ちなみに僕は下世話なので、作品に登場するお店のシステムが高級デリバリー風俗のように感じてしまった、笑。人と食事をすることで、孤独が増幅されるというのは心の隅っこで理解できる。 

 

 

 

神去なあなあ日常 #三浦しをん

神去なあなあ日常 (徳間文庫)

美人の産地・神去村でチェーンソー片手に山仕事。先輩の鉄拳、ダニやヒルの襲来。しかも村には秘密があって…!?林業っておもしれ~!高校卒業と同時に平野勇気が放り込まれたのは三重県の山奥にある神去村。林業に従事し、自然を相手に生きてきた人々に出会う。

ドタバタのお仕事小説のようで、後半になるにつれて山で生きるとはどういうことなのかを考えさせられる癒しの小説。主人公の勇気と共に徐々に神去村の「なあなあ」な空気や森の環境に触れていく感覚が読んでいて気持ちよく、森や水や雲や山と同じように受け入れられている神去村の神さまの存在を自然と受け止めている自分に気が付く

登場人物たちそれぞれが優しくて、なあなあでずっとこの作品の世界に浸かっていたくなる謎の中毒性のある一冊。ホント、ずっとこの世界にいたくなるんだよね。ぜひ、新緑の季節に田舎のカフェテラスで読んでもらいたい優しく楽しい作品。 

 

 

気に入った方は、続編の『神去なあなあ夜話』もぜひ。 

 

 

 

いつかパラソルの下で #森絵都

いつかパラソルの下で (角川文庫 も 16-5)

柏原野々は天然石を売る店で働く25歳の独身女性。厳格な父の教育に嫌気がさし、成人を機に家を飛び出していた。その父も亡くなり、四十九日の法要を迎えようとしていたころ、生前の父と関係があったという女性から連絡が入る。世間一般にはありふれたエピソードかもしれないが、柏原家にとっては驚天動地の一大事。真偽を探るため、野々は父の足跡を辿るのだが…。森絵都が大人たちの世界を初めて描いた、心温まる長編小説。

何気ない日常に美しい光を当てて輝かせるのが森絵都作品の素敵なところだと思っている。この作品もありふれた出来事のようで、少しだけ特別な感じが心地よい。

辛いことや考えても仕方のない事に人生の時間を費やすよりも、今生きていている時間を今生きている人間と共に楽しんだ方がずっとずっと幸せであることを教えてくれる。カフェというより、家族や仲間と海の家のパラソルの下でビールでも飲みながらイカを食べ、ぼーっと海を見ながら読んでもらいたい作品かもしれない。 

 

 

 

わたしのグランパ #筒井康隆

わたしのグランパ (文春文庫)

中学生の珠子の前に、ある日、突然現れたグランパ(祖父)はなんと刑務所帰りだった。だが、侠気あふれるグランパは、町の人からは慕われ、珠子や家族をめぐる問題を次々と解決していく。そしてグランパの秘密を知った珠子に大事件が襲いかかる。「時をかける少女」以来、待望のジュブナイル。読売文学賞受賞作。

中学生の女の子と刑務所帰りの祖父(グランパ)が出会うことで生まれる非日常の物語。薄い本だけど不思議と印象に残っている。とにかくグランパの存在感が圧倒的で、家族や町の問題ごとを片づけていく様子はとにかく格好いい。

グランパは人間としての器が大きくて懐も深いので、起きている出来事はドスが効いているのに、物語から漂ってくる雰囲気は柔らかくて優しくて温かい印象になっている。渋くて格好いいグランパを楽しむためにも、和風カフェで番茶と共に楽しみたい作品。 

 

 

 

カツラ美容室別室 #山崎ナオコーラ

カツラ美容室別室 (河出文庫)

こんな感じは、恋の始まりに似ている。しかし、きっと、実際は違う。 カツラをかぶる店長・桂孝蔵の美容院で出会った、淳之介とエリ、梅田さんたちの交流のゆくえは? 大人の事情、大人の友情に迫る。各紙絶賛、話題の最新作!

『人のセックスを笑うな』で有名な山崎ナオコーラさんの作品。言葉で伝えにくい感情をユニークな表現で伝えてくれたり、言葉にできない感情を言葉にできないまま伝えてくれているような不思議な文章で書かれている。

特に大きな起伏のある物語ではないが、普段の生活の中でゆれる心とそれを見る冷静な心が淡々と状況を伝えていて、ちょっと淋しく、ちょっと温かくて、何となく時間が空いている時にまた読みたくなるような本だ。 

 

 

 

蒼林堂古書店へようこそ #乾くるみ

蒼林堂古書店へようこそ (徳間文庫)

書評家の林雅賀が店長の蒼林堂古書店は、ミステリファンのパラダイス。バツイチの大村龍雄、高校生の柴田五葉、小学校教師の茅原しのぶ―いつもの面々が日曜になるとこの店にやってきて、ささやかな謎解きを楽しんでいく。かたわらには珈琲と猫、至福の十四か月が過ぎたとき…。乾くるみがかつてなく優しい筆致で描くピュアハート・ミステリ。

100円以上の売買をすれば、店の奥で珈琲が振る舞われる素敵な古書店のミステリー。ミステリー部分は人が死なない日常の謎だが、その謎を解くことよりもミステリーの紹介本としての側面が強いので、ミステリー好きの人間が珈琲を飲みながら癒されるための本になっている

短編形式をとっているが全体を通して一つの優しい物語としても読めるのでゆったりと楽しんでもらいたい。にしてもなんて素晴らしい古本屋なのだろう。カフェで読みたいというよりも、こんな古書店が近くにあればいいのになぁと願ってやまない一冊。 

 

 

 

幸せの条件 #誉田哲也

幸せの条件 (中公文庫)

恋も仕事も中途半端、片山製作所勤務の「役立たずOL」梢恵に、ある日まさかの社命が下された―単身長野に赴き、新燃料・バイオエタノール用のコメを作れる農家を探してこい。行く先々で断られ、なりゆきで農業見習いを始めた24歳に勝算はあるか!?働くこと、生きることの意味を問う、『ジウ』シリーズ著者による新境地。

「あぐもぐ」という農業の会社で働くことになったOLが爽やかに自分を探しあてていく小説。エネルギー問題や食料自給率問題や今の農業の現状を、主人公の梢恵に説明する形で読者に伝えてくれる本なのでとても勉強になる。また、同時に一人のダメOLが農業を通して仕事の喜びや生きていく事の大変さを身を持って体験していく成長物語としても楽しめるので晴れやかな気分で読んでいけるのは素晴らしい

また、梢恵が徐々に農家に受け入れられていく様子は、読者自身の姿と重なり、自分も「あぐもぐ」の一員になったかのように温かさを感じられる素敵な作品になっている。田舎風カフェで読んだりしたら、絶対にテンションが上がると思う。 

 

 

 

 

最後に

日々の忙しい日常の中でも、カフェで本を読んでいる時は、なんだか幸せな気持ちになれる。

どうしてカフェで本を読んでいると癒されるのだろう。

物語の世界に入りこんで喜んだり悲しんだり、時には元気になれたりするのは何故なのか。


きっとそれは、仕事の辛いことも、家族の揉め事も一時的に忘れて、自分の好きな時間に浸れる”小さな非日常”がそこにあるからではないだろうか。

 

この記事で、その”小さな非日常”のお手伝いが出来ればうれしく思う。