女子社員のキムさん
ウチに入った新入社員の女の子。その名はキムさん。
新宿のスナックのママ並の社交辞令の技術を持っているにもかかわらず、カラオケに行くと尋常じゃなくテンションが下がる可愛らしいサメみたいな顔をした女の子です。
※写真はイメージ。そしてこんなにかわいくはない。
年齢は20歳という出世魚で言う所の『ハマチ』くらいの若さで、非常に初々しくカワイイのですが、僕は若い女の子がどうも苦手でどうにもこうにも扱いが難しいんですよね。
と言うのも、僕は女の子特有のキャピキャピを聞くと苛立ちが募ってしまい、受身をとらせないスピードで一本背負いをキめたくなる癖があるからなんです。しばらく起き上がれないような衝撃を与えてしまいそうになるんですよね、てへ。
けれどね、せっかく同じ会社になったんだから、やっぱり仲良くしたいじゃないですか。だから、サメみたいな顔をしているキムさんに誕生日プレゼントを買おうと思ったのですよ。
プレゼント
ということで、先日ちょっと小洒落た雑貨が売っているファニーな店に行って、ビビりながらプレゼントを探してきたんです。涙ぐましい努力をする先輩ですね。
明かにヒゲ指数の高いおっさんな僕が女性が多いキャピキャピした空間に飛び込んでいった訳ですよ。本来ならばそれだけで、職務質問は避けられません。そんな中、僕は必死に店の商品やら店の客のおっぱいやらを物色していたんです。
挙動不審に店内を動き回っていると、ハッとする程よい物が僕の目に飛び込んできたのですよ。あのね。テディベアが3Dになって浮き出てくる可愛らしいメモ帳を見つけたんですね。
『これだーーーー!!』って思いましたね。
うん。本当に可愛らしいメモ帖なんですよ。新入社員だからメモはたくさんあってもいいでしょう。それに何より値段が安い。好きでもない女の子にプレゼントをするに当たって安さは最重要です。本当に素晴らしいプレゼントです。
僕はその包みをそっと手に取り、満足そうに眺めました。
するとね。その包みの大きさが丁度、エロDVDと同じくらいなんですよ。
本当にシルエットだけで言ったら、僕ほどのエロDVDグラディエーターでも、一瞬見間違えるほどのそっくりさなんです。で、僕は閃いたんです。
そうだ!ついでに、これでセクハラしよう。と。
と言うことで、女子社員と仲良くなったり、セクハラする為の孤独な男の闘いが幕をあけたのです。
作戦始動
今回のプロジェストの目的は、プレゼントを贈り、セクハラをし、かつ好感度をあげるという夢の三段活用です。実際に行った行為を書いていきます。
その1~自然な会話~
まずはキムさんの社交辞令技術を利用して、話を誘導していきます。朝、会社で二人きりの時に、極めて自然にエロビデオの話題をキムさんにふります。
「おはよう、キムさん。今日も暑いね」
「おはようございます~。ホント、ムシムシしますよねぇ、嫌になっちゃう」
「ね~これじゃお互いオチオチ・・・エロビデオも見れないよね」
極めて自然です。
気候の話からナチュラルにエロビデオの話に移行してしまいました。まさに出来る男の会話術。
「え~!!ちょっと~私はそんなの見ないですよ~」
「え~本当に?(笑)けど興味とかないの?」
「ん~・・・ちょっとだけあります」
「じゃあ貸してあげようか?」
ここで、キムさんの社交辞令を待ちます。キムさんは本気で社交辞令を連発するタイプの子なので、こんなセクハラ系トークでも必ず見事な社交辞令を見せてくれるはずです。
「え~いいんですか~?ありがとうございます~(笑)」
――――捕らえた!!
その2~セクハラ~
やっぱり言いましたよ。バカだなぁ。もう逃がしません。
さぁ。胸を張ってセクハラをしましょう。
「そう。貸して欲しいんだ。わかった。じゃあハイこれ」
「え?」
「ホラ、見たいんでしょ?今偶然持ってるからさ、ハイ」
と、一見エロDVDに見える包み(中身はメモ帳)を渡しました。
「・・・え・・・?」
本当に持ってるとは思ってなかったであろうキムさんは、流石にリアクションを取り損ねます。
「ほっ本当に持って来てたんですか・・・」
「うん。たまたまね。見たいって言ったじゃん。いいよ、貸すから」
「いや・・・そうですけど・・・本当に持ってるなんて思ってなくて・・・。ごめんなさい・・・」
「別に怒ってないけどさ、じゃあ帰ってから見てね。会社じゃ開けちゃ駄目だよ」
「・・・え・・・あ・・・はい・・・わかりました」
顔を真っ赤にして受け取るキムさん。恥かしそうにしているキムさん。
あのね。最低だという事を理解した上で言いますよ?もう完全に理解した上で言いますよ。え~・・・こういうの大好き。こういうエロDVDの企画物とか大好き。
見事な作戦成功で、こればっかりはやめられねぇぜ、とほくそえみます。
これ、一見すると変態というか犯罪者みたいですが、冷静に考えりゃ中身はただのメモ帳ですからね。中身がティッシュだったら裁判で負けそうだけどメモ帳だからたぶんセーフ。
その3~仲良くなる~
で、このプロジェクトのもう1つの目的である『仲良くなる』の説明なのですが、今日はいきなりのセクハラで動揺して顔を真っ赤にしていたキムさんですが、帰ってから、たぶんその包みを開けますよね。
そうしたらですね。中身はなんとエロDVDじゃなく可愛らしい誕生日プレゼントが!
そこで初めて自分がからかわれていた事と、プレゼントを貰ったという喜びを感じる事ができる訳ですよ。
んで、たぶん次の日にこんなことが起こります。
『あ、先輩おはようございます』
『ん、ああ、おはよう(ちょっとそっけない感じで)』
『あの・・・昨日の・・・昨日のプレゼント・・・すっごく嬉しかったです』
『そっか、それは良かった(瀬戸康史風の笑顔)』
『けど、先輩ったら、あんな渡し方するんだもんっ。本当にいぢわるですよぅ(笑)』
『あはは、けどもっとエッチなプレゼントの方が良かったかな?(笑)』
『・・・』
『じょ冗談だよ・・・黙るなよ(汗)』
『・・・良かったです』
『・・・え!?』
『先輩からなら・・・もっとエッチなプレゼントでも良かったです!!』
『・・・キムさん・・・』
『やだ!?わたし何言ってるのかしら!!もうバカバカ・・・』
『キムさん・・・(潤んだ瞳で見つめる)』
『パイセン・・・』
『らぶ、ふぉーえばー』
『いやん』
うん。絶対こうなるに決まってます。決まってます。こういうの書くの大好き。大輔。
だから、メモ帳を渡した日は意気揚揚とお客さんの所まで打合せに出かけたんですね。客と話している最中も『明日の朝はラブワゴンだぜ!』とか良く解らない事を思っていたわけですよ。
その4~現実~
んで、夕方帰ってきたらどうでしょう。なんか、男の同僚がこっち見てニヤニヤしてるんですよ。あと女子社員の視線が妙に冷たいんですよ。
(はて?鼻毛でも出てるのかな?)
なんて軽く考えていたらとんでもない!!なんとキムさんが、
「朝一番で男性の先輩からエッチなビデオを渡されて困ってるんですー」
とか会社中に振れまわったらしいんです。アホか!!そんなん同僚に言うなや!!僕をクビにする気か!!
これじゃあ僕はもう完全にセクハラ親父じゃないですか。いや、実際にセクハラ親父なんですが、実際にはセクハラ親父ではないというか、ああっ!なんかこう立場が難しいっ!!
何にしてもあんまりです!
今回の件で社会的立場を追われそうな僕。ウィットとエロチズムに富んだ素敵なプレゼントの渡し方も出来ない現代社会を悲しく思いつつも、単純にクビになったらハローワークいかなきゃなぁ・・・なんて心配をしている状態でした。
結局
結局、夜になってからキムさんは包みを開け、普通のプレゼントを貰った事に気付き、計画通り仲良くなるプロジェクトは成功したのですが・・・
・・・うん。なんかキムさんは周りの誤解を解く気はないようです。
僕は何故かずっと、
『新入社員に無理やりエロビデオを貸した男』
のままなんです。いやいや、頼むよ、キムさん。
ホント、クビになるからさ。