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池井戸潤『鉄の骨』感想文:萌の悪女っぷりが酷くて談合とか逆転とかもうそういう事じゃない

鉄の骨 (講談社文庫)

『下町ロケット』やドラマ『半沢直樹』の原作である『オレたちバブル入行組』など、池井戸作品は数多く世の中に浸透している。


どの作品も主人公たちに絶体絶命のピンチが続いている中で、仲間と努力して最後の最後で逆転して爽快になれる本が多く、その爽快さこそ池井戸作品が世間に評価される理由ではないかと思っている。


今日はそんな池井戸作品の中で、仲間側の人間なのに珍しく最低な登場人物が登場する本の感想を書きたいと思う。

 

作品は『鉄の骨』といい、ゼネコン同士の談合をテーマにした手に汗握る熱い物語。そして、その最低の登場人物の名前は。主人公、平太の恋人にあたる人物だ。


今日は萌がどのように最低なのかを感想と共に書いていきたい。を中心にした男女関係についてはガンガンネタバレする予定だ。

 

 

鉄の骨 

あらすじ

会社がヤバい。彼女とヤバい。次の地下鉄工事、何としても取って来い。――「談合」してもいいんですか?
中堅ゼネコン・一松組の若手、富島平太が異動した先は“談合課”と揶揄される、大口公共事業の受注部署だった。
今度の地下鉄工事を取らないと、ウチが傾く――技術力を武器に真正面から入札に挑もうとする平太らの前に、
「談合」の壁が。組織に殉じるか、正義を信じるか。吉川英治文学新人賞に輝いた白熱の人間ドラマ!
(引用:amazon)

そもそも公共事業における談合(入札談合)とは、

公共事業などの競争入札において、競争するはずの業者どうしが、あらかじめ話し合って協定すること。高い価格での落札や持ち回りでの落札で、業界全体で利益を不正に分け合う。公正な価格競争を害し、発注元の国・地方公共団体の支出を増すことになり、刑法で禁じられる。
発注元の公務員などが協定に関与するものを、特に官製談合と呼ぶ。平成15年(2003)入札談合等関与行為防止法が施行。公務員が入札談合に関与した場合、公正取引委員会は同法に基づいて所属機関に改善を求めることができる。談合。
(引用:goo辞書)

という意味なのだが、簡単に言ってしまえば公共事業をゼネコンが請け負う場合に競い合うべき会社同士が口裏を合わせて、持ち回りで高い利益を得ようとする行為だ。詳しくはサラリーマン金太郎を読むことを勧めたい。

 

この物語の中では、個人が利益を得るための悪しき談合と、業界として必要な必要悪としての談合が存在するという現実的でグレーな話。ルールが常に正しい訳ではないという事を軽く皮肉を込めて描いている感じか。

 

 

感想

建築業界の談合を取り扱っているタブーな内容の物語で、第31回 吉川英治文学新人賞受賞作品


主人公の平太が現場監督から談合課と揶揄される部署に異動する場面から物語が始まる。ちなみにドラマでは小池鉄平が演じていたらしい。もう少しガサツなイメージだが・・・。

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(出典:http://www.kyodo.co.jp/entame/showbiz/2015-11-25_1521829/)

 

現場でコンクリートに煙草を投げ入れた作業員をぶん殴っていたのは平太の実直さを解り易くするための表現だと思うが、談合の世界にはそんなに抵抗なく馴染んでいたように感じるので、何のためにぶん殴っていたのだろうとは思う。

 

そんなツッコみどころは置いておいて、登場人物たちの魅力は相変わらず素晴らしい。

 

特に平太の先輩である西田

 

太っているおちゃらけキャラなのにバリバリに仕事が出来ていうべき事を言う格好いい先輩として描かれている。ドラマではカンニング竹山が演じていたらしい・・・何かちがくね?

