地元のイケてる男女が時を経て結ばれたラブストーリー

僕らの地元は都会でもなければ田舎でもない。そんな中途半端な環境が中途半端な人材を育み、中途半端な恋愛をさせてきた。はみ出し者は嫌われ、パスタのことをいつまでもスパゲッチーと呼び、おにぎりの具は鮭とおかか以外を知らない。

しかし、そんな中途半端な地元にも垢抜けている人材はいた。男なら容姿端麗、話は面白くスポーツ万能なサッカー部の大倉君(仮名)。私は大倉君のことが特別に嫌いというわけではないが、どちらかと言えば嫌い、嫌いグループの中では年に数回ベスト3にランクインしちゃうかな?程度の嫌い加減だ。

そんな大倉君は中学3年の頃に2年の子と付き合うようになる。大倉君は得意気に「会えばキスばかりしちゃってる笑」「俺キス魔みたい笑」という年下の唇ゲッチュウ自慢が多く、それ故に『お前は嫌いベスト3にランクインしてるんだぞ!』という警告を与えられなかった自身の未熟さを嘆くばかり。そんな大倉君だが、中学を卒業して以降の情報はほぼ知らずにいた。

女性では森山さん(仮名)。森山さんは我らがアイドルの下田エリーと同じソフトボール部でピッチャーを任されていた女性だ。森山さんの場合は、どちらかと言えば高校デビューに近く、高校生になって急激に垢抜けた。スカートは短くなり、握るボールはソフトからハード(おキャン玉)に、そして妖艶さを増していく。森山さんと同じ高校へ進学した地元の同級生から「森山さんモテてるよ」という情報も得ていて、そりゃそうだろねと。

それから10年以上経過し、大倉君や森山さん含む地元の同級生数名とFacebookで繋がっていく。地元パワー恐るべしで、大して仲良くなかった人からも申請が届く日々に驚いていた。断る理由もないので申請を承諾し、以降は寝る前に”友達”の投稿をチェックするという下衆な趣味がスタートする。

Facebookを見ていると大倉君の場合はとりあえず流行ってるからアカウントだけ作ったけど、更新頻度は低い。森山さんの場合は仕事やプライベートなどの投稿が多く更新頻度も高め。

そしてFacebookで繋がって数ヶ月後、大倉君と森山さんが一緒に写っている写真が多いことに気付く。最初は他にも知っている顔が見えたので地元の集まりかな?と思っていたが、幾つかの投稿を見ていると、単なる友達ではないということが分かった。

2人旅行、ディナー、クリスマス、クリちゃん。カップルが盛り上がりそうなイベントになると2人きりの投稿が増え、コメント欄を覗くと2人を茶化すコメントも見つかる。意外だった。互いに旨みばかりを得てきたジモティー同士が時を経て結ばれるとは。

2人のウザい投稿を見ていると嬉しくもなった。森山さんとは大倉君と交際する前にご飯へ行く機会があり、婚活中で街コンへ参加しては消耗していたようなので、納得の答えに辿り着いてくれたことにホッとした。例え相手が大倉君でも。

交際確認から1年後、2人は入籍した。市役所で婚姻届を2人で持ち「未熟な私達ですが、これからも宜しくお願いします」というベッタベタな展開には苦笑いしかなく、地元で垢抜けた2人が地元で結ばれるという地元っぽい展開はただただ微笑ましい。

共に幾人もの唇を奪い奪われ、接点というか接着し、越えた夜の数は我々愚民どもの数を幾ら足そうが追いつかない。そんな2人が結ばれたのだ。多くの人を愛して辿り着いた先に見つけた景色がどうであろうと、地元同士が結ばれたという事実は喜びしかない。その2人に対して『妥協した笑』と揶揄する者も出てくるだろうが、そんなこと気にせずに妥協なき愛を貫いて欲しいと願った。まあ、妥協なく突いてはいるだろうけど。

先日、2人の子供が産まれた。愛の結晶、地元フュージョン、地元Vゴール。赤ちゃんの名前は分からないが、2人に似て可愛らしい。大倉君はイクゥ↑メンからイクメンへとなり、よいパパとなってくれることだろう。森山さんは元々子供好きということもあり、面倒見のよいママとなるだろう。これからも引き続き注目していきたい。

こうして大倉君&森山さんのラブストーリーを見ていくと、私は2人のことが結構好きなんではないかと考えてしまう。いや、多分好きなんだろう。中途半端だと思っていた地元も悪くない。2人の熱い投稿にはそんなメッセージが隠れているような気もする。

と、ここまで全てFacebook経由で知った。一度ぐらい直接会って祝辞の言葉や地元の名産品などを渡したいところである。しかし、プライベートでの付き合いは一切ない。そんな時、今夏地元の同窓会があるかもしれないという情報を得た。まだ確定ではないが、既に2、3度しょーもない同級生が集まった実績があり、開催される可能性は高い。

気になる参加者だが、今までの同窓会にも参加したしょーもないメンバーは集まるとして、しょーもない大倉夫妻も来るだろうか?ということに注目している。しかし、今まで散々避けてきた同窓会にどの面下げて参加するべきだろうか。悩みは尽きない。とりあえず今は【妻が同窓会でNTR】系作品を見て、自身のソフトボールのほとぼりを冷ましたい。