フォレストラバー

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君の名はタクヤ

無駄に長いミーティング最中に明智君からメールが届き、テーブルの下でガラケーを開く。


[週末予定通りでOK?]

 

当時出会い厨だった私達は、週末のカップリングパーティーに参加することになっていた。
仕事が激務だったので気乗りしなかったものの、リフレッシュも必要と即返信。

 

[オーケー!]


顔を上げると上司が先週と同じ話をしてる。

私は窓の外に目をやり、話を右から左へ受け流す。
窓の外でゆっくり動く雲のように、週末へのモチベーションが徐々に高まっていくのを確かに感じていた。

今度こそ。。。

 

ー週末ー

クリスマスムード漂う銀座に私達は降り立った。
私は着慣れないジャケパンスタイル、明智君もタートルネックにジャケットという“ひとつ上の男”スタイルにオールバックで気合充分。

事前に場所を何度も確認していたので、迷うことなく会場へ向う。
道中「あの人達参加者かな?」と2人で話す。

これこれ。
参加前のウキウキに勝るものはない。
昨日まで仕事で消耗しきっていたのが随分前のように感じる。

今日から俺らはシティーボーイ。
帰りは毛先を遊ばせた美女が隣にいる、、はず。

 

会場入りするとライバルとなる猛者共が会場内を彷徨っていた。
出席確認のためスタッフの元へ行き、予約してくれた明智君がこうスタッフに伝える。

 

「えーっと、予約した、、、マスダです」 

 

ん?マスダ?君の名は明智だろ?
そう思ってると、明智君はそのまま用紙にフルネームを記入する。

 

マ ス ダ タ ク ヤ

 

マスダタクヤ?
当然あの人の顔が浮かぶ。

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思わず吹いてしまった。
マスダは理解できる。
問題はタクヤ。

まさかキムタクの名をこの場で使うとは…

伏線はあった。
カラオケでSMAPの歌をみんなで歌うと、明智君はキムタクのパートを当然のように担当していたし、「ちょ待てよ」もやたらと多用していた。
面白かったのでスルーしていたが、まさかここで出ようとは…

 

ちなみに、私の名前は実名で登録してあった。

「俺だけ本名かい笑。てか、なんでタクヤ?」

「マースタクゥ〜♪」 

ダメだ。
ハイになってる時の明智君に何を言っても無駄。
まして今日はオールバック。
勝負の日だ。

こうして私とマスタクはカップリングパーティーに参加した。

カップリングパーティーは前後半に分かれており、前半は女性が壁際に座り、男性がその内側を時計回りで回る。話す時間は1回3分で、終わったら男性が隣の席に座るという流れ。

男女比が半々ならずっと話すことになるが、実際はそうでない場合が多く、無駄に休憩を挟んでしまうことも多々ある。私達が参加した会も男6.5:女3.5ぐらい。

私とマスタクは一緒に並んだので、一人が話してればもう一人はその様子を伺うというミス席チョイスをしてしまった。

しかし、今日のマスタクは違う。
私が盛り上げられなかった女性も「ハハハ」と楽しそう。

会話を盗み聞きすると、どうやら女性が「タクヤ」に引っ掛かり、便乗したマスタクが「ちょ待てよ」のギャグをしてウケるという流れ。最初はしつこいと思ったけど、何度も聞いてるとそれっぽく聞こえてくるから不思議。


【CM】 富士通 FMV 交通事故予知篇 木村拓哉 30s

前半戦が終わると、話した中から気に入った女性の名前を3名書き、それをスタッフに提出する。

しばらくするとスタッフから「◯◯番、◯◯番…」と自分の番号を書いてくれた人を告げられる。つまり「あの子がいいって言ってまっせ」と。

そのことを踏まえた上で後半戦が開始となる。
後半はフリータイムなので指名がなくても話にいけるが、当然ビジュアルがよくて若い人の周りには沢山の人が囲む。テレビのお見合いパーティーで見慣れた光景がそこには広がっていた。

その時に一番人気だった女性には当然男がわんさか集合していた。
実は私も一位に指名している。
そしてマスタクも。

「俺ちょっとあの子行ってみる」 

「ちょ、待てよ(使っちまった…)」

「このままじゃ帰れないっしょ?」 

私の制止を振り切ったマスタクが彼女の元へ向かい、話しながらジェスチャーで何かを伝えている。恐らく「ちょっとあっちで話しませんか?」と。こういう時の行動力は私なんかより全然ある。

そして二人きりのトークに持ち込み、時折オールバックにした髪を触りながらピザを食べつつ談笑していた。私も別の女性と数名話したが、その間マスタクは彼女をキープし続けた。

そして後半戦も終了し、いよいよ結果発表。

 

 

しかし・・・

 

 

司会者から発表された番号に私達は含まれてなかった。
私は当然の結果だ。それは、後半戦が終わった後に相手の番号を書く用紙を空白で出していたから。カッコつけた訳ではなく、特にピンとくる女性もいなかったので今回は早々と諦めた。

隣を見るとマスタクが呆然としている。
本人も手応えを感じていただけに残念ではあるが、ここでは結果が全て。

「あーマジ残念。。。」  

「キャバでも行くか?」とマスタクを労い、私達は夜の街へ消えた。

 

マスタクに終わりなし

銀座のパーティー以降、かなりの確率で“マスダタクヤ”は出てきた。

夜のお店、合コン会場、オーピーパブの予約。実名を出したくない時は決まって明智君はマスタクに。

徐々にタイミングも予想できるようになってきた。

・オールバック
・女性と話す機会がある
・初対面
・行き慣れてない街

この条件が揃うとマスタクの出現率が上がっていく。
不思議なのが、マスタクになると明智君は私の知ってる明智君ではなくなる。

強気で大食いでジェスチャーも大げさになっていく。
名前でパワーを貰っているのか単なる照れ隠しか。恐らく後者だろうが、初対面の人には有効な手であったことも確か。

でも、不思議と悪い気はしなかった。
それは明智君が輝いていたから。

「ちょ待てよ」を持ちネタのように使い、多くの女性を笑わせた。
マスタクが明智君に与えたものは計り知れない程大きく、そして偉大だ。

名前は嘘だけど、相手に与えたものは事実。
アレコレ入れる立場ではない。 

 

2017年現在

明智君から出会いや結婚などの報告は未だに届いてない。
「ちょ待てよ」は、こっちが言いたくなる台詞になってしまった。

 

でも、私は待っている。
いつの日かまた「ちょ待てよ」を聞ける日を。

 

みんなが待っている。
いつの日か「渋滞のタクシィーもぉ〜」を、本家よりもセクシーにのけぞりながら歌うシーンを。

 

そしてお店が待っている。
明智君がまたオールバック姿で好みの嬢と同伴出勤する日を。

 

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