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(出典:『カンニング竹山の遊びじゃねえんだよ!!』|BSフジ)

 

どちらかというとキャイーンの天野君とかがイメージに近い気がする。 

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 (出典:http://ethan-joumal.com/2229.html)

 

談合なしの単独受注を目指す一松組の代表として談合の調整においては天皇と呼ばれる三橋と接触を図る平太だが、三橋との人間としてのつながりを深めていく様は予想と違う展開で楽しめた。

 

全体を通して談合とはどのようにして生まれるのかの概要も理解でき単純に勉強になり、ストーリー展開や一つの時代の終焉を描く時代の流れもとても楽しめた。

 

もちろん、池井戸作品の真骨頂である最後の大逆転勝ちパターンまで含めて大盛り上がりだった。

 

しかし…

 

この話のメインの感想は別にある。

 

 

最低のヒロイン『萌』

メインで伝えたい感想…それは最大のビッチ女であるの存在だ。

 

とにかくこの女が最低のクソ女なのだ。まずは平太の恋人として登場する。二人は学生時代からの関係性で居酒屋で本音をぶつけ合える関係性だ。


萌は平太が務める一松組の取引先の銀行に勤めているのだが、徐々に価値観が変わっていき平太とスレ違い始め、そのタイミングでは銀行の先輩であるオシャレな園田にオシャレなワインバーでオシャレに口説かれまくり、まんざらでもありません。

 

ああ、これはいよいよ平太と別れてオシャレな園田(以下、シャレ田)と付き合うことになるのかな。平太は可哀想だが、それは仕方ないことだ。誰が悪いわけでもないけど、このまま別れてシャレ田と付き合うんだろうなぁ・・・

 

なんて思っていたのだが、

 

萌は平太と全然別れません。

 

別れないまま、何度も何度も平太に内緒でワインの美味しいお店でシャレ田に口説かれまくってときめきます。内緒でシャレ田に会った後、平太と会いながらシャレ田と平太を比べて一人で勝手にテンションを下げる萌。マジでクソ女ですね。

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シャレ田に抱かれる『萌』

明らかに平太よりシャレ田のことが好きになっているのに、平太の母と会って挨拶したりもしますが、平太と別れを告げることは絶対にしません。常に平太はキープするんです。

 

さらに萌はシャレ田にワイン越しに口説かれながら、

 

「わたし、今日抱かれるのかな」

 

などと言い出して、ワインだけで飽き足らず自分にも酔い始めます

 

罪悪感を感じながらシャレ田に口説かれながら浸っていく萌だが、むしろ自分への酔い方が悪酔いを通り越して泥酔レベルに達している。そしてそのまま普通に抱かれます。でも萌は、

 

シャレ田に抱かれた後も別れようとしません。

 

ホント浮気上等のクソまみれ女子を存分に演出してくれます。あっちにフラフラ。こっちにフラフラしつつ、結局平太と付き合ったままシャレ田とパコパコバスツアーをする日々。

 

挙げ句の果てに、平太と別れないままシャレ田の母に結婚を前提にした挨拶をする萌。もはや結婚詐欺のレベル。まさに外道とはこの事ですね。

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ギャップでの人気回復に失敗する『萌』

外道の限りを尽くす萌だが、終盤でシャレ田のニューヨーク転勤が決まり、一緒に付いてきてほしいと頼まれる。迷っている萌に対して「すぐには無理でも空港まで見送りに来てほしい」と伝えるシャレ田。迷いつつも言われたまま空港に向かう萌。

 

ところがそのタイミングで、平太が談合の件で任意同行されたニュースを聞き、抱かれまくってたシャレ田を放置して平太の元へ駆けつけます。

 

本来だったらこのシーンで「なんだ、萌っていい奴じゃん!」とギャップを感じて人気がV字回復!となる場面のはずが、この程度では全然回復できてない笑。電車の行先を変えたくらいじゃ全然ダメ。全然マイナスのままだぜハニー笑。

 

むしろ、裏切りまくっていたクセに、どの面下げて平太の所へ現れたのかその神経を疑いたいレベルだ。

 

そして最終的にはシャレ田にもついていかず、ワインではなく焼酎を飲みながら、

 

「私らしく生きなきゃ!」

 

と言って、二人の男をさんざん振り回したあげく、一人で気持ちよく終わっていきます。


浮気の件も平太に最後まで言わず、自分に都合のいいことだけを信じる萌という人間。どうしようもなさすぎて呆れてしまう。

 

溺れていても絶対に助けない。

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最後に

という訳で、感想のほとんどが萌に対する文句だったこの物語だが、作品自体はとても面白い。

 

流石池井戸潤作品だと思えおすすめなので、作品の面白さと、萌の外道っぷりの二つの面からこの作品に向き合ってくれたら、さらに作品を楽しく読んでもらえるのではないかと思う。

 

是非とも読んで欲しい作品だ。

 

女性不信の方にも読んで欲しい、悪化するから、たぶん笑。