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朝井リョウ『学生時代にやらなくてもいい20のこと』感想文:非リア充アピールをしてるけどアンタは立派なリア充だよって思うエッセイ集

学生時代にやらなくてもいい20のこと

朝井リョウの文章の魅力は学生年代の鬱々とした感情にこそあると思っていたのだが、このエッセイ『学生時代にやらなくてもいい20のこと』を読んでみてその印象がガラリと変わってしまった。

 

なんという面白さ!!

 

あまりにも面白すぎて、今では朝井リョウという作家の才能は内面へ向かう劣等感の描写とかではなく “ただ面白い文章を書く” という方面にこそ発揮されるのではないかと本気で思ってしまっている。

 

ということで、今回はこの素晴らしいエッセイの感想と、作者・朝井リョウに対する文句?を書いていきたいと思う、笑。

 

 

学生時代にやらなくてもいい20のこと 

あらすじ

現役大学生作家として『桐島、部活やめるってよ』でデビューした著者初のエッセイ集。ただ単純に笑いたい貴方に!社会の荒波におびえつつ振り返るのは、学生時代の数々の思い出。カットモデルをすれば失意を味わい、熱い青春を求めて出かけた自転車の旅では尻の痛みを得る。そうして万事無為、やらなくてもいいことばかり為した日々の総決算、就職活動をついに迎え……。華々しい「大学生作家」の看板の陰で繰り広げられる意外と残念な日々を綴った、爆笑エッセイ20篇!

引用:amazon

~笑いながら一気に読みました~

 

そんな柴○コウの帯の紹介文がついてもおかしくないほど面白い朝井リョウのエッセイ集。といっても、パンチの効いた自己啓発本だと思って手に取ってみたらエッセイ集だったという勘違いから出会った本なので、やだ、わたし、余計に運命を感じちゃうわ。みたいなテンションで読み進めてしまった本。

 

主に大学生時代の友人とのエピソードと就職に関するエッセイが書かれているので、年配の人が読んでも昔を懐かしみながら楽しめるのではないかと思う。

 

 

感想

それではそれぞれの章からオススメの作品とその感想を見ていきたい。

 

■勃興(学問を究めるために都に出てきたはずの田舎者が、学舎の中で仲間たちと奔走した時代。)

 

地獄の100キロハイク」は丸二日間で約120kmをコスプレして歩きぬくという地獄のようなイベントに参加した時の話。スタート前の余裕のウキウキテンションと歩き始めてからの地獄のような体験のギャップが面白くて、死ぬほどしんどい目に合っているのに作者がバスローブにワイングラスという緩いコスプレをしているという状況も笑える傑作。あと「他学部の授業で絶望する」もなんか切なくてよかった。

 

 

■風雲(田舎者が都に振り回されながらも必死に生き延びようとする成長譚。)

 

すべての作品が面白かったが、「島への旅」「北海道への旅(未遂)」の2作品は特に素晴らしかった。二つとも大学の友人たちと旅行に行く(行こうとする?)時の話を書いているのだが、共通しているのは、思い出話にとって何よりもスパイスになりうる『無計画性』が描かれている点だ。


その『無計画性』から生まれるハプニングが面白くてくだらなくて悲しくて、きっと彼らは10年経ったときも同じようなテンションでこの思い出を語れるんだなと思ったら羨ましく感じる。

 

 

■群雄(都を制圧しようと挑む田舎者に次々と立ちはだかった強敵たちの記録。)

 

何といっても東京から京都まで自転車で旅をする「地獄の500キロバイク」が面白い。青春の1ページであり、くだらない冒険譚であり、最高の旅行でもあり、学生の無茶な旅の全てが詰まっているようで、羨ましくって歯ぎしりしたくなる作品だった。

 

 

■落日(好き勝手立ち回ってきた田舎者の日々に訪れる学生時代の終焉。 )

 

自身の就職活動について晒す」真面目な場所で起こる不真面目な出来事は、緩急がついている分面白味がある。特に就職活動の緊迫した場面で起こる、面白話の破壊力はなかなかのものである。 

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タイトルこれでいいのか問題

読んでいて唯一間違っていると思える点は、この題名なのではないかと感じた。『学生時代にやらなくてもいい20のこと』とあるがとんでもない。

 

学生時代だから出来ること。学生時代でないと出来ないことがいくつも書かれており、その思い出の数々がキラキラと眩しくて読んでいて羨ましくなってしまった

 

でも、たぶん朝井リョウは自分で青春的な記録を残しているとの自覚もアリアリで書いていると思うと、それはそれで青春的な思考で可愛らしい。

 

あと、僕のようにちょっとした啓発本だと思ってしまう人もいるかもしれないので、
タイトルに関しては別のものでもよかった気がしてしまう。

 

 

非リア充アピール問題

エッセイは本当に非の打ちどころがないほど面白いのだが、要所要所で朝井リョウ自身が非リア充であることをアピールしまくっている所があざとくて気になってしまう。これは作者に対する文句だ。


魅惑のコンセプトカフェ潜入」では、コンセプトカフェに詳しい女友達と共にカフェに行き、なんだか楽しげな時間を過ごしている。

 

北海道への旅(未遂)」では、未遂に終わったものの男女3人グループで旅行(北海道にフェスに行く旅行。フェスですよフェス!?)にいく計画をたてている。そもそもフェスに行く非リア充なんて世の中には存在しない。非リア充の対義語はフェスなのだから

 

リアル脱出ゲーム」では、クリスマスイブにリアル脱出ゲームのイベントにグループで(女子あり)参加していた。非リア充のクリスマスイブはロウソクの明かりを頼りに美少女フィギアを舐めると相場は決まっている。


ちなみにニコニコ大百科によると、『非リア充』とは、 

非リア充(略称:非リア)とは、恋愛や仕事などの現実生活(リアル生活)が充実していない人間のこと。 または、非リアル生活が充実している人間のこと。

を指すそうだ。朝井さん、アンタ・・・

 

立派なリア充だよっ!!

 

ただの無自覚のリア充でさえ腹が立つのに、非リア充のフリをしているリア充の罪は果てしなく重いと言わざるをえない、笑。

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最後に

このエッセイに書かれているいくつかの内容は、朝井リョウ・加藤千恵のオールナイトニッポン0でも本人が話していたことがある。文字でも面白かったし、声で聴いても面白かった。

 

エッセイ本でもラジオでも媒体にはこだわらないので、また何らかの形で本人の体験談を伝えて欲しいと、リア充作家である朝井リョウさんに心からお願いしたいと思う。リア充乙